人型機動兵器ヒューマンフレーム・ゼロ

ガルカンテツ

第零話 序章

プロローグ

 銀河の星光を背景に、宇宙空間を1機の人型兵器が飛翔していた。


 その人型兵器は、人型機動戦闘機ヒューマンフレームHuman Frame。略称HFと呼ばれるもの。


 HFは彗星の如く青い尾を引きながら、亜光速で敵HFを追尾している。追われてるのは赤壁連合Red Cliffs UnionのHFミコヤ21兵士型フィッシュベッド。追っているのは大八洲おおやしま皇国最新型の星菱零式人型機動戦闘機、通称零式。


 零式のパイロットは、金髪ロングを細く青いリボンでポニーテールにした少女、横田ユイ15歳。体にフィットしたスーツを身に纏い、球形コックピットのシートで2本の操縦桿を握る。


「もうちょい、もうちょい……」


 スクリーン正面に映る敵HFを完全に背後から捕え、照準の中心に合わせる。敵は蛇行したり旋回したりして回避しようとするが、零式の方が運動性能も加速性能も上だ。


「いま!」


 ここぞというタイミングでトリガーを引くと、HFが持つ89式200mm小銃から発砲。3発に1発装填されている曳光弾の軌跡が、敵HFの首辺りに吸い込まれる。


 頭部が爆発し、スクリーンのマークが撃墜を示すバツに変わった。


「これで計4機!次!」


 ユイの乗る濃い空色の機体、コールサイン『ブルーリボン01』は次の目標を探す。球状スクリーンに戦場の状態が表示され、敵味方入り交じり広範囲に散らばっているのが分かる。


 一番近い敵を定め、急行。向こうも『ブルーリボン01』に気が付いたようで、こちらに向かって来る。敵HFは既に近接戦闘を想定して片手剣を装備していた。


「近接格闘戦ね!」


 操縦スティックから手を離し、一瞬で意識をHFと同調する。視界がコックピットからHFの視界に変わり、ユイはHFそのものとなる。


 小銃を背に仕舞い、近接武器を装備する。それはHFサイズの薙刀。ユイの得意武器だ。


 接近してきた敵HFと一瞬で交錯。薙刀で敵HFの胴体を真っ二つにした。


「次!」


 もう1機居たはずだが、視界内に居ない。


『01!8時方向下方!』

「了解!」


 敵位置を教えてくれたのは僚機ウィングマンであり、部下であり、幼馴染の赤毛の少年、星菱レイ15歳。ずっと後ろからフォローしてくれていた。


 咄嗟に反転して対峙する。思ったよりも近い位置に居たが薙刀で攻撃。しかし敵HFは剣で防御し、なんとか撃墜を逃れた。剣は切断したがHFに刃が届かない。武器を失った敵は逃走に移る。


「02!そっち行ったわ!」

『了解』


 少年レイの搭乗するコールサイン『ブルーリボン02』は、暗い赤色の零式。血のような色のHFが、ユイの逃した敵HFを捕らえ、HFサイズの太刀で袈裟切りにした。


『02、1機撃墜』

「ナイス02!次行くわよ!」



 大八洲おおやしま皇国の皇紀4901年07月 赤壁戦争中


 濃い空色と暗い赤色の零式ペアは、戦場で『青い稲妻Blue Lightning』『血色の影Blood Shadow』と呼ばれ恐れられていた。


 その名に恥じず、ユイとレイは戦場を稲妻の如く飛び回り、母国大八洲おおやしま皇国を勝利に導く。


--


 SF作家アーサー・C・クラークが定義した三つの法則の一つに

『十分に発達した科学技術は、魔法と見分けがつかない』

 というものがあるが、人類が太陽系外に出る時には、次のように言われる。

『十分に発達した科学技術は、魔法だった』


 人類が、まだ太陽系内でのみ活動していた頃に未知の素粒子を発見。新しい素粒子は、霊子れいしエーテリオンAetherionと名付けられた。


 人間の魂より湧き出すそれは、魔力、マナ、オーラなどと呼ばれていたもの。無から有を生み出す魔法の素粒子。


 人類の生活圏を銀河とした数千年後、霊子技術の粋を集めた人型機動戦闘機ヒューマンフレームHuman Frameが、飛び交う世界。


 そのヒューマンフレームパイロットとなった少年少女の物語。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る