第44話 アプリ

ある日スマホをチェックしていると、見覚えのないアプリがあった。

――何だろう?

そう思って開いてみると、画面いっぱいに暗い夜道の画像が現れた。


音声はなかった。

すると画面がズームアウトしていき、向こうに歩いて行く、女性らしい後姿が映し出される。


続いてその女性に急ぎ足で追いすがっていく男の姿が、画面の右から現れた。

男は振り向いた女性を押し倒すと、馬乗りになる。

そして手に持ったナイフのような物を、何度も女性に振り下ろした。


――何この画像?本物?

僕がそう思った瞬間、男が立ち上がり、こちらを向いた。

その顔には、狂気の笑顔が貼りついていた。


僕は怖くなって画像を閉じる。

すると、さっきまであったアプリが消えていた。


翌日のニュースで、夜道を歩いていた女性が、何者かにめった刺しにされて殺害された事件が報道された。

――まさか、昨日の画像?

僕は警察に届け出ようかと思ったが、アプリが消えてしまって、何の証拠も残っていなかったので、取り敢えず思い止まった。


数日後、僕のスマホに、突然あのアプリが現れた。

僕は一瞬止めようかと思ったが、結局興味が勝って、アプリを開けてしまった。

するとやはり、画面いっぱいに画像が現れる。


今度はどこかの倉庫内の画像のようだ。

奥の壁に積み上げられた、段ボール箱のような物の前に、女性が横たわっている。

意識はないようだ。


するとまた画面の横から、手にナイフを持った男が現れた。

画面の現れた男はこちらを振り返ると、あの時と同じ狂気の笑顔を向ける。

そしてこの前の画像と同じように、女性をめった刺しにした。


恐怖のあまり画像を閉じると、やはりアプリは消えていた。

そして翌日、どこかの倉庫内で女性の遺体が発見されたというニュースが流れる。


僕は必死で考えた。

――今度アプリが現れたら、そのまま開かずに警察に行って、警察官に画像を見せればいいんだ。そうしよう。


数日後、またアプリは現れた。

僕が警察に届け出るために、スマホを持って部屋を出ようとすると、突然電話の着信音が鳴る。

登録されていない番号だ。


いくら無視しても、ずっと鳴り続けるので、恐る恐る電話を取ると、湿った男の声が流れてきた。

「どうして開かないんだ」

僕は恐怖のあまり電話を切ると、鍵も掛けずに部屋を飛び出した。


数分間必死で走って、警察署前の信号に到達した時には、完全に息が切れていた。

ぜいぜい息を吐いている僕を、信号待ちをしていた人たちが、不審な目で見ている。


その時、僕の背後から声がした。

「どうして開かないんだ」

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