第102話
アイリスの寝室で眠くもないのにベッドで横たわっていると、本を読んでいたアイリスはそっと本を閉じて灯りを消し私の上に乗り掛かってきた。
「ちょっと重い……」
「重いですって?」
「愛が重い」
「まあ、気付いてくださったのですか?」
「よかったら男にもなれるけど、どうする?」
「……便利すぎやしませんか?」
「あら、しらない? 私とセリスで人間や神を産み出してのよ? 子供の作り方は人間と同じだし……ね?」
アイリスは少し悩んだ後「その……初めてなので……」と恥じらいながら言って来たので「なんで娘としなきゃならないのよ」と笑ってしまった。
「もう!」
そう言ってアイリスは私の胸を叩く。
「だ、弾力が……こんなにすごいんですね」
「いいよ、好きにして」
私の許しを得た目の前の獣は、私の寝巻きの胸元を開くと、現れた二つの大きな果実を入念に視姦した後、突起部分を赤ん坊のように咥えた。
「これが母性……?」
なんだこの愛おしい生き物は……。
そう思いながらアイリスの頭を撫でる。そして彼女の顔を持ち上げると、そのままキスをした。
「……はっ!またやってしまいましたわ!」
「なんでここで正気に戻るのよ」
「どうしてでしょうか……どうしてこうも簡単に……」
「本能かもね。娘だから、甘えようとしてるとか」
冷静に話すアイリスは私の姿を見て恥ずかしそうに私の上から降りた。
「あら、もう終わり? もっと可愛らしくしてくれないの?」
「あまり遅くなると明日に響きますら……」
そう言ってアイリスは私の隣で寝息を立て始め、その寝入りの速さに驚きつつも、彼女を抱き抱えるように私は目を閉じた。
翌朝、カーテンの隙間から差し込む朝日で目を覚ますと、私は言葉を発することを忘れて目を丸くしていた。
隣で寝ているのはアイリスで間違いないはず。顔もそうだ。だが、少し体が成長しており、どこか艶かしい。
そっと溢れた吐息のエロさに、私は思わず股をキュッと締めた。
「ア、アイリス?」
「うっ、ううん……あら、おはようございます。どうかされましたか? そんな顔をされて……もしかして、力が解放されてますか?」
「うん……そうなんだけどね。えっと……髪の色が……」
私は声が小さくなり、アイリスはそれを聞き返したが、鏡を見れば早いと思ったのか、ベッドから降りて姿見の前に立った。
「本当に体が成長するんですね。あなたのセレスティアの姿と同じくらいの年齢に見えますわね」
「う、うん。そうなんだけどね……」
「胸も大きくなってますわ!あなたほどではありませんが、ええ。確かにこの起伏!」
アイリスは嬉しそうに乳房をネグリジェ越しに持ち上げていた。
そんなことよりと私は言いたげな様子を見て、アイリスは険しい表情を私に向けた。
「なんですのさっきから……嬉しくないのですか?」
「いや嬉しいけど……」
もしかして、気付いていないのか? そう思った私は自分の髪をいじり始めた。これで何か気付いてくれと言わんばかりに……。
「他に変わったところはありませんね。うふふ、これであなたと同じになれたのですね」
「そ、そうね。でも、人間とのハーフだから位置付け的には天使に近いかな?」
あえて触れない方がいいのか? いや、もしウォルターが見るとすぐにして来するだろうし、侍女達も大騒ぎするだろう。
「ねえアイリス、他に変わってるところ、気付かない?」
「もう……自分の事は自分がよくわかっていますから……変わったところなどもうないですよ」
私は心の中で「どの口が言う!」とツッコミを入れると、仕方がないので指摘することにした。
「髪の色」
「え?」
「だから、髪の色。変わってるわよ」
「そんなわけ……でもハナとカノンは瞳の色が変わったって言ってましたわね……」
アイリスは姿見をまた見ると驚きのあまり叫び声をあげてしまった。
「姫様!」
そう声をあげて近衛兵が部屋に入ってくると、アイリスは恥ずかしそうにシーツの包まり姿を隠した。
「み、見ないでくださいまし!」
私は兵を追い出すと、シーツをひん剥いてアイリスに対峙した。
「私は正直好きだけどね銀髪も」
「本当ですか?」
「うん。可愛い」
そう言って頭を撫でると、アイリスは少し嬉しそうに顔を緩めて目線を落とした。
そしてメイド長が駆け付け扉をノックして来たので引き入れると、早速採寸が始まった。
「こうなると聞いていたので準備はしていましたよ」
「まあ私がそうなったしね。力が解放されるたびに、体が成長してたから」
「それは……知ってます。間近で見ていたのですから。ですが、自分がなるとその……違和感というか……」
アイリスはそう言いながらメジャーを押し当てられており、胸の成長にメイド長は驚いていた。
「すぐに仕立てて参りますので……そうだ、本日は奥様のお召し物を着られますか?」
「母上のを?」
「ええ……ウォルター様からの命で、将来アイリス様にと取っておいたんです」
メイドが持ってきた服はどれもドレスばかりで、普段着と言えるものは殆ど無かった。
そこで私の服を貸す提案をすると、アイリスは承諾し屋敷に向かうことにした。
「とりあえず……ドレス着ておけば? 寝巻きで外に出るわけにはいかないでしょ?」
「当たり前です!」
アイリスはドレスを身に纏い、私は昨日持って来ておいた服へと着替えた。
「まあ本当は神様になれば、魔法で着替えたりできるんだけどね」
私は服を変えてみせるとアイリスは羨望の眼差しを向けてきたが「これはあくまで自分の持ち物を呼び寄せるから、一度視認しておかなきゃいけないのよね」と、アイリスに向かって言った。
「なるほど……」
「でも、普通に着た方が早いし楽だよ」
私は元の服に戻し、アイリスを連れて外に出た。
護衛も付かずに外を出歩くのは私といる時だけなので、久しぶりのそれに少し嬉しそうなアイリスだった。
「ただいまー」
そう言って屋敷に入ると、アイリスの髪の色に驚いたシャノンは口を開いたまま驚いていた。
「その、セレナの服を借りに来まして……」
それを聞いてようやくシャノンは口を閉じてアイリスを案内した。
「でも、今日学校あるぜ? 制服はどうすんだよ」
「そうですわね……セレナの制服はまだありますの?」
私は部屋に入りクローゼットの中を確認すると、一応制服はまだあったがサイズは昔のセレナの時のままだ。
「なんかもう懐かしいな……」
来てみようとブラウスに袖を通してスカートを履いてみる。少しキツイが着れなくはないと言った印象だった。
ニーソックスは結構な締め付けで、太ももがキュッと絞られ、肉が乗るようにしてソックスが食い込んでいる。
「まだ着れるな……」
そう言って姿見を見ているとアイリスが部屋に入って来た。
そして私の姿を見て笑い始めたので、私は怒ってアイリスの腕を叩いた。
「痛いです、もう、やめてください」
「笑ったでしょ!」
そうしているとセリスが隣の部屋から眠そうな顔をして出てくると、アイリスの髪を見て笑った。
「そう来たか。なるほどな」
「わ、笑いましたわね!」
私は制服を脱ぐとそれをアイリスに渡した。アイリスにはちょうど良かったようで、着た感じもキツさを感じなかったようだ。
ほっと一安心していると、シャノンが朝食の準備ができたと呼びに来た。
慣れない賑やかな朝食に戸惑うかと心配だったが、アイリスは楽しそうにしていた。
そして皆んなで登校すると、アイリスの変貌に他の生徒は驚きを隠せなかったようで、校門前は騒ついていた。
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