これはお別れですわね。

俺は運転席に乗った強盗犯の1人に……。


「ブレーキを3秒以上踏み込んでから、エンジンボタンを2回タップするんだ」


と、アドバイス。



ブルルンとエンジンを掛かかると、俺は銃を持ち替えたそいつとガッチリ握手を交わした。


レストランの従業員が気付いたのか、みのりんやクロちゃんがお願いしたのか。防犯ベルがジリジリジリジリと鳴り響く。



グッドラックトゥボーダー。


国境までの道に幸運あれと伝えて、俺は固く握手を交わした。


奪われた車は勢いよく走り出し、ハイウェイの向こうへと消えていったのだ。



そこからはまた大変ですよ。


パトカーがまた10台近く現れて、レストランの駐車場を占拠するような形になった。


俺は犯人達のなんとなくの特徴だったり、逃げていった方向、持ち去られた車種とナンバーなどを伝える。


さらに、持っていた銃が俺が腰に銃弾を受けた時と同じ、恐らくキューバ製の少し古いタイプのアサルトライフルであることなども教えた。弾は5、56ミリのやつ。


最後に、コント風にさっきの再現をして、そこまでしなくていいからと呆れられてから、家族の元に帰ったのだった。



みのりんやクロちゃん、桜井さんにしてみれば、初めての体験でしたから、まだドキドキが収まらないといった様子。



そんな彼らに俺は伝えた。










「日本に帰りましょう」






もちろん、すぐにではなかったんですけどね。


シャーロットとの契約がまだ残っていましたから。


なんとか必死にトレーニングを重ねて体力的にも、感覚的なところも戻していきたかったのだが、なかなか上手くいかず。8月末、誕生日を迎えた翌日には近所のジムのランドリールームでの爆発事故にも巻き込まれたりしまして。


そんなこともあり、焦ってやるわけにもいきませんでしたし、目の感覚もまだ本調子ではなく、75マイルのマシンでバッティング練習するのが精一杯。


それでも、ワイルドカード争いにも敗れた後、ロレンス監督が残り3試合、みんなの為に出てくれないかとお願いされたが。



「本調子でないのに、メジャーの試合に出るなんてそんな失礼なことは出来ない。シャーロットにはたくさんの若手の有望株がいる。その選手達の貴重な出番を奪うわけにはいかない」


俺はそう返し、登録外ながら、ベンチでの盛り上げ役に徹したのであった。





早いもんで2年目のシーズンが終わり、シャーロット球団との話し合いも済んで新しい契約は結ばない形となった。



クロちゃん桜井さんコンビを韓国料理店にスンドゥブし、タッカルビしながら、球団との話し合いの結果をナムルした。


これまでの感謝を述べ、最後になるお給金関連の書類にトッポギをもらってこれにてサムゲタンとなったのだった。




それを見計らったように、メジャー2年で320試合に出場、通算打率3割1分2厘、33本塁打という成績を残した平柳君。


彼も俺が居なくなるのならと、マジで移籍を決断し、超強豪であるロサンゼルスへの加入が決定的となった。


一方の前村君は今年も開幕からローテーションを守り抜き、2年で33勝。


今年はレビンスキーを僅差で抑えて最多奪三振のタイトルを掴み、新たに3年60億円越え契約を結んで、ファンの願いも叶った残留となった。



後は神沢も今シーズンは自身2度目の2桁勝利をマークし、アナハイムと2年を残した契約に向かって更なる上積みが期待出来そうな活躍を見せていた。



俺が今までの幸運を使いきったみたいに色んなことがあったせいか、日本プロ野球に所属する実力者達の動向は鈍化した。


いよいよメジャーかと言われていた選手が急遽発言を撤回したり、保留がだいぶ長引いたり。なんとなくだが、メジャー球団も日本選手の獲得や調査に消極的な印象だった。


そんな中、唯一昨年からの宣言を貫き通したのが、ビクトリーズの千林君であった。



新球団創設1年目に、新球団ドラフトとかいうやつで移籍してきたばかりの頃なんてさあ。


投げてみないと、どうなるか分からんガチャピッチャーであったが、気付いたら160キロをコンスタントにマークするナイス右腕になっていた。


ここ何年かの彼の活躍はリーグの中でもエース級。


目を見張るものがありましたわね。













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