第17挑☆襲い掛かる風刃切り! 挑vs関根 後

 ……っと、カイソンの心配をしていたら、関根の蹴りが飛んでくる! 完全に破壊できたわけじゃねえけど、左足首のダメージは相当でかいはずだ。じわじわ毒も広がっていくはず。なのに、さっきと変わらず蹴りの連撃を放ってくるとか、並の精神力じゃねえな。


「すげえな、関根。こんな蹴りを放つ奴、見たことねえよ」


「お前こそ。俺の蹴りを受け続けて、なぜ倒れない」


「そりゃあ、ハートが強ぇからよ!」


 関根のローキックを耐えたとき、カウンターで関根の鎖骨めがけて右ストレートを繰り出す。


「かはっ……」


 俺の拳を受けて、関根は動きをとめた。どうやら、一瞬、呼吸の仕方を忘れたらしい。


 関根の鎖骨のあたりが毒に侵され、醜く焼けただれたようになる。


 関根の額から汗が流れている。このまま押し通す!


 だが、一瞬嫌な予感がよぎる。


 たたみかけるのをためらった瞬間に、関根のセナキバネセセリが俺と関根の間を飛ぶ。そのために、関根の姿を束の間見失う。


 何か来る!


 俺は直感で右に飛んだ。


 刹那、風の刃が俺の頬を切る。刃が向かった先にあった庭の木々が切断され、倒れていく。


「風刃切りか……!」


「ほう、この技がわかるのか」


「ポワロンに聞いたぜ。屋上では使わなかった技だ。そんなに乱発できるもんじゃねえんだろ?」


「通常、ペットのバタフライの能力は1回使ったら終わりだ。だが、その日のうちに再び使うことができるように、バタフライポーションがある」


 関根はズボンのポケットから小瓶を取り出し、一息に飲み干した。


「これで、あと一撃、風刃切りを放つことができる。次は外さん」


 あと一撃。


 ということは、次の一撃で、風刃切りはラストか。


「へっ、面白ぇ。当てられるもんなら当ててみろよっ」


 今、関根との間には距離がある。風刃切りをさせねえために、この距離を潰す!


 俺は地面を蹴り、弾丸のように突進する。関根の蹴りを受け流し、関根にカウンターを入れる。


 しだいに、関根の攻撃よりも俺の攻撃が当たるようになっていく。関根にダメージが蓄積されていく。


 だが、毒がまわり、顔色が悪くなっても、関根は攻撃の手を緩めない。


「挑、お前は強い。もともと強い身体で、こっちの世界に来たんだろう。だがな、強い奴ばかりが勝つ世界なんて、俺は認めない。弱くても、もともとの能力がなくても、努力すれば勝てる。それを、俺が勝って証明する!」


「心意気は最高だぜ!」


 ふいに関根が後方に飛ぶ。関根の右足に風が集まる。


 風刃切り、まともにくらえば身体は真っ二つだな。


 関根の目、腰、つま先、攻撃を発するために必要な動きの細部まで見逃すな。初動を掴め。俺ならかわせる。


 さっきみたいな偶然じゃねえ。


 関根の右足に集まる風の流れが止まった。その瞬間、俺は思い切り左サイドに飛んだ。


 右腕に鋭い痛みが走る。完璧によけきれはしなかった。それだけ、風刃切りを放つ蹴りのスピードが速かったということだ。


 だがもう、終わりだ。


 大技を放ったあとは大きな隙が生まれる。


「てめえは強いぜ、関根。だが、モコの能力を合わせれば俺はもっと強ぇ!」


 関根との距離をゼロにして、みぞおちに右ストレートを放つ!


「ぐううっ」


 関根の身体は後方に飛び、そのまま仰向けに倒れた。


 顔の汗が尋常じゃねえ。さすがに、もう動けねえだろ。


 俺は関根を見下ろした。


 関根は血を吹きながら、荒い呼吸を繰り返している。


「……強いな。初心者のくせに。上から見下ろして……これだから強い奴は」


「一度、屋上でお前の攻撃を受けたからよ。お前の戦闘スタイルがわかっていたから、勝てたんだ」


「ふつうは、わかっていても俺に勝てる奴なんかそうそういないんだがな」


「まあ、そうだろう……な!?」


 刹那、脇腹めがけて炎が飛んできた。


 俺は関根から離れて、攻撃してきた奴をにらみつける。


 そうだ。相手はもう一人。


「赤鬼……!」


 俺ははっとして、カイソンを見た。さっきより切り傷が増えている。Tシャツは真っ赤だし、脚にはやけども負っているじゃねえか。


「カイソン! 大丈夫か!?」


「大丈夫っす。でも、関根が終わったんなら、手伝ってくださいよ」


「ああ」


 関根と集中して戦えるように、赤鬼を引き付けていてくれたんだろ? 時間稼ぎ、ありがとうよ。


 俺はカイソンと肩を並べて、赤鬼と向き合った。


 赤鬼はまったくの無傷で立っている。汗ひとつかいてねえ。


「挑、といったな。まさか、関根を倒すとは」


「関根は強かったぜ。俺のほうが強いがな」


「ふん……久しぶりに楽しめそうだ」


 赤鬼が野太刀をかまえた。


「こっちも、攻めるぜ、カイソン」


「了解っす」




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