転生したけどタイミングが最悪でした

煤元良蔵

転生の間

1-1

「え~と……どこ……ここ?」


 状況が理解できない栗林エイジは惚けた顔で呟いた。栗林は今、どこまで続いているか分からない上下左右も分からない真っ白な空間の中心にいた。

 え~と。あれ。俺、ここに来る前って何してたっけ。

 栗林はこめかみをほぐしながら昨日の事を思い出そうとする。

 気怠い体を引き摺って仕事から帰ったのは覚えている。途中、コンビニによって缶ビールとつまみを買ったのも覚えてる。

 そこで栗林は唸り声を上げた。

 それからのことが全く思い出せないからだ。

 何とか思い出そうと唸っていると、鈴を鳴らしたような美しい声が頭に響いてきた。


「お目覚めですか。栗林エイジ様」

「だ、誰ですか!?」


 栗林はビクビクしながら周りを見た。だが、人の姿など見当たらない。

 

「ふぅ」


 栗林は自分を落ち着かせる為、目を閉じて深呼吸をする。数回深呼吸した後、ゆっくりと目を開けると、先ほどまでいなかった女性が栗林の目の前に立っていた。白いローブに身を包んだ綺麗な青色の瞳をした女性だった。


「どわっ!?」


 驚きの声を上げる栗林を見て女性は優しい笑みを浮かべた。

 

「驚かなくていいですよ」

「い、いや、そうは言われましても……」


 目の前に突然現れておきながら驚かなくていいとは無理があるだろう。

 栗林は苦笑いしながら頬を掻いた。


「あなたの名前は?」 

「ミミコと申します」


 そう言って優雅に一礼する彼女に栗林は目を奪われてしまった。しかし、すぐに咳払いをして次の質問を投げかけた。

 

「ミミコさん。ここってどこですか?木明町にこんな場所ってありましたっけ?」

「ここは、木明町ではありません」

「じゃあ、どこなんです?」

「転生の間です」


 ミミコは栗林の目を真っすぐ見てそう言った。

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