第5話 いったん落ち着こう

「わわっ、そうだ、僕の上着着て、とりあえず」

 

 私がわんわんと泣き出したため、ジェイミが慌てて着ていたカーディガンを私に被せてくれた。


「ふぇぇ、ありがとう……」

 私はそれにくるまると、なんとか腰の少し下まで身体を隠すことができた。


 そのため、そのままレオンの膝から降りて彼の隣へと座る。

 すると、レオンははぁっと脱力し、ジャンは私が彼とは反対の方へ移動したため「そっち行っちゃうのかよぉ……」と残念がっていた。


「ちょっと、みんないったん落ち着こう。とりあえずこの子の話聞かないと」

 と、ジェイミ。


「ま、そだな。お前らいつまで気絶してんだよこのむっつり野郎!」

 

 ジャンがそう言って倒れている二人を蹴飛ばすと、二人は「うーん……」と意識を取り戻した。


 そして、エルフのイケメンが興味津々に私の身体を眺めてくる。

「猫が一瞬で人の姿に……とても興味深いな。それも耳は残したままなのか」


「へ? あ、本当だ……」


 私は袖に手を通して頭を触ってみると、頭に猫耳がついていることが分かった。

 人間の耳の部分には何もなく、これは正真正銘私の耳なんだと感じる。


 犬の耳のついているジェイミのようだ。ってことは……。


 私は彼にもふもふの尻尾がついていることに気付いたため、自分もお尻の辺りを触ってみると、案の定細長くもふもふの尻尾がついていた。


「もー、クロード。一応服着せたけどちゃんとは着てないんだから、そんなジロジロ見ないで。ジャンみたいなスケベだと思われちゃうよ」

 と、ジェイミ。


「む、そうか。それはすまなかったな“シュヴァルツ”よ」

 クロードと呼ばれたエルフのイケメンは素直にスッと引き下がった……が。


「私はシュヴァルツじゃありません!」

 私は不服だった。


「俺もスケベとは侵害だな。俺は自分の気持ちに正直に生きてるだけなんだよ。な、もふ子」

 どうやらジャンも不服のようだ。


「もふ子でもないぃぃぃ!」


「もー、話が進まないからみんな変な名前で呼ばないで!」


 ジェイミが怒ると、私以外の全員が声を揃えてこう一刀両断した。


「お前が名付けろって言ったんだろうが!」


「えへへ……そ、そうだった……はぁ」

 ジェイミはシュンと項垂うなだれた。


 唯一話を進めようとしている彼が脱落し、私たちは全然落ち着くことができなかった。

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