第7話 疑惑が止まらない
薄暗い部屋で俺は外の景色を見る。
外は夜になっており、つい最近みた若い時の顔が映っていて斬られたはずの腹も裂けたはずの股もちゃんと繋がっている。
「なるほどな…………」
セーブクリスタル。
そう名前をしった石を握っては思わずため息が出る。
それもそうだろう長年探し求めていた物がこんな近くにあったからだ。
深呼吸して腹の底から声をだす。
「それはいい。だが、毎回死ぬのは割に合わんわ! 腹から剣先が出たと思ったら真下だぞ! 痛みもショックも大きいわ! それにだ、巻き戻るとしてもたった12日程度しか巻き戻っていない、なぜ俺だけ何度も何度も何度も殺されないといけないんだ! しかもエルフだと? 生まれてから13年先の未来までエルフなど見た事もない! それが――――」
叫びながら机を叩くと、部屋が突然ノックされた。
「入れ……」
案の定執事であるマーケティだ。
「だ、大丈夫でしょうか!? オージィ様!? 大きな声が」
「…………気にするな。要件を……いやいい、確か鉱山から苦情が来ているんだったな、報酬を3倍ほど払え。使えるものは全部使っていい。それ以上望むなら魔物と遺書に爆薬でもなんでも食わす。と伝えて置け」
「な、なぜそれを……いえ! わ、わかりました」
一人になった部屋で深呼吸をする。
「だがまあいい。少しはわかった……俺が死んだら戻る。これはあっているだろう」
手の中で石をくるくると回してその表面を眺める。
セーブは確かおさえる。以外にもエルフ語で記憶。と、言う意味もあったはずだ。
考えをまとめる。
本当は酒でも飲みたいが、この時間は食堂に義娘がいるだろう。別に顔を合わせる必要は無い。
問題は肌身離さず持ち歩くべきか。
この引き出しにしまい込んで13年何事もなかったのだ、入れておけば安心だろう。
しかしだ。
逆に紛失したら。と考えると怖い。
仮に俺が死ぬ前にこれが壊されたら、奪われたらとなるとどうなるかわからない。
――
――――
朝になっていた。
眠れないまま一晩考えており、着替えをしては朝食のために食堂へいく。
すでに席に座っている義娘が食事をとっていて俺を見ると目を輝かせてくる。
「お、オージィお義父さま。おはようございます!! エリカ精一杯がんばります!!」
「…………何をだ」
「娘をです!」
…………何を考えているんだ。
いや、それよりも。
「お前が育った教会では何か変わった石が取れるとかないか?」
「ほほえほほい」
「飲み込んでから喋ろ」
「ごっくん。っと、特に無いですよ? あっ聞いてください。カバンに穴が開いてまして、もしかしたら昨夜ご挨拶した時に何か落としてませんでしたか?」
「特にないな」
「下着がないんです!」
その言葉に俺は思わずせき込んだ。執事のマーケティもメイドのメイファも一瞬であるが俺を疑惑の目で見た気がしたからだ。
「俺がお前みたいな子供の下着に興味があると?」
「あ、あの違うんです。無くなったのは本当でして……」
「大方どこかで落としたんだろう、メリファ後で適当に新しい物を渡せ、マーケティもし見つけたら処分しろ」
話をそらされたきもするが、魔石の事はしらを切っている可能性もある。いやまて、義娘は嘘は言う事はなかった。
「食事を終えたら散歩にいくぞ」
「ふえ!?」
義娘は驚いた顔をしているが、義娘の隣にいるメイドのメイファと俺の横にいたマーケティの息を飲む音も聞こえた。
「マーケティ、場所はそうだな……鉱山ふもと、チカアの森でいいか」
「た、大変危険でありますが!」
「あそこは少なからず人がいるだろう。危険なのは領民か? 魔物か?」
俺が聞くと、マーケティは顔色を変える。
それはそうだろう、下手な事をいうとクビになるからだ。
「冗談だ。義娘よ……いやエリカだったな」
「名前!?」
ほう、
「俺の娘になったのだ領地の事を知っておけ。先に支度をする」
「いははへおわひまふ」
…………食べ終わります? か。とても直ぐには食べきれるとは思えないが、物凄い速さで料理が消えていく。
俺自身は半分ほど食べ席を立つ。
直ぐに部屋に戻り着替えをししばし本を開いては時間をつぶす。エルフ語の本をもう少し欲しいな。
しかしながら今王都にいくのは危険だ。あのヘンテコエルフ……いや、そっちはまだ話が通じる。問題はそのヘンテコエルフと一緒に居た奴だ。話が通じない、即俺を殺してきた。
それに匂いでわかった。と、言っていたな、といっていたそれを何とかしなければならない。
魔力の匂いか。
俺の鼻が悪いわけでは無いとは思うが、他人に嗅いでもらうか……いっその事匂いがきついのに漬け込むか?
あとは保険も一応かけておかねば。
セーブクリスタルを手にした日、俺はこの石で怪我をし血が付いた。小さいナイフで指先に穴をあけセーブクリスタルに血をぬり込んでみた。
こちらの用意が出来た所、外の準備も終わりました。というので俺は外にでる。護衛と案内人をかねた年輩のキーファが細かく指示をだしている。
「キーファ。今日は城ではなく森だ」
「へえ」
俺達が乗る馬車と、召使い2人が乗る馬車。さらに護衛の馬車が1台の3台が並んでいる。
乗り込んだ後、閉まらない扉をみて、エリカを見る、エリカは召使用の馬車に乗り込もうとしていた。
「お前は俺の娘になるんだ。こっちに一緒に乗れ」
「は、はい!」
ぎこちない動きで馬車に乗り込んでくる。
俺とは迎え合せと言う奴でエリカは下を向いて俺と視線を合わせようとしない。
カタカタカタカタカと馬車が動き出す、車内はひどく静かであり俺にとっては心地よい。睡眠不足でありうっすらと眠くなっていく。
「ゲエーーー! グエー! げほっげほ」
………………向かえにいるエリカが突然に吐き出した。腰に付けたカバンに吐き穴が塞ぎ切れてないのだろうボタボタと落ちる。
「ご、ごめ……も、もうしわけござげっほ」
「無理に喋るな。馬車は揺れるからな……もう少し慣らしてから乗せるべきだった」
俺がそういうと馬車内の異常な空気を察したのだろうキーファが馬車を止めて中を確認しだす。
何か言いたそうな感じであるが、何も言わず。俺とエリカは一度外に出る。すぐに打ち合わせを終えたマーケティが寄ってきた。
「要件」
「はい、オージィ様の馬車は汚れは取れましたが匂いが残ると言う事で、わたくしの馬車が護衛の馬車に移る事も……」
俺がちらっとエリカを見ると、歩いていきます……と小さい声で言いだし始める。馬鹿か? 何日かかると思っているんだ。
「匂いは窓を開ける、気にするな」
「お、お義父さま…………」
「いいか、気にするな!」
俺がもう一度いうとエリカはぶんぶんと首を縦にふった。しかし、子供と言うのは相手にすると疲れるな……。
馬車にもう一度乗り込む匂いは鼻につくが、俺とてこれ以上の匂いは嗅いだ事はある。
しばらくするとエリカが、小さい声をあげはじめた。
俺の耳にも周りの音は入っており、つぶっていた目を開ける。
街に入ったのだろう。
いくら鉱山地域の辺境領主といえと街ぐらいはある。王都とはくらべ物にはならないが必要最低限と言う奴だ。
鉱山、町、俺の屋敷。となっており例え何かあっても町が砦の代わりになり時間が稼げるようになっているのだ。
「小さな町だろ?」
「えっ? 全然大きいです!」
「全部俺とお前の物だ」
俺が一言言い放ち再び目を閉じる。
聞いているのかいないのか、エリカは「手を降ったら振り返してくれました」など馬鹿みたいな事を言い出した。
そんな報告は無意味なので俺は無視する事にする。
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