パンク・オブ・アウトローズ -外伝- 勇者ロランの冒険
星野道雄
ある『勇者』の話
第一話 「遠い昔」
はるか昔、世界を統べる「女神」という存在は広く知られていた。一部地域では実際に熱烈な信仰を集めているほどだ。だが世界規模でみたとき、それを本当に信じている者は少なかった。
しかしある時。その「女神」の存在が証明されることとのなる。なぜなら、彼女はヒトの住む地上に降臨したからだ。
彼女は眩い輝きを放つ、それはそれは美しい姿だったという。降り立ったのは世界の果ての隠れ里。そこには女神を祀る教会があった。その里の中心から天に浮かぶように、人々にその威光を見せつけるように、彼女は姿を現した。
──。
その女神は人々の永遠の繁栄と平和を信じていた。何故なら、世界の「ヒト」と呼ばれる種族は彼女が生み出したからだ。心というものが女神にあるならば、きっと、女神は心からヒトを愛していたことだろう。
しかし、ヒトは女神の意図したほど自らを尊く扱うようなものではなかった。
最初は手を取り合い、それぞれが平和と共生を願い、それを実現させていた。しかしその数が増え、世界中に散らばるにつれてヒトたちはさらに細かく一つの集合体を作るようになる。それは「部族」や「国」と呼ばれた。
そして、国が誕生してしばらくする頃には争いを起こし始めたのだ。物理的な距離は心の距離となるのか、ヒトたちは自分たちの国の領土を増やそうと武力をもって他所の国へ侵攻を開始したのだ。それは各地域で同時多発的に行われていく。
たくさんの血が流された。
女神が与えたもうた命は短い間隔で消費されていく。頭を抱えたのは女神だ。
「どうして私のヒトは争うのか、なぜ手を取り合えないのか、どうすれば手を取り合えるのか」
彼女の作ったヒトたちは、姿形はみな基本的に似せて創ったが、中でも肌の色、瞳の色、体の大きさの違いなど身体的特徴、ヒトとしての性格、つまり“個性”をたくさん持たせておいた。その方が楽しいと思ったからだ。みな同じならそれは「個」と言えるのか。みんな違うから良いのだ。
しかし、女神のそんな楽しみは裏目に出た。良かれと思って創り上げた「個性」すら差別と偏見を招き、争いの火種となったのだった。
──。
長きにわたる戦争の歴史は世界を疲れさせた。しかし止まることはない。今さら止まれない、あまりに多くの血が流されてしまっていた。みな炎に包まれて消え去るのだと、何のために戦っていたのかと誰もが思った。
そんな時、女神はそこへ降臨した。実は彼女は少しずつ世界に干渉しながら機会を待っていたのだ。そして、ついにそれは来た。
女神は自らの力を分け与えた「変革者」を生み出すことにした。世界を導くような、そんなヒトを。
善良にして、ヒトのために正義を成せるそんな人材を見つけると女神は自らの力の一部を授けることにした。実は授けたのはヒトに元から備わっている力だったのだが、それに気づいていなかった。女神はその「力」の才能を目覚めさせたのだ。
その最初の人物とは女神を信仰する教会の神父だった。
彼は女神に与えられた力で最初に火を、そのあとに水を、風や土をも操ることができた。彼は力を使い、瞬く間に争いを抑え込み、自らが女神に与えられた力を各国に教えて回ることで平和を説いた。
その力は後に“魔法”と呼ばれるようになる。
しかし、そんな魔法でさえ、ヒトは争いのために使うのだった。
女神はその繰り返される争いの度に世界を救う「変革者」を選び出し、世に送り出す。ヒトは失敗作なのか、愛すべき我が子は平和をもたらせるのか。
女神は自らにそう祈り、さらに力を授けた「変革者」を時代の節目に生み出し続け、争いをずっと見つめていた。
いつか、理想の世界が生まれるまで。
──第二話に続く
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