第3話

「じゃぁ、またね。」

「またね。空ちゃん。」


 今日も一緒に遊んだ小鳥ちゃんを自宅の玄関から見送り、リビングに戻ると兄がソファでくつろぎながらゲームをしていた。私が入って来たことに気がつくと話しかけてきた。


「今日も小鳥と遊んでたのか。」

「うん。」

「最近は特に遊んでるな。まぁ良いけど、あんまり遅い時間にならないよう気をつけろよ。家が近いって言っても暗いなか歩かせるのも危ないから。」


 兄がそんな小言を言ってきた。言ってきやがった。てか帰ってきてたなら声をかけてほしい。何の為に小鳥ちゃんが日々うちに遊びにきていると思っているのか。それをのうのうとこの男は、全く。小鳥ちゃんが帰る際に顔を出すぐらいはできないのか、てかそんなんこと言うくらいなら家まで送るぐらいしてほしい。


「そう言うならお兄ちゃんが家まで送ってくれても良いんじゃない。」

「これ以上暗くなってから帰るようだったら送って行くつもりだった。」


 っち。もう少し遊んでいれば良かった。まぁ、兄にその気があったなら次回から送ってもらおう。


「あと、母さんが買い物して帰ってくるから晩飯が遅くなるって。」

「そう。」

「だから晩飯まで時間あるし、一緒にゲームでもしないか?」


 「やらない」そう言い残して自分の部屋に戻ろうとしたが、ふと思い立ち兄へと向き直る。


「うん、やる。」

「マジで!!」

「ゲーム取ってくる。」


 兄の驚いた声を背に自分の部屋にゲームを取りに行く。いつもならやらない一択だが、そろそろ1学期も終盤に近づき夏休み目前だ。一度兄のヒロインレースの状況を聞いておくのも良いだろう。小鳥ちゃんによれば高校に入ってヒロイン候補が増えたとのことなので、ここいらで兄の中でのヒロイン候補の好感度を探ってみようか。


「久しぶりだな、一緒にゲームするの。」

「そうだね。」


 そんなたわいも無い話をしながら、ゲームを一緒にやる。さて、どう切り出したものか。


「そういえば、空は最近学校はどうなんだ?」

「うん?急に何?」

「いや、友達とかできたのかなって思って。小鳥以外と遊んでるの見たことない気がするから。」


 私は小鳥ちゃん意外と遊んでいないから気がするではなくその通りなのだが。ふむ、もしかして兄は交友関係を探るためにゲームに誘ったのだろうか。探るほど交友関係がないけど、友達がいないから。


「友達ならいないよ。」

「あぁ、クラスで話す子とかいないのか?」

「いないよ。それよりお兄ちゃんは高校で友達できたの。」

「そりゃもちろんできたよ。先週も一緒に遊びに行ったし」

「女の子とも仲良くなったの?」

「クラスの子で何人か仲良くなったよ」

「よく話すのはどんな子?」

「え、気さくな子で誰とでも仲良く話すかな。何度か遊びに誘われてるし。」

「ふーん。可愛いの?」

「そうだな。可愛いよ。」


 なるほど、クラスメイトヒロインは可愛い距離感近めなタイプか。何度か遊びに誘うぐらいだから、普段から兄に話しかけているんだろう。小鳥ちゃんが控えめな性格だから反対のタイプだな。


「なんでそんなこと」

「他には、部活とかはどうなの?」

「ああ、天文部に入ったんだ。」

「へぇ、てっきり陸上部とかテニス部あたりに入ると思ってた。お兄ちゃんって星に興味あったんだ。」

「いや星自体は興味なかったけど、実は先輩から天文部が人数の問題で廃部になるかもしれないから助けてくれって言われてね。それに元々バイトをやりたかったから運動系には入る気なかったしね。」

「そうなんだ。で、可愛い子いるの?」

「……さっき言った俺を誘った人が可愛いというか綺麗系かな。」

「どんな人なの?」

「しっかりとしたかっこいい感じの人かな。」

「なるほど。」


 部活の先輩は綺麗系なタイプか。これから部活動を通して兄にアピールを仕掛けるだろう。先輩だから兄と接触する機会はそう多くないだろうが、油断はできない。


「バイトはどうなの?」

「?この前、空も来ただろあの喫茶店だよ。他には掛け持ちしてないし。」

「そうじゃなくて、バイト先の人とは仲良くなったの?特に女で。」

「もちろん仲良くなってるよ。女性はいるけど、シフトがそんなに被ってないから半してないんだよな。」

「そっか。」


 バイト先については今のところ対抗馬はいないようだ。


「お兄ちゃんって彼女ほしいって思ったりするの?」

「あーほしいといえばほしいかな。」

「そうなんだ。告白されるけど全部断ってるからいらないのかと思った。」

「いらないから断ってわけじゃないんだけどね。ってか何で俺が告白されたこと知ってんの?」

「前話してたよ。それより何で断ってるの?」

「そりゃあ、告白されたけどその子が好きかって言われるとそうじゃないから付き合わなかっただけだよ。」

「なるほど、つまり好感度不足だったと言うわけだね。」

「まあ、そんな感じ。」


 やはり好感度を稼がないと告白は成功しないみたいだな。後は小鳥ちゃんがどれだけ好感度を稼げているか次第かな。


「俺のことばかり聞くけどそういう空はいないのか気になる子?」

「いないよ。」

「本当に?」

「本当だよ。」

「とか言って本当は?」

「うざい。」


 その後、兄のめんどくさい追求を聞きながらゲームをした。





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私(空):

 陸のヒロインレースの状況を聞くが、他人に興味がないため途中でめんどくさくなっていた。また聞いたことはあまり覚えていない。


小鳥;

 最近は連日空と遊んだり宿題をしている。その際ついでに陸に会おうとかは特に考えていない。


陸;

 久々に空と遊べてとても喜んでいる。空から女性関係について聞かれてことについて、空もとうとう恋愛に興味を持ったのかと思っている。

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