中間点B(1)
次の日。
昼休みになるとすぐ、わたしは学校の図書館にむかった。
おとといの人面犬も、昨日の丑の刻参りの女も、怪談として伝わっていた。
だったら、ラビュリントスの残り三フロアに住みついているおばけも、なにかの本にのっているんじゃないかと思ったのだ。
だけど妖怪図鑑を手にとり、ぱらぱらとめくってみて、わたしは自分の考えが甘かったことに気がついた。
この一冊だけでも、百ちかい数の妖怪が書かれている。どうやって、そこからラビュリントスにいそうなおばけを探せばいいんだろう?
他に、ヒントがあるとしたら……。
(……お父さん、学生のときに人面犬や丑の刻参りのうわさを聞いたって言ってたよね。もしかしたらあのおばけたち、昔からこの街にいたのかも……)
わたしは思いきって、司書の先生に相談してみることにした。
「すいません。このあたりの怖い話が知りたいんですけど、どういう本にのってますか」
「ええと、つまり、
司書の先生は、そうやって親切に教えてくれたけれど、わたしはこまってしまった。
そんなむずかしそうな本を探すなんて、わたしにできる気がしない。
第一、放課後になったら、またあの場所に呼ばれてしまうんだ。のんびり図書館なんか行ってるなんて、あるだろうか?
すると偶然、自分の本を返しに来ていたクラスメイトの
「地元の怪談なら、おれ、いくつか知ってるけど」
拝田くんとは志望校が同じで、塾でも同じ受験クラスに通っていたけれど、ちゃんと話したことは一度もない。
運動会や文化発表会でクラスのみんながもりあがっていても、自分ひとりだけちょっと引いたところから見ているような子だったから、こんなふうに自分から話しかけてきたのは、正直、かなり意外。
「拝田くん、それ、ほんと? おばけの話、教えてくれるの?」
「ああ、いいよ。けど、長谷さんはなんでそんなこと調べてんの。別に、そういうの興味あるキャラでもなかっただろ」
うっ。まあ、そうなんだけど。
「……な、夏休みの自由研究にしようと思って」
「いまから? まだ六月だぜ」
「だって、ほら、今年は受験だし、塾の夏期講習とかいろいろあるじゃん。少しでもひまのあるうちに、進めておかなくちゃと思って」
「すげえ。まじめだな」
拝田くんが笑いながら感心するのを見て、わたしははずかしくなった。つい、照れかくしに言葉を重ねてしまう。
「拝田くんこそ、まじめに勉強してるじゃん。
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