茶会の誘い
「あっ、居た。丁度訓練中みたいだね」
「竜胆副団長〜」
「うん? どうしたの?」
2人に気付いた天音が訓練を辞めて近付いてくる
「少し聞きたい事がありまして」
「何かな? 昨日の件は特に新しい情報は無いよ」
「昨日の件じゃなくて真髄に至った時の事を聞きたくて……騎士団長は特殊な事例過ぎて」
「真髄の話ね。確かに騎士団長は特殊過ぎるね。どうやってかは私の場合は分かってないんだよね」
昨日の件の話で来たのだと思っていた天音は少し驚くが昨日真髄の話をした事を思い出して納得する
(そう言えば軽く話しましたね)
「分かっていないですか?」
「そう、私が真髄に至ったのは大災厄の時なんだけどどういう理由でとか何も覚えていないんだよね。気付いたら大量の鎖が魔物を拘束しててそれから使えるようになっただからどういう理由でか分からない」
天音は自分が至った時の説明する
真髄に至る条件がはっきりしていない上に至った者によってその状況が違う
分からない事だらけの為真髄の情報は公にはなっていない
下手な情報を流せば危険な真似をする人が出てくる
「成程……うーん、危機に瀕したからとか有りそうですが……」
「危機に瀕したからは有るかもね。昨日の魔物も絶体絶命の時に至ったみたいだから、まぁだとしたらあんまり当てにはならないかな」
「死にかけるとか本来そうそう無いですからね。気軽に挑戦も無理ですし」
「ですね。それと恋歌守護隊長やあの浮塚さん? がどうやって至ったかは知っていますか?」
「恋歌ちゃんはひたすら戦い続けてダンジョンの主クラスと殴り合っていたら真髄に至ったって言ってた。戦っていた魔物が同じ異能の持ち主なんじゃないかなとも言ってたよ」
「参考になるようなならないような」
「一番参考になると言えばなりますが……難しいかと」
「浮塚さんは聞いた事ないけど彼も大災厄の時だったと思う」
「成程」
「まぁそんな分かりやすかったら情報隠してないですよね」
「そうだね。力になれなくてごめんね」
「いや、かなり助かりました」
(一番現実的なのは同じ魔物と戦う事……僕の異能と同じ異能の魔物か。間違いなく厄介だな)
自分の異能の事は良く理解している、それ故にどれだけ脅威になるかよく分かる
ゼラからしても相手にはしたくない異能
「情報有難うございました」
「それでは失礼します」
部屋を出る
「参考にはなりませんでしたね」
「やっぱりそう簡単には行かないね。まぁ複数条件があるなら別の条件もあるのかも」
「異能の関係ですし異能を極めるととかありそうですよね」
「そうだね、異能は……取り敢えず安静にしておこ」
異能が完全に回復していない今では下手に使えば悪化する
これでは極める所の話では無い
「何があるか分かりませんしね。常に万全であるべきです」
「そうだね。あっ、僕はもう本部に用はないから帰るけど夢はどうするの?」
「私も話を聞きに来ただけなので……ゼラさん茶会しましょう!」
「茶会?」
「お菓子食べてお茶飲んで雑談するだけですが」
(特に用事ないし良いか)
用事がないゼラは二つ返事で答える
「私、良い店知ってるんですよ。行きましょ」
訓練場を出て外へ向かう
「そう言う店知らないんだよなぁ。東側?」
ゼラは基本的に外食をしない、その為良い店を知る機会が少ない
仮面を付けたままでは食事が難しいため人前ではほぼしない
素顔で外に出た時もわざわざ外食を選ぶ事も無い
「はい、東側です」
「そんな店が東側に」
「はい、結構色んな種類の飲食店ありますよ」
「某チェーン店なら見た事あるけど」
「あぁ、ありますね。知ってる名前や食べ物があると人は安心しますからね」
「確かに久しぶりに見た時は感動したよ。世界がこんなになっても人の心に残る物は完全には失われてないって」
人類が追い詰められて作られた都市、そこは今まで暮らしていた物とは違っていた
多くの日常は消え去り今までとは違う生活に多くの者が不安になり拠り所を探していた
そんな中、名を上げた者達が居た
彼らはそれぞれの分野で活躍していた者や憧れを抱いていた者達
彼らは力を合わせて農業、漁業、料理、芸術、スポーツなどを広げていった
土地に合った食料の生産から有名チェーン店の料理の再現や有名な絵や音楽の再現、有名スポーツの試合配信
多くを失ったが全てを失った訳では無いと人々に示したのだ
「凄いですよね。騎士とは違う方面で人々の為に立ち上がれるなんて」
「西にも別のチェーン店がありますよ」
「へぇ、余り西は行く機会無いからなぁ」
騎士団本部を出て夢の案内で店に向かう
「確かに東側に住んでると西側は行きませんね。私は食事が好きなのであっちこっち言ってます」
「そうなんだ」
「はい! まだ全部は食べ切れてないですがいずれ制覇します」
再現された料理は沢山有り夢はまだ全ての料理は食べ切れていない
「そう言う趣味あると良いね。僕も何か趣味作るかな」
「何か無いんですか?」
「あるとしたら手品と魔物狩り、手品は趣味と言うか仕事になるか」
「……まぁ確かに騎士の中には魔物狩りを趣味にしてる人は居ますよね。……外食しないと言う事は自炊してるんですか?」
「いや、店で買ってる。料理はしないから調味料も家に砂糖くらいしかないし調理道具も無い」
「店で買う方が楽ですが自炊も楽しいですよ」
「自炊、確か前にした事があったけど……何故か爆発した記憶が」
その時の事をふと思い出す
(……確か誰かとしてた筈なんだけど誰だっけ。思い出せない。数年前だし覚えてなくても無理ないか)
その時一緒に居た筈の人物の姿を思い出せない
数年前の為記憶が薄れているのかもしれないとゼラは考える
「ま、まぁそう言う事もありますよね。あっ、ここです店」
「ここが……良い雰囲気の店だね」
「はい雰囲気も良いんですよ」
現代の建物とは雰囲気が違い昔ながらの森の中に有りそうな木造一軒家が立っている
扉を開けて店の中に入る
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