第3話 歴史モノに出版エージェントはついてくれない
こんにちは、坂口です!歴史モノのみ延々と書き続ける、大変物好きな作家です。
今回は、わたしが「出版エージェント」に断られ続けたお話をいたします。
皆さんは「出版エージェント」とか「出版プロデューサー」なる商売をご存知でしょうか?
一言で説明しますと、「作家の代わりに出版社に持ち込みしてくれる人」です!この職業、日本ではあまり知られていませんが、実は欧米では昔から「作家はエージェントに頼むのがフツー」らしく、かのハリポタの作者も、エージェントに頼んで何社も回ってもらったのだとか。
この「作家」と「出版社」の橋渡し作業、作家にとっては、とても、とても、ありがたい存在!考えてもみてください、東京都だけで、いったい出版社っていくつあるでしょうか?この中から、自分の作品にマッチするところを探し出すって、至難の業ですよね?
わたしがエージェントの存在を知ったのは、一年前、持ち込み作業に疲れ果てた時でした。
その時、わたしはネットで歴史の本を出してる出版社を片っ端からピックアップし、少なくとも三十社くらいに、特攻隊よろしく企画書を送っていたのでした。
三十社って……口にすればたった一言ですが、実際やってみると大変です。封筒出したり、メールしたり、企画書書いたりという作業も大変ですし、「歴史モノを出してる出版社」を探すのも、意外と大変です。小説出してるところは多いですが、歴史モノを出してるところは意外と少ないですからね。
そして、何より精神的にキマス……。
と、言いますのも、九割がたの出版社は「企画書受け取りました」の自動配信メールすら寄こさないからです!そして、来るか来ないか分からない返事をひたすら待つ……。たま~にポツッと「うちでは無理ですね」のたった一言のお断りメールが来る。中には、「企画募集」のホームページに「合否にかかわらず一カ月以内にお返事します」と書いてあるのに、返事が来ないという大ウソつき出版社も!
この状態が長く続くと、精神的に参ってしまって、執筆にも差しさわりが出ます。それで、
「誰か持ち込みを代わってくんないかなあ」
と、何とな~くネットを見ていて、この出版プロデューサーやエージェントを見つけたのでした。エージェントが自分に合う出版社を見つけてくれる!しかも調べてみると、編集者とのやり取りや、その後作品の宣伝に携わってくれる人もいるとか。「これだ!」と思いましたね。
そうです、そうです、わたしもそうですが、作家って引き籠り族が多くて、売り込みや宣伝は基本苦手なんですよね!人としゃべるのよりも書く方がラクだったりして……。それを全部代わってもらえるんだったら、こんなありがたいことはありません!
こうして、浮かれまくったわたしは出版プロデューサーやエージェントをあちこち当たってみることになったのです。
調べてみて分かったのですが、出版プロデューサーやエージェントの会社って、意外とたくさんあるんですね。「これなら大丈夫!」とホクホクして、まずは大手のA社へ。ところが……、
「歴史は基本、引き受けてないんですよね。でも一応読んでみます。お返事は三か月後に」
三カ月?年末でもないのに、そんなに仕事が立て込んでるの?それとも、よっぽど読むの遅い……?
訳も分からず、取りあえず待って、そろそろ三か月目。返事は来ません。三カ月と一週間。二週間……。さすがにキレて、こちらから電話すると、
「ああ、読みました。やっぱり、うちでは無理です。歴史モノはやっぱり……」
次にK社、ここは問答無用で断られます。
「歴史は専門外なんですよね。大変申し訳ありませんが」
また次に、超有名な「企画のT屋さん」。ここは大変やんわりと
「こちらで扱っているのは、ほとんどがビジネス書でして、歴史は極めて数が少ないと言わざるを得ません。それをご承知おきください」
と!それで、数週間後に見事にフラれました。
最後に相談したのはJ社。ここが一番ひどかったです。
「取りあえずZoomで会議しましょう」
と言われて、Zoomを繋ぐと……
「このままでは確実に出版できませんよ。どうです?まずはうちのセミナーに出ませんか。一回十万円です」
もちろんですが、速攻断りました。
こう、あちこち当たってみて、一つ学んだことがあります。
それは、「出版プロデューサーやエージェントで扱ってるのは、ビジネス書ばっかり!」ということ。
なぜかといいますと、それが一番商売としてラクだから、当たりやすいから、売れるかどうか分かりやすいから、です!
そして、小説、絵本、写真集なんかは扱ってくれません。当たるかどうか大博打だからです。そして、歴史モノもその一つだったのです!ためしに、出版プロデューサーやエージェントのホームページで、「これまで出した本」を見てみて下さい。見事にビジネス書ばっかりです。
ビジネス書が悪いとは言いません。これも出版物の中で大きなシェアを占める一つですから。ですが……やはり出版物の中で王座に就くのは、「文芸」と呼ばれるものだとわたしは思います。その文芸が、出版業界の中でこうも見事に無視される、商売から外される、危険だと避けられる現実があるとは、正直知りたくありませんでした。
今、「作家が小粒になっている」「売れる小説家がいない」と騒がれる時代になっていますが、その背景には、出版業界がリスクを怖れて、作家を発掘しなくなっている現状があるのではないか?と思えます。
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