第23話 夜営の仕方
今朝、ジュンタたち『風雷拳』のメンバーは、3人揃ってクエストの受注をする為にギルドに訪れた。その時、1人の少女がギルドの入口を潜ってきて、ジュンタたちと接触。ジュンタたちは雑貨屋の一人娘であるその少女から薬草採取の依頼を受けた。現在、薬草を50本採取する為に町を出て、森の中で夜を迎えていた。
ジュンタ「もうすっかり暗くなったね。」
ハルド「そうだな。ここらでテント立てて飯にするか。」
シーヤ「うん。…あ、あそことかいいんじゃない?」
ジュンタたちは、適当な場所でテントを設営し、夕食の準備をした。日が落ちた森は非常に暗いため、真っ先に火を起こした。そして、事前に用意していた食材を調理し、出来上がったそれを皆で食す。
ハルド「うし。それじゃあ、食うか。」
3人「いただきます!」
3人仲良く火を囲みながら食事をする。焚き火の雰囲気からか、いつもより会話が弾む。
ジュンタ「薬草、あともうちょっとだね。」
シーヤ「ええ、そうね。」
ハルド「明日までだからな。残りの10数本はきっちり集め切るぞ。」
ジュンタ「もちろんさ。引き続き、魔物の見張りは任せてよ。」
ハルド「ホント、頼りになるぜ。誰よりも早く魔物に気づけるんだからよ。」
ジュンタ「それほどでも。ところで、今日は野宿する訳だけど、何か気をつけることとかある?」
ハルド「そうだな…夜営ってのは文字通り野宿で夜を明かす事だ。当然、周りは暗くなるから、視界をハッキリさせたい時は今みたいに火を灯す必要があるな。それと、いつ魔物が襲ってくるかどうかも分からねえ。朝を迎えた頃にはパーティ全滅、なんて事は洒落にならねぇから交代で見張りをするんだ。この辺には夜行性の魔物なんていないから殺られる心配は滅多にねぇが、気をつけた方がいい。あと、火は消し忘れんなよ。」
ジュンタ「なるほど、わかった。ありがとう!」
シーヤ「教えてくれてありがとね。」
ハルド「おうよ。俺に答えられる範囲でだが、質問にはいつでも答えるぜ。」
ジュンタ「助かる。」
シーヤ「…ねぇ。」
ジュンタ「…シーヤさん?」
ハルド「どうかしたのかよ?」
シーヤ「今日は、ありがとね。」
ハルド「あー、昼間の時の。」
ジュンタ「大したことないよ。俺たちはただ、見てただけ。」
シーヤ「それでもありがたいよ。戦う直前はやっぱり怖かったけど、2人が見守ってくれたから勇気が出せた。1人じゃ絶対、恐怖で逃げ出してた。」
ジュンタ「そっか。」
ハルド「にしても、今日のシーヤは珍しいな。前回は結構自信無さげだったのに、今日は自分から戦いたいっつってたし…何か思い立ったのか?」
シーヤ「それは…」
ジュンタ「ハルド、俺たちは仲間になってからまだ日が浅いんだ。いきなり踏み込んだ質問しても答えづらいと思うよ?」
ハルド「おう、そうだな…悪ぃ。」
シーヤ「ううん、大丈夫。」
ジュンタ「でも…俺たち3人は、全然お互いのこと知らないし、話せる範囲でどういう人かを打ち明けるにはいい機会だよね。」
ハルド「確かに、これまで結構バタバタしてたからな。言いたくねぇことは言わなくてもいいしよ。」
シーヤ「そうだね。そういう事ならちょっとずつ話そうかな。」
食事を終えた3人は、火を囲みながら、身の上話に移る。
ジュンタ「そういえばさ、2人はどうして冒険者として活動してるの?」
ハルド「俺たちか?そうだな…俺は、物心がつく頃から、親父の冒険者としての活動を聞いてきたんだ。しかも、使える魔法は俺と同じ風属性。まあ、親父の血を引いたからだろうな。んで、その親父はそれなりに名の売れた冒険者だったらしい。幼い頃から親父の活躍を聞いて、その影響で自然と目指すようになったって感じだな。」
ジュンタ「憧れかぁ、いいね!シーヤさんは何かキッカケとかあるの?」
シーヤ「私は、色んなところを見て回りたいかな。地元を出て旅がしたいって感じ。でも、ただの旅人じゃ危険だから自分の身を守れるようにって、冒険者になったの。」
ジュンタ「なるほど~。世界の事を知りたい感じか。」
シーヤ「うん、後はおばあちゃんが楽になるように恩返しかな。小さい頃からずっと面倒見てくれたし。」
ハルド「いい目標じゃねぇか。頑張ろうぜ。」
シーヤ「うん、ありがとう。もし良かったら、ジュンタさんのキッカケも聞いてみたいな。」
ジュンタ「俺は、森でサバイバルしてたところ、偶然このハルドと出会ってね。」
ハルド「ああ。思い返せば、あれから何日も経ったな。あの出会いが始まりだった。」
シーヤ「ここで2人は出会ったんだね。それと、サバイバルっていうのは、この森でずっと暮らしてたの?」
ジュンタ「いいや。俺は、元々旅を始めたばかりなんだけど、お金無くしちゃったんだよね。その上、道にまで迷っちゃって。」
もちろん嘘である
シーヤ「ええっ、そんな事が!?…自然界で暮らすのは大変じゃなかった?魔物だって湧いてくる訳だし。」
ジュンタ「ロクな服も武器も無かったけど、俺がここ最近でみた魔物との戦闘は、運良く免れたよ。」
ハルド「そりゃホントに良かったよ。初めて会った時はビビったぜ…薄着で丸腰の一般人が、戦いの最中に飛び出してくるもんだからよ。」
シーヤ「わぁ…それは確かにびっくりするよね…」
ジュンタ「アハハ(汗)、ごめんごめん。見たこともない化け物だったから思わず加勢しようと思っちゃった。」
シーヤ「理由がジュンタさんらしい…」
ハルド「違いねぇ。」
ジュンタ「あと、俺の目的が、武術を極める事なんだ。そのために、いろんな場所に行って、いろんな事を知っていきたい。そして、自分の技を旅の道中でみんなと一緒に磨いていきたい。」
シーヤ「素敵な夢だね。私も頑張ろう!」
ハルド「俺も負けてらんねぇな。さ、明日も早い。依頼がまだ完了してねぇし、そろそろ寝ようぜ。」
シーヤ「そうね、2人ともおやすみ。」
ジュンタ「うん、おやすみ。火は俺が消しとくよ。」
雑談を通して、3人それぞれ少しずつ自己開示していくジュンタたち。明日に備えて切りよく話を終えて一同は眠りに就くのであった。
テントの中で3人が入眠してから2時間ほど経った頃、ジュンタが突然目を覚ました。
ジュンタ「うーん…」
まだ眠りが浅いからか、意識がボーっとしている。
ジュンタ(今、微かに2人以外の気配を感じた気がする…)
そう思ったジュンタは、静かにテントの入り口を開けて外に出た。
ジュンタ(ん?テントの周りから確かに感じる。それも1つや2つじゃない。複数いる!)
異変を察知して完全に目が覚めきったジュンタは、急いで眠っている2人を起こす。
ジュンタ「ハルド、シーヤさん、起きて!外に誰かいる!」
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