Eye’s of the slayar. 〜宿命の戦い〜(上)

平松樹蘭

第1話 4月1日 実況と解説ー1

 「観客の皆様、本日は血の池コロシアム内、パブリックビューイングにご来場いただき誠にありがとうございます。

 さぁ、8名の精鋭がスタートゲートに到着いたしました。

 実況は私、キヨ。16歳で現世を去り、奪衣婆(だつえば)様の補佐官になって早、200年余り。大変僭越ながら、永遠の16歳であります。

 解説は地獄の入り口の番人!!本ゲームの主催者であられます奪衣婆様でございます。奪衣婆様、本日はよろしくお願いいたします」

 

「はい。よろしくお願いいたします」


 「いや~。奪衣婆様。今回は17年ぶりの開催になりますね。17年。長いでしょうか。短いでしょうか? 長いといえば長いような、短いといえば短いような。今のお気持ちをどうぞ」


 「そうですね。特殊な条件下で集められた精鋭たちになりますからね。17年で開催出来たのは奇跡に近いかもしれません。もっと、時間がかかっていても、おかしくなかったかもしれませんね」


 「そうですね。前回大会は、17年前。その前が、更に53年前になります。

 前回も前々回も私、キヨが実況を務めさせていただきましたが、かなり白熱したゲームが繰り広げられました。

 今回も精鋭の皆様には、これまでに類を見ないゲーム展開を期待してしまいますが、いかがでしょうか」


 「そうですね。今回も観客席には世界中の神々が集結しておられますし、何せ、精鋭の数が揃わないと開催できない大会ですから、観客の皆様の期待も高いと思います。期待を裏切らない、芸術とも言えるようなゲーム展開を期待します。とても、楽しみです」


 「はい。私もワクワクしております。

 では、ゲームスタートまで、まだ時間がございますので、本大会のルールをご紹介していきたいと思います。

 その前に、観客の皆様のお手元には有機EL2Kフレキシブルディスプレイ6インチが配布されております。

 お手元のフレキシブルディスプレイで地図を表示していただく事ができます。

 画面を1回タップしていただきますと自動的に起動いたします。

 起動いたしましたら、画面内の地図アプリをタップしてください。2K映像で地図が表示されます。

 なお、このフレキシブルディスプレイは地図アプリと時計機能・実況中継配信アプリ・ゲーム速報のみに対応しています。

 大会開催中はそれ以外の用途でのご使用はできませんのでご注意ください。

 なお、ディスプレイが不要な方は、会場内に設置されております回収ボックスに返却していただくか、ディスプレイの電源をお切りくださいますようお願い申し上げます。

 切電は画面を2回タップしていただけますと自動的に消えるようになっております。

 再起動なさりたい場合は、再度、画面を1回タップしてください、自動的に起動いたします。

 起動より1分経過しますと自動的にスリープしますので、起動なさりたい場合は画面を1回タップしてください。

 お手元にフレキシブルディスプレイをお持ちでない方は近くに獄卒が係員として控えておりますので、係員までお知らせください。

 こちらのディスプレイは大会終了後に皆様へプレゼントいたします。記念にお持ち帰りください。

 大会が終了いたしましたら、会場出口にてディスプレイ内の登録内容を全てリセットし、取扱説明書を配布させていただきます。不要な方は回収させていただきます。

 大会途中で退場なさる場合は、近くの係員にその旨、お申し付けください。登録内容のリセット対応をさせていただきます。

 なお、本会場では、フレキシブルディスプレイ専用首掛けタイプのディスプレイバッグをご用意しております。色は、ターコイズブルー、リッチブラック、アプリコット、ベイビーピンクの4色を取り揃えております。お近くの売店でご購入いただけます。ぜひ、お手元にお迎えください。

 では、本大会のルール説明をさせていただきます。

 今回の開催場所は、町役場を中心とした半径3キロメートル、善良な者しかいない人口1000人の幻夢の町です。

 半径3キロメートルの地点には肉眼では見ることのできない、レーザーバリケードが貼られております。陸からも空からも、外に出る事はできません。

 精鋭の皆様には、この幻夢の町で殺し合いをしていただきます。

 町の住人を殺せば即失格。動物も含みますし、巻き添え事故も含みます。

 潜伏可能ですが、1箇所にとどまれる時間は24時間。

 24時間を超えますと自動的に失格となります。

 精鋭の皆様には、潜伏費用として100万円と幻夢の町で使用可能な身分証ID、スマートウォッチをお渡ししております。なおこの身分証IDは、幻夢の町で生活する上で、不動産の契約、病院の受診、就職活動、運転免許証の代わりとして使用する事ができます。

 スマートウォッチには、身分証IDをダウンロードしてあり、100万円もチャージされております。精鋭同士であれば送金システムを使用する事ができます。その他、通話機能、地図アプリ、ソーシャルネットワークサービス、ゲーム速報を利用できます。

 ただ、残念な事に実況中継アプリはダウンロードされていません。実況中継が必要な精鋭は各自アプリストアからダウンロードしなければなりません。ダウンロードの料金は60万円。スマートウォッチは、強奪可能です。

 殺し方は自由。

 制限期間は一週間。

 期間内にお一人だけ生き残っていただきます。しかし、制限期間を過ぎても生き残りが複数いる場合はサドンデスに突入!!

 その場合は、ここ血の池コロシアムの中央に専用リングを設けまして、1対1で殺し合いをしていただきます。

 以上のルールを守ってプレーしていただければ、何をしてもOKです。

 見事生き残ったお一人には、現世への転生が約束されます。

 失格になった方は、残念ながら、火片となって消滅していただきます。

 では最後に、町の空をご覧ください。晴れ渡った青空に大きく白い文字で”8”の文字が浮かんでおります。これは、精鋭の人数がカウントされた数字です。精鋭が減る毎に数字も減ってゆきます。もちろん、フレキシブルディスプレイの方へもゲーム速報として通知されます。

 さぁ、精鋭8名の準備が整ったようです。

 いよいよ、待ちに待ちましたゲーム開始のお時間です。

 各精鋭、スタートゲートをくぐりますと自動的に幻夢の町のスタートポジションにワープする仕組みになっております。スタートポジションはランダムに振り分けられます。

 精鋭8名には思う存分殺し合っていただきましょう。

 さぁ、精鋭8名がゆっくりとスタートゲートを潜り抜けました。

 では、スローターゲーム!!レディーーーー!!ゴー♪」

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