捕縛

「頑丈ですねその刀」

「特別製」

「知ってます。ただ前見た時より頑丈になってる気がするんですよねぇ」

「知らん」

「それでどうします?」

「?」

「魔物狩り続けますか?」

「帰る魔石素材要らない」

「まぁ強い魔物と戦いましたから疲れましたよね。魔石も素材もどっちも要らないんです!? 高く売れますよ?」

「困ってない」

「私が持ってくの大変なんですが……」


夢が持っていき騎士に見つかると報告しないとならなくなる、間違いなく高等級の最低でも中ボスクラス

無断で踏み入れた事もバレる為間違いなく始末書を書かされる

一方探索者の夜が持っていれば騎士に見つかっても精々注意されるくらいで済む

間違いなく夜が持っていった方が良いが興味が無い


「ってもう帰ろうとしてるし一緒に帰りましょうよ〜」


炎の魔物が落とした魔石と素材を回収して夜の元へ駆け足で向かう

夜は取り巻きの魔石を回収する

殲滅エリアから近い、付近の魔物もう倒した為問題なく行けると考えるが魔物の群れが待ち構えていた

10体の魔物、見覚えがなく等級が分からない

4足の獣のような形の魔物、黒いモヤが少ない

(高等級)

刀を抜いて異能を使って魔物の目の前に移動する


「ちょっ、早い早い」


突きを繰り出して頭蓋を貫く

すぐに引き抜いて別の魔物に切り掛る

魔物は後ろに飛び刀による攻撃を回避、反撃をする為に夜目掛けて飛びかかる

飛びかかった魔物は飛んできた氷柱に貫かれ倒れ込む

一度バックステップで下がり攻撃をしてきた魔物をカウンターで切り倒す

氷の礫が魔物を襲う

魔物は怯む、その隙を逃さず刀で切り掛る

氷の礫が当たらなかった魔物が噛み付いてくるが口の中に手を突っ込み舌を掴み引っ張って地面に叩き付ける


「わーお、ワイルド」


近くの魔物を蹴り片手で持った刀で切り裂く

両手で刀を握り力一杯横薙ぎに振るう

2体の魔物を真っ二つにする

楽々魔物を倒していく

(弱い)

黒いモヤが少ない為高等級と考えていたが思っていたより弱く感じる

最後の一体は蹴りで首をへし折り倒す


「弱い」

「いや貴女が強いだけです。この魔物も3等級くらいは有りそうです」

「本当?」

「嘘をつく理由がありません」

「そうか」

「そもそも炎の玉を切り裂くって普通じゃありませんよ」

「試し斬れた」

「普通なら試す事もほぼ無いと思いますね」

「魔物」

「またですか。あの魔物が居なくなったから付近の魔物が自由になったんですかね」


(他にも数体居る)

夢は近くに魔物の気配を感じる


「分からないただ斬る」

「援護します」


異能で移動して切り裂く

現れた魔物を倒していき魔物エリアを抜ける

殲滅エリアに入った途端に魔物が減る

境界線は曖昧でそこに何かある訳でもない

恋歌という強い存在が居る事を知った魔物は近寄りもしない

恋歌が率いる守護隊は魔物に対して牽制をしている


「それじゃ私はバレないように帰るので」


目立つ見た目の夜とは別行動して魔石を持って帰る

バレなければ始末書を書く事は無い

(バレなければと言う奴だよ)


「そうか」

「それじゃまた近いうちに〜」


夢は周りを警戒しながら駆け足で帰っていく

傍から見ると怪し過ぎる

夜は魔物を探しながら城門へ向かう

探索者がちらほら見える、魔物を探しているようだ


「おいあんた」


声を掛けられる

近くを探索していた探索者のグループだ

リーダーのような男性が話しかけてくる


「何?」

「あんた今魔物エリアから来たよな?」

「そう」

「ならあの大きな氷の化け物はあんたか?」

「凄いデカい奴!」


男性の言う氷の化け物と言うのは夢の異能で作り出した氷のゴーレムの事だろう

近くで見てかなり大きかった為遠くからでも見えたのだろう


「違う私別異能」

「そうか」

「異能者か1人?」

「そう」

「ならグループ組もうぜ」

「断る」

「ありゃ残念、てかあんたも強いよな? 魔物エリアに入って無傷なんて」

「それなり」

「困ってんだろ。時間取らせて済まないな。魔物探すぞ」

「へぇい」


リーダーの男性が割って入って強引に会話を終わらせて立ち去る

城門へ向かう

魔物は見つからない


「居ない」


魔物を探していると足音がする

咄嗟に物陰に隠れる、聞き覚えのある足音それも複数

守護隊員が見回りをしているようだ


「魔物居ませんね」

「ルナの協定の成果だな。魔物が減ったのは助かる」

「そう遠くないうちにこの辺を城壁で囲む作戦が実行されるらしいな」

「ついにか」

「俺たちは間違いなく駆り出されるな」

「それどころか騎士団総動員だろうな。初の奪われた土地の奪還になる」


実行されれば人類が追い詰められてから初めて行われる奪還作戦となる


「まさか魔物と協力関係を結ぶとは」

「ルナな。外で話す時は名前にしとけ」

「探索者に聞かれたら大変」

「それもそうだな。今までの話とは勝手が違うからな。気をつけねぇと」

「広まったらどうなるか分からねぇ」


ルナとはルナルールスの事

守護隊は外では人名に聞こえるルナという略を使っているようだ

(奪還)


「まぁそう遠くないと言ってもまだ先だろうけどな」

「だろうな。まだ全然準備が整ってない」

「大規模になる、甚大な被害も想定される」

「それだけ犠牲を払ってでも成し遂げたい事ではある」


守護隊が夜の方へ近付く

見回りのルートなのだろう、このままでは接触する

接触は面倒だと思い夜は足音を立てずにその場から去る

城門に行くと鎖に捕らえられた夢と遭遇する

ただの鎖では無い、異能の鎖、頑丈で並の人間では抜け出す事は出来ない

鎖を生み出し拘束する異能は判明している限りたった一つ、天音の異能だ

天音に倒した炎の異能の魔物の魔石を持っている事がバレたようだ

夢は丁度城門を通ろうとしている夜を見つけ視線で助けを求める

(あれ面倒関わらない)

関わったら絶対面倒な事になると直感で理解した夜は無視をする

(無視は酷くない!?)


「さて、どうして魔物エリアに入ったのかそしてこの3等級の主クラスの魔物をどうやって倒したか教えて貰えるかな?」


天音は手に持つ魔石を見せる

探索者であった頃からの経験で大抵魔石を見ればどの等級の魔物か一目で分かる


「あ、え、えぇっと話せば長く……」

「時間はあるから大丈夫」


天音は圧をかける、やっている事は完全に尋問である

炎の異能の魔物は3等級の主クラス、天音が知っている情報によれば夢単独では倒せない

それを考えると一緒に討伐した協力者が居ると確信している

それが騎士か探索者かでだいぶ変わる


「一体協力者は誰? 騎士じゃないよね?」

「き、騎士……では無いですね。はい」


尋問を受けている夢をスルーして夜は城門から城壁内に入る

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