第15話 スライムの群生地
「とー! ……という訳で、これがパープルスライムだよ。スライムの中では結構強い方だけど、まぁ私にかかれば造作もないよ」
そう言って、カレンさんがパープルスライムを謎の高速移動と光魔法でコアだけを破壊して倒してくれた。
「これは……意外にしっかりしていますね」
「そうだね。ソフィアの脚くらいの弾力はあるね」
「これなら、結構良い枕が作れそうです」
「そうか。じゃあ、もう少し倒していこうか。奥に行けば、パープルスライムが大量に湧く場所があるんだよ」
カレンさんに連れられ、パープルスライムの群生地である毒の沼の近くへ。
とりあえずで来てみたけど、このスライムは思っていたより良さげだった。
これなら、上手くやればカレンさんが及第点だと言った枕が作れるかもしれない。
そうすれば、カレンさんが僕の脚を枕にしなくても、ひとまずは眠られるようになる訳だし。
……少なくとも、今朝みたいな事態は避けられるようになるはずだ。
「カレンさん。ありがとうございます。持ってきた袋にいっぱいまで溜まったので、もう大丈夫です」
「そうか。じゃあ街へ戻ろうか……って、随分と多いね。片付けるから、ちょっと待ってね」
カレンさんが高速移動でパープルスライムを倒し、僕がその死骸を回収する……というのを暫く続け、かなりの量が回収出来た。
気付いた時にはパープルスライムに囲まれていたけど、カレンさんが難なく倒していって……あ、あれ!?
「か、カレンさんっ!?」
「……ごめん。今朝、アルス君ので起こされちゃったから……眠い」
「カレンさんっ! カレンさーんっ!」
ど、どうしよう! カレンさんの動きが明らかに鈍くなってきた。
しかも、相手は毒をもっている上に、パープルスライムよりも遥かに弱いブルースライムに勝てない僕が何とか出来る相手ではない。
その上、僕が持ってきているのは、攻撃力が高くないフルーレと枕を作る為の材料だけだ。
でも……何とかしないと! 僕のせいでカレンさんが寝不足になっちゃった訳だし。
「……はぁっ! す、すまない。何とか、逃げる道を作るから、アルス君だけでも……」
「何を言っているんですかっ! カレンさんも一緒じゃないとダメです!」
「気持ちは嬉しいが、アルス君は私に巻き込まれただけだ。本来、魔物と戦うような生活ではないだろう。だから気にせず……」
「だ、ダメですっ! そ、その……カレンさんは僕のお姉ちゃんなんですよね? お姉ちゃんを見捨てる弟なんていませんっ!」
「――っ! これは……漲るっ! 力が漲るっ! アルス君! もっとだ! もっと言ってくれ!」
よく分からないけど、カレンさんの顔が輝き、動きが良くなっていく。
だけど、すぐ近くにある毒の沼から、パープルスライムがどんどん出てきて切がない。
少しずつ沼から離れてはいるんだけど、やっぱり僕の応援だけではダメみたいで、段々とカレンさんの動きが鈍ってきた。
でも、もう少しなんだ。もう少しで馬をとめている所まで辿り着くのに!
「お、お姉ちゃん! 頑張って!」
「な、名前も加えて欲しい」
「え? えっと……カレンお姉ちゃん、頑張って!」
「いいよー! もっと甘えた感じで!」
「えぇっ!? んー……カレンお姉ちゃーん! 早くおうちに帰ろうよー!」
「ふぉぉぉっ!」
よ、よく分からないけど、カレンさんの動きが良くなって……あぁぁぁ、あと少しという所なのに、遂にカレンさんが完全に止まってしまった。
倒れかけたカレンさんを支え……鼻から血が出てるっ!?
まさかパープルスライムの毒に!? 早く治療しないとっ!
幸い、パープルスライムを枕にした時に毒が残っているかも……と、毒気しの薬とその原料である毒気し草は持ってきている。
でも、治療するにしても、先にここから抜け出さないと!
「そうだ! カレンお姉ちゃん! 剣を借り……えぇっ!? 重いっ!?」
「アルス……君。ダメだ。勇者の剣は勇者である私にしか装備出来ないんだ」
えっと……要は僕には使えないって事!?
でも、カレンさんは軽々と持っているし、その剣を持つカレンさんの右腕が重い訳でもない。
「……そうだ! じゃあ、僕がカレンお姉ちゃんの手を動かせば良いんだ! お姉ちゃん……力を貸して!」
カレンさんの右手を握ると、ゆっくり上に持ち上げ、前方にいるパープルスライムに向かって振り下ろす。
普通の魔物相手にはこんな事は出来ないけど、動きが遅いスライムだから、無事に命中し、スパッと切れた。
「やった! 倒せた! カレンお姉ちゃん! もう少しだけ頑張ってね!」
カレンさんを抱きかかえ……は無理だったので肩を支えながら何とか歩き、更に数体パープルスライムを倒して、群生地から脱出する事が出来た。
……ところどころ、カレンさんが自分で歩き、かつ剣も軌道が変わっていたりしていた気もするけど、とにかく無事で良かったよ。
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