Count 12 【究極の聖女】アンリミテッド 01

「どうだ見よ、このタイラントの姿を! 怖気づいて声も無いか、ん? せいぜい足掻いて見るがよいわ。その隙に魔子マミは戴くぞ。クァーッハハハ!」

 言い捨てて麒麟人が魔法塔に向かって走り出す。空を飛ばずに。そこまでカラッ欠なのか……

「円東寺クン、オジサンに先越されちゃうよ! 何ならここはボクが相手するから追いかけて!」

 巫子芝はそう言うが、そんなわけに行くかよ。それに手は打ってある。まあどうせ、泣いて戻って来ることになると思けどな、クックック。

「あ〜円東寺クンが【魔王】の顔になってる!」

 そ、そんなことないだろ? とにかく今はタイラントを倒すのが先だ。


 竜星王タイラント。そのパワーは木星王の3倍。更に体の属性を相生相克に変化させ、弱点の的を絞らせない。五行の相性が悪ければ攻撃は半減され、防御しても一撃で体力の半分を持っていかれる。最悪の場合2ターンで終わってしまうこともあるだろう。

【きみなぐ!】は本来なら多彩な魔法の変化を楽しむゲームだ。プレイヤーも偏ったアンリミテッドや扱いづらいピーキーなエンドルフィンを捨て駒にして、バランスのいい鬼百合やフルスロットルを後に持ってくるのが定番だ。特にボス戦はそうならざるを得ない。


 タイラントの攻略は、プレイヤーのレベルが45以上あれば属性を回復に有利な水、木だけに固定して得意な技で押すこともできるが、38程度なら属性に全方位対応しなければならない。それがアンリミテッドとなれば更に厳しい。回避と防御に徹してパワーゲージを貯めて、必殺技リミットブレイクの爆発力に賭けるしかない。ただし今回は魔王オレが属性変化に合わせて魔法の盾でアシストするつもりだ。裏技がすぎる? 何か問題でも。


 どの程度の魔法をかけたらいいか、それを知るためにも巫子芝のステータスを確認しておく必要があるな。ちょっと見せてもらってもいいか?

「えっ、いいけど変なトコまで見ちゃダメだよ? あっ、でもおフロ見られてるし……」

 それは誤解だ! 断じて見てない! いや、巫子芝に魅力がないとかじゃなく……

『なにドツボにハマってんのよ! 要くんも見たいなら見たいって……ほら、安里ちゃんもそんなに恥ずかしがらないの! おフロなんてどうせ一緒に入るようになるんだし』

 突然オレと月霊姫のための通信回線に誰かの声がが飛び込んでくる。その声は同時に巫子芝のイヤリングにも届いているようだ。タツコさん?

『どうせだから私もそっちに行くわ。もう少し待つように言っときなさい、いいわね』

 言っておくって誰にだよ? タイラントにか。じゃあ……おお、こっちの【魔王】の命令も聞くみたいだ。

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