Another +1 Anri in wonderland " KIMINAGU" 17

そのころの魔王城


「もう土星王まで来ちゃいましたよ。今回は根負けしてくれると思ったんですけど」

 ため息をつきながらも月霊姫の顔はうれしそうだ。

 巫子芝がそんなことぐらいで諦めるかよ。頭だって悪いわけじゃ無い。まあ間違い探しを戦場の勘で突破されるとは思わなかったが。

「全くもう、ユビキタス様は彼女に帰ってほしいのかほしくないのか、どっちなんです? いっそのこと……」

 それ以上は言うな。同情でオレのハードモード人生に付き合わせるつもりはない。巫子芝には待っている男がいるんだからな。

「だからそれ、本当なんですか? 妄想で頭が熱暴走して、濁った目が腐ったとかじゃないんですか」

 その言いかた! 今は仮にもお前の上司なんだぞ? それにパートナーは作らないと決めたんだ。

「それが終わらせるもの、【ジ・エンド】の決意表明ですか?」

 どうだろうな。そんな大それたことオレが考えると思うか? 母さんじゃあるまいし。

 今のオレができるのはクソオヤジの代わりに【きみなぐ!】を稼働させて、星の魔子(マミ)を吸い上げるだけだ。それならばこの世界で面白おかしく生きて死ぬ、そんな引きこもり人生も悪くないんじゃないか?

「そんな瞳孔開きっぱなしの目で言われてもね。殺る気がダダ漏れじゃないですか、【魔王】様。……まあ彼女がパートナーになる件、私はいいと思いますよ。ゴーレムの私じゃお世話はできても子供は作れませんから。じゃあ行ってきますニャー」

 ちょっ、月霊姫ィ! 最後にしれっと爆弾落として出て行くんじゃねェェェ! オレがいつそんなこと頼んだよ! 巫子芝に軽蔑されるだろうが!


Saturn 01(土星王ステージ)


<お待たせだニャー! ここからは土星王ステージ、魔王城に続く地下迷宮ダンジョンだニャー>

 ここをクリアすればいよいよ魔王城に行けるんだね! でもニュイ、急に画面の中で動かなくなっちゃったから心配したよ? おトイレにしても長かったよね。

<き、きっとバグだったニャー! 古いゲームにはたまにあるんだニャー>

『ゆっくり休めたんだからよしとしましょうよ。さあ立って、ハリアップ! Here we go~』

 うん! さあこれで最後だよ。Easy work easy way~


『……それで要ちゃん、どうだった?』

<見事にこじらせてるニャー。何でそうなのかは知らないニャー>

『安里ちゃんに聞いてもよく分からないのよね~、誤解だとは思うんだけど』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る