第24話 初めまして国王陛下

「うーん……」

 私が起き上がると、そこは玉座の間の隣にある応接間だった。

 ふかふかのソファに寝かされている。


「おっ、起きたか!」

 さっきの青髪のイケメン。彼はレオンと向かい合わせで別のソファに座っていた。

「あ、えっと、ご迷惑おかけしてすみません……」

 私はそう言って立ち上がると、レオンの隣へと移動した。


「いやいや、俺の方こそまさかそんなピュアピュアだとは思わずからかったりして悪かったな」

「いえ、大丈夫です……」

 そう返事をする私に対し、レオンが「だから大丈夫じゃねぇんだって」とツッコんでいた。


「ははは……まぁ、改めまして、俺はこのブライリアント王国の国王をやってる、マルクス・レオリア・ブライリアントだ。よろしくな」

 うわぁ、本当に国王様だった……。

「初めまして、国王陛下。サクラ・カヅキと申します」

 私は深く頭を下げる。

「あぁ、そう言うのいいから、気軽にマルクスって呼んでくれや」

「ええっ……無理です……」

 ドン引きする私。


「何っ、無理ならこっから話進まねぇぞ?」

 と、国王陛下。

「やめろ勘弁してくれ……」

 レオンがそう言って深くため息をついていた。


「そ、そんなぁ……マルクス様で勘弁してください……」

 私は涙目でそう懇願してみる。

「んー、ま、国王陛下よりはマシか。じゃぁそれで勘弁してやるよ」

 マルクス様はそう言ってニッと笑った。ホッとする私とレオン。


「で、レオンから粗方話は聞かせてもらった。ラナン村長の特別依頼は俺もさっき気付いてな、今向かおうと思ってたところだったんだ。すれ違いにならなくて良かったな」

 と、マルクス様。

 特別依頼っていうのはきっと村長とかの偉い人が出すクエストのことだろう、と私は勝手に解釈している。


「お前が直々に行く必要ねぇだろうが」

「いやいや、こういうのは自分の目で見て対処しねぇとさ。村長が本当は何に困ってんのか見えてこねぇかもだろ?」

「相変わらずだな、お前……」

 レオンにそう言われてわははと笑うマルクス様。

 

「まぁでも、お前んとこのクランが受注してくれたんなら、ウチからも1人出すからパーティに入れてやってくれ。一緒に進めようぜ」

 マルクス様がそう言うと、レオンは軽くうなずいてこう続けた。

「だそうだ虎丸とらまる。出番らしいぞ」

 虎丸……? そう思っていると、シュッと静かな音を立てて、ヒュナム族の忍者のような格好をしたイケメンが片膝をついて目の前に現れた。


「うわぁ、すごい、一体どこから……」

 私は思わずパチパチと拍手をする。

 すると、虎丸さんはポッと顔を赤らめていた。

「っ……! レオン。拙者せっしゃあるじは一応マルクスだ。彼より先に呼び出すのはやめてもらいたい」

「一応って何だよ」

 マルクス様が即ツッコむ。

「一応ならいいだろ」

 レオンも続く。


「まぁ、そういう事だから虎丸はこいつらと一緒にラナンの村に行ってきてくれ」

「御意」


 マルクス様は虎丸さんに指示を出すと、改まって私の方を向いた。


「で、さくら。一生のお願いだ。猫に変身するところ、見せてくれ!」

 マルクス様はそう言って手を合わせる。

 レオンの方を見ると、彼はしょうがないと言った感じでうんうんとうなずいたので、私は胸元の獣石に魔力を込めた。


「にゃぁ……」

「おぉぉ! すっげぇ!」

「何と……これがヴァーデルン……」

 マルクス様と虎丸さんの驚いた表情に、私は誇らしげな気分になり尻尾がピンと立つ。

 そして、レオンの膝にピョンと飛び乗りそこでくつろいだ。


「なるほど……さくらはレオンの嫁じゃなくてペットだったか……。でもペットじゃぁ王子様の使命は果たせねぇな」

 と、マルクス様。


 ん? 王子様? 今王子様って言った?


 私はすぐに人間の姿に戻ると、レオンの膝の上だと言うことも忘れて彼に迫る。

「レオンって王子様なの!?」


「てめぇ、いいから降りろっつーの!」

 レオンの顔は真っ赤になっていて、私もようやく状況を悟る。

「ひゃぁぁ、ごめんなさい!」


 そんな私たちを見て吹き出すマルクス様。

「やっぱ嫁か?」

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