FUBUKI〜怨念の一矢

みっちゃん87

第1話 夜明け前の吹雪

闇が最も深い未明、静寂が街を包む時間。一条の影が、月明かりの下を疾走する。その名は吹雪。彼女の目には、怨念が宿る。目的地は、高い塀に囲まれた豪邸。吹雪は足音一つ立てずに、その塀を越える。


豪邸の主は、権力を振りかざし、多くの人々の命を軽んじた男。吹雪にとって、彼は復讐の対象第一号だった。縦笛を唇に当て、彼女は一つの音を奏でる。不気味な旋律が、夜の静寂を切り裂く。その音色が消えると同時に、吹雪は動き出した。


豪邸の中を、彼女は影のように移動する。セキュリティの目をかいくぐり、目的の部屋の前に到達する。ドアの隙間から、標的の男が眠る姿が見えた。吹雪は深呼吸を一つ。矢をボウガンに装填し、扉を静かに開ける。


男は、何かの気配で目を覚ます。しかし、その時は既に遅い。吹雪の矢が、闇を切り裂いて彼の心臓を貫いた。彼女の顔には、感情の波が一切ない。任務を完了した彼女は、瞬間移動を使い、闇に紛れて消え去る。


その後、警察が駆けつけると、豪邸は混乱に包まれていた。権力者の死は、すぐに大きなニュースとなる。しかし、誰も犯人の手がかりを掴めない。唯一残されたのは、縦笛の怪しい音色だけだった。


吹雪は、黒幕から次の指示を待つ。彼女の心は、次なる標的へと移っていく。しかし、その心の奥底では、この復讐が彼女自身をどこへ導くのか、未だ知る由もなかった。


この物語の幕が開く。

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