第2話 人間と魔女


 昔、それは遠い昔の話。


 この世界には人間と不思議な力を使うことのできる魔女が暮らしていました。

 人間は人間の文化を。魔女は魔女の文化を。

 お互いに関わることはなく、干渉しない時代が長く続いておりました。


 しかしある時、人間は行動に出ました。


 不思議な力を持たない代わりに学問を発達させていく中で、依然として解明されない魔女の力を脅威に感じてしまったのです。

 思考を発達させてしまった故に、理解できない力が恐ろしい。


 お互いに干渉しない時代が続いているが、明日は? 明後日、来週、一年後は?


 人間たちは不安に飲み込まれ、その結果魔女を滅ぼしてしまいました。


 これからは人間だけの時代だ。奇妙な力を持つ魔女に怯えず暮らし、自分たちだけで歴史を紡いでいくのだ。

 ……と人間は思っていました。

 

 そう、魔女は特別な力を持っています。

 息が途絶えようとも燃え朽ちようとも身体を八つ裂きにされようとも、魔女たちは簡単には死にません。

 時間の経過と共に元の姿へと戻っていき、

 死なないからと言ってこの惨劇は許すことはできません。

 魔女たちは決心しました。お前たちがしたことを絶対に忘れない。同じ目に遭わせてやると。


 魔女たちは息をひそめて、復讐の時を待ちました。特別な理由もなく攻撃してきた人間たちに同じ苦しみを味わわせるために。


 人間の世代交代が三回繰り返された頃でしょうか。

 「あの日」のことを直接知る人間がいなくなった頃、魔女たちは動き始めました。


 今度は、私たちの番だと。


 理由も知らずに虐殺されていく人間たち。

 魔女たちは丁寧に理由を述べることはしません。

 だって自分たちもそうされたから。



 ぱたりと本を閉じる。

 百年も昔のここに書かれている出来事が、本当か嘘かは分からない。

 

 でも真相はどちらでもいい。


 だって実際に、私の村は魔女に滅ぼされてしまったのだから。

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