異世界召喚で猫の身体と行き来出る美少女へと転生した私は、いきなり追放されたけど若いイケメンに囲まれ毎日昇天な日々を送っています
るあか
第一章 異世界での生活
第1話 異世界召喚されていきなり捨てられました
「あ、このアニメ見なきゃ……」
ベッドにダイブしてためてたアニメの消化を始める。
「やだ……キスするの? きゃーっ」
私はアニメのキスシーンに真っ赤になりながら枕に顔を埋めた。
私、
というのも、学校という学校が全部女子校で、出会いなど全くなく思春期を終えてしまう。
社会に出てOLになってからも何となく面倒くさい気がして、ダラダラと過ごし今に至る。
SNSを見ていると、同級生なんかもう中学生くらいの子供がいる子もいるし、後輩たちも続々と結婚していく。
結婚したから何? 子供が生まれたから何? 私はこうやって毎日仕事から帰ったら寝るまでアニメを見たりゲームをしたりするのが好きなの!
幸せの形は人それぞれだ。
私の幸せって何だろう……。結婚すること? 家庭を持つこと?
いや、違うと思う。
私の幸せは多分……家で飼われている猫のように毎日家でダラダラしながら過ごすことだ。
あー、猫みたいに誰かに飼われてゴロゴロしながら胸キュンな恋愛アニメたくさんみたいな~。
イケボ&イケメンに癒やされたい~。
そうは思っても、自分の持っていない幸せの形を持っている他者は羨ましく思ってしまい、私は見なきゃいいのにSNSを開いて今日も落胆する。
そしてそのまま、寝落ちした。
⸺⸺⸺
⸺⸺
⸺
「ん? ここどこ?」
『やぁ。僕はこの次元の狭間の管理人』
目の前に現れたのは全身真っ白なローブに見を包んだ何か。
フードを深くかぶっていて、その中を覗くことはできなかった。
「はい? あぁ、なんだ夢か」
私は即座に理解する。
『そう、思ってもらって構わないよ。さて、君は今、ヴァシアスという異世界から召喚の要請が来ている』
おぉ、異世界召喚の夢か、いいね!
『召喚に応じるかい?』
「はいはーい、応じます!」
『スキルは君が自由に決めていいそうだ。どんなスキルをつけていきたい?』
「うーん……スキルって言われてもなぁ……」
『なら質問を変えようか。召喚後はどんな人生が待っていると思うかな?』
「そうだなぁ……」
私は少し考えて、寝落ちする前の私の理想論を語った。
「猫のように誰かの家に居候しながら毎日ゴロゴロして、キュンキュンする日々」
『……ちょっとよく分からないけど、了解したよ』
ちょっと、そっちから聞いてきたんだからもうちょっと理解しようと努力しなさいよ!
そう思っているうちに私の身体は強く光り、そのまま意識を失った。
⸺⸺⸺
⸺⸺
⸺
あれ、ここは?
石のレンガで囲まれた薄暗い空間。足元には変な模様の魔法陣みたいなものがある。
「にゃぁ……?」
え、何? 私にゃぁって言った?
そう戸惑っていると色んな巨人が私を覗き込んでくる。
まさか巨人族の世界に召喚されたの!?
「猫?」
巨人の1人がそう言う。
いえ、違いますけど。
「まさか猫を召喚してしまったのか!?」
「大失敗じゃないか……」
「一体どれだけの魔力を送り込んだと思ってるんだ……」
何、言ってんだこの巨人たち。
「さぁ、そんな猫捨てて、魔力回復後、もう1度挑戦してみるぞ!」
「そうだな」
「んにゃ!?」
私は簡単に首根っこを掴まれると、建物の外へと連れていかれ、ポイッと森の中へ投げ込まれた。
⸺⸺
いたたた……。え、夢なのに痛いってどういうこと?
まさか、本当に異世界召喚されたの!?
うっそ、どうしよう。しかもいきなり捨てられたんですけど!?
はぁ……と気持ちが沈みながら森の中をトボトボと歩いていると、更にあることに気付く。
あれ、私の足……猫なんだけど……。
「ぎにゃ!?」
足だけじゃない! 全部猫だ! アメショみたいな柄だ~!
しかも声を出そうとすると勝手に猫みたいに鳴く。
「んにゃぁ~……」
ほら。
でも猫だけど二足歩行で歩けるんだな。
ってか、あの次元の狭間の管理人さん、私が猫みたいになりたいって言ったら本当に猫にしちゃったの?
猫自体になりたかった訳じゃないんだけど……。
どうしよう。そもそも夢だと思ってたし、猫だし、捨てられたし、お先真っ暗だ……。
そもそもそっちが勝手に召喚しておいて、外れたからぽいとか酷くない?
なんか私、ガチャのノーマルキャラになった気分……。
そう思ってどこなのかも方角すらも分からない森を適当にトボトボと歩いていく。
⸺⸺
しばらく歩くと、前の方から黒いもやもやしているものが近付いてきていることに気付いた。
身体の毛がゾゾゾゾワッと逆立つ。
それは近付くほど形がしっかりと見えてきて、目が赤黒く光った狼のような化物だった。
『ガルルルル……』
「ぐるにゃ……」
尻尾がお股の間にくるんと挟まって動けなくなる私。私いっちょ前にちゃんと猫が怖がってるときの動作してるじゃない。
いやいやそんなこと考えてる場合じゃないって。え、待ってこれめちゃくちゃヤバくない?
待って待って狼さん、私なんか食べても美味しくないよ!?
『ガァーッ!』
「ぎにゃぁぁぁっ!」
私はギュッと目をつぶる。
⸺⸺氷結斬り⸺⸺
『キャゥン……』
え?
狼の悲鳴にパッと目を開けると、誰かが大きな剣でその狼をぶった斬り、狼は黒い霧となって消えていくところだった。
私、助かったんだ……。
この人が助けてくれたんだ。見知らぬ猫を助けるなんて優しい人だ。そう思い、その人の足に擦り寄り、ピンっと立った尻尾をピトッとその足にくっつけた。
その人は私をひょいっと抱き上げると、私の顔をマジマジと見つめてきた。
「何でお前猫のくせに魔力なんか持ってんだよ」
ん? 魔力?
いやいやそんなことよりも……。
この人めちゃくちゃイケメンなんですけど!?
黒髪にキリッとして吸い込まれそうなほどに綺麗な青い瞳。
しかも声も低音のイケボ!
そんな超絶のイケメンに私今……。
抱かれて至近距離で見つめられてるの!?
このままキスとかされちゃったらどうする?
だって人間同士ならさすがにないかもだけど、猫だったらワンチャンあるよ。みんな、自分の飼い猫にちゅーくらいするでしょ?
どうしよう私キスの仕方なんてよく分からないよ。
あぁん、こんなことなら誰でもいいから付き合ってみてキスくらい体験しておくんだった。
私はテンパり過ぎて訳のわからない妄想で頭の中がぐるぐると回っていた。
そんな私をよそに、イケメン君は考察を始める。
「んー……魔力があること以外はマジで普通の猫だな……そもそも何で今まで魔物にやられなかったんだ? まさかお前、戦えるのか……? あれで試してみるか……」
私はぽいっと地面に投げられ、妄想から我にかえる。
「にゃ?」
『シュルルルル……』
目の前には今度は黒いもやもやした蛇のような化物。
「ぎにゃ!?」
あれ、待って、イケメン君は!?
まさかまた捨てられたの!?
そう思っているうちに蛇の化物が襲い掛かってくる。
『シャァァァァァッ!』
「ぎにゃぁぁぁぁっ!」
⸺⸺氷空刃⸺⸺
私が絶叫していると、氷の刃のようなものが飛んできて蛇に命中し、蛇は目の前で黒い霧となって消えていった。
慌てて後ろを振り返ると、イケメン君が大きな剣を背中に納刀しているところだった。
なんだ、イケメン君いるじゃんそこに!
キスは? キスはどうなったの?
「やっぱ戦えねぇか……」
ええ、私が戦えるかどうか試したの!?
どうしてこの可愛らしい外見で戦えるかもって思ったの!?
「しゃぁねぇ……アジト連れて帰るか……」
イケメン君はそう言って再び私をひょいっと抱き上げた。
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