第5話 知っている
☆
私は昼休みになってから横田くんに接した。
それからありえないという感じでぎょっとする教室を他所に横田くんに「話がある」と言ってから屋上にやって来る。
横田くんは訳が分からない感じのままだったがゆっくり私に付いて来る。
そして屋上で私は踵を返して横田くんを見た。
「...横田くん」
「ああ。...どうしたんだ」
「...美海の事なんですが」
「渋谷の事か。...何でお前まで知っているんだ」
「...渋谷美海は私の知り合いなんです」
そう言いながら横田くんを見る。
横田くんはかなりビックリしていた。
私はその顔を見てから手すりに触れる。
それから靡く髪を抑えながら外の景色を見る。
すると横田くんも手すりに触れた。
「...何でお前の知り合いなんだ?友人か?」
「違う。...渋谷美海は...その。色々あって私と知り合いなんです」
「...そうか」
「...さっき坂本くんが話していたからだからちょっと聞いてみたくなりました」
「渋谷が俺に接して来たのはお前の為か」
「そうかもしれません」と私は答えながら横田くんを見る。
すると横田くんは目線を逸らしながら「そうなんだな」と答えた。
私はその真っ直ぐな瞳を見ながら目線を前に向ける。
「...美海は病弱だって言ってましたよね。その通りなんですが...まさか彼が美海に関係があるとは思いませんでした」
「俺もビックリだな。話し掛けてくるとは思わなかったから」
「...そうですね」
「...なあ。天水。お前も何か企んでいるのか」
「企むとは」
「いや。美海がいきなり友人になりたいって言ってきたから」
「私は特に何も考えていません」と言った。
だけど正直、彼に迷惑がかからない程度でこの人の素性を調べようとは思うけど。
何故なら...うちの父親と呼べるヤツが監視しているから。
だから身の危険も有り得るのでだ。
「...不思議な奴だな。お前も渋谷も」
「ですかね。良く分かりません」
「まさかこうしてお前と話ができるとは思わなかったよ」
「...ご迷惑でしたか」
「迷惑とかじゃない。ただ不思議だなって」
そう言いながら苦笑する横田くん。
私はその姿を見ながら目線を逸らしてから手すりから手を離す。
それから「横田くん」と横田くんに向く。
横田くんは風が吹き抜ける屋上を見ながら「ああ」と反応した。
「私と余計に関わると...酷い目に遭うと思います。...だからあくまで夕食を作る関係で居て下さい」
「...そんなに大変な家なのか」
「家が大変では無いです。...ただ...そうですね。私は不幸な女の子ですから」
「...そうか。そこまで言うなら分かった」
「はい。感謝致します」
そして私は「じゃあ戻りましょうか」と少しだけ柔和になる。
それから私はドアを開けてから教室に戻る。
横田くんも席に座ってからご飯を食べ始め...ようとした時。
坂本くんが「よお。一緒に飯食って良いか」と言いながら前に腰掛けた。
「何で一緒に飯を?」
「まあ良いじゃねーか。折角知り合ったしな」
「...そうか」
私はその彼らの姿を見ながらご飯を食べる。
そして私はお弁当箱を片してからまた勉強を始めた。
正直、勉強なんて投げ出しても良いのだけど。
所詮は数字だし。
☆
「で。お前は何の話をしていたんだ。天水ちゃんと」
「...お前ガンガン聞いて来るな。素性知っているだろ」
「素性を知ってはいるがまあ...聞きたいだけだ」
「...お前な...」
コイツに話す事は何もない。
そんな事を考えながらだが俺は坂本を見る。
コッペパン。
焼きそばが挟まっているそれを食べる。
「...確かに俺は天水ちゃんと美海の関連性を知っている。だけどそれ以上でも無いしそれ以下でもない」
「...お前はどういう関係なんだ。その渋谷とは」
「美海との関係?...ああ。幼馴染だぞ」
「...ああ。そうなんだな」
「そうだ。家が近所でな」
「へぇ」
そして俺は話しを聞く。
それからパンなどのご飯を食べていく。
そうしていると食べ終えた袋を結びながら坂本は手を叩く。
パンの粉を叩き落とす。
「...いつかお前に声を掛けようって思っていたよ。まさかこんな形で声を掛けるとは思わなかったけど」
「...それはまた何でだよ」
「そりゃお前。クラスメイトだしな」
「...確かにそうだけど。浮いているぞ俺は」
「んなこたぁ見りゃ分かる。...だけどな。俺は兄貴肌なんだ」
「...そうか。お前は構いたいんだな。色々な奴に」
「いや。俺人見知りだし」と答える坂本。
コイツアホか?
どう考えても違うだろ。
考えながら「坂本。それは人見知りとは言わない」とジト目を向ける。
「ああ。説明不足だったな」と坂本は乳酸菌飲料のカルタスを飲む。
「俺は興味のある人以外は喋らない」
「...じゃあ俺には興味が有るのか」
「あるに決まっているだろ。だってお前。...美海がお前に興味を持っているんだから」
「...こんな俺に興味を持ってくれて嬉しいけど...正直何も無いぞ」
「そうか?現にお前は天水ちゃんの心に入っているよな?」
「入ってないわ。ドアホ」
「まさか。溶けるぞアイツ」
「無いわ」
そして俺はジト目で坂本を見る。
坂本はニヤニヤしながら俺を見ていた。
顎に手の甲を添えて椅子に跨る様に、だ。
腹立つ野郎だ。
だけど嫌味が無いのは何故だろうか。
「坂本。お前は何者なんだ」
「おしえなーい」
「...」
訂正。
やっぱり嫌味があって最悪だわ。
思いながら口笛を吹く坂本をジト目で見る。
全くコイツは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます