第5話 宮波 美緒と2人で講義後の時間を過ごす
その日、すべての講義が終わる頃にはもう外が暗くなっていた。
薫はその日最後の講義を終えると、講義室を出て階段を降りていく。出口があるロビーへと向かうためだ。
(もうすっかり外は暗くなってるな。七瀬さんも宮波さんももう帰ってるかもしれない)
そんなことを思いながら階段を降り、学部棟のロビーへとたどり着くと、すでに生徒はかなり少なくなっており閑散としていた。
(コンビニでも寄って帰るか)
なんとなくさっさと帰る気にならなかった薫は、そんなことを考えながら出口へと向かう。
「あっ、薫くん」
しかしその途中で呼び止められる。
「宮波さん、お疲れさま」
「うん、お疲れさま」
宮波 美緒だった。薫は今すぐロビーを出る予定を変更して、美緒が座っている窓際のカウンター席に向かう。
「宮波さん、まだ残ってたんだ」
「う、うんっ……課題のレポートが終わらなくて。家帰っちゃったらどうせやらなくなっちゃうからさ」
(本当は薫くんがこの時間に終わるの知ってて待ってたんだけど……今まではグループの男子もいて2人きりにはなれなかったし)
そんなことを内心で考えていることを知らない薫は、美緒がもじもじしている様子を不思議に思いながらもそれ以上つっこむことはしなかった。
「それよりっ、薫くんはもう帰るの?」
「もう少し大学に居るかな。講義も終わったし、今からコンビニでも行こうかと思ってたとこ」
「わたしも一緒に行っていい?」
もちろんと返事をして、薫は美緒と一緒に大学内に設立されているコンビニへと向かうことにした。
空は暗闇に染まり、頬をなでる風は冷たい。キャンパス内に設置されている街灯だけが、薫たちの歩く道を照らしている。
「うぅ~やっぱこの時間になると寒いね、上着持ってくればよかった」
そう言いながら、美緒は体を少しずつ薫の方へと近づけてくる。
もう完全にふたりの体は寄り添い合った状態で歩いており、彼女の温もりが薫の体へと伝わってくる。
(ちょっ、宮波さん近い……)
そう思いながらも、薫は美緒とくっついたまま歩いた。もし離れたら彼女を拒絶しているみたいになってしまうし、こうして体と体が触れていることで彼自身も寒さを和らげることができているからだ。
それに、こうすることで美緒が少しでも暖かくなってくれるのであればそれがなによりだと思った。
彼女は今日も丈の短いショートパンツを身に着けており、綺麗な脚は大胆にさらけ出している。きっと寒いに違いない。
コンビニにたどり着くと、店内は暖房が聞いているのかかなり暖かい。
「あったか~。ねっ、薫くんあったかいもの買ってこ」
「そっ、そうだね」
店内はあったかいにも関わらず、なぜか今も美緒は薫の腕を掴んだまま暖かい飲み物のコーナーへと向かって行く。
もう離れてもいいんじゃないか……と思いながらも、店内にはほとんど人がいなかったので、薫も彼女に引っ張られるままホットドリンクのコーナーへと向かった。
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