第107話 半兵衛との出会い

みなさん、休日出勤って言葉知ってますか?

素敵な響きですよね…

更新遅れてすみません…


107半兵衛との出会い


天文26年1557年 6月 六角治頼


 「最近はあったかくなってきて過ごしやすくなってきましたな。」


 俺は今大垣に来ていた。竹中半兵衛に会いに来ているのだ。去年から何度も文をやり取りしており、半兵衛に会いに行くという理由で少人数で美濃に入っていた。勿論伊賀や甲賀の隠れた護衛が付いた上で供回りもありだ。


 美濃は未だ不安定な地。治頼は表向きは少人数での訪問としながらも、伊賀と甲賀の者を潜ませて万全の警戒を敷いていた。半兵衛との対話は、命を賭ける価値があると見ていた。


 「はい、今日はいい天気にございまするな。」


 俺たちは会ってから何か具体的な話をするでもなく天気のことや趣味のこと他愛もない会話をしていた。


 言葉の端々に互いの探り合いがある。だが、表情は穏やかで、風の音と茶の香りが場を和ませていた。治頼は、信を得るにはまず心を開かせることが肝要と心得ていた。


 「そういえば竹中殿の領地では我が領を真似て様々なことに取り組んでおられるとか。何か困り事等はございませぬかな?」


 「よくご存知で。噂に聞く米大国の近江を真似て田畑の形を整えてみたものの、劇的なほどの増加を得られませんでした。推測にはなるのですが、そちらの領内限定で販売されている農耕具が使えないこと以外に何か大きな見落としがあると思うのです。」


 半兵衛の言葉には、実地を見て考え抜いた者の重みがあった。治頼は、彼がただの軍師ではなく、領地経営にも通じた才覚の持ち主であることを確信した。


 「流石は半兵衛殿だ。そこまでわかっていましたか。その大きな点についてはこの領が六角に編入されたときにお教え致しますよ。」


 治頼の言葉は、誘いであり試しでもある。半兵衛がこの国の未来に目を向けるならば、六角の器に収まるべきだと、静かに告げていた。


 半兵衛はその言葉を聞いて何を返すともなくニッコリとした笑みを浮かべた。


 「それはそれは…」


 「私は米大国とこの日の本が外つ国から言われる様に邁進していくつもりにございます。今この国は日の本という国の中で争っております。しかし、外つ国は我々の何倍にもなる大きな船を動かして自国以外の国を征服し奴隷として搾取し続けており、一部の地域では人殺しを狩の様に行う為に征服した国の民を攫っているのです。」


 治頼の語る外つ国の姿は、現実の脅威であり、理想の対極だった。彼は、日の本を守るためには内の争いを終わらせ、外に備える必要があると強く信じていた。


 半兵衛は無言で聞いていたが俺の話を聞き進めると瞳を揺らがせていた。

 

 その瞳には、驚きと共鳴が混じっていた。半兵衛は、治頼の言葉に理ではなく情を感じていた。国を憂う者として、心が揺さぶられていた。


 「私はこの日の本をそんな目に合わせたくなく動いております。ただ、私一人の、周りのもの達を含めた力でも日の本を纏め上げるのには途方もない時間が必要になります。その時間を減らし日の本に安寧をもたらすには…半兵衛、お前の力が必要だ。お前のその知恵を武略を日の本の為に俺の元で振るって欲しい。」


 俺は最後に強い感情に訴えかける様に半兵衛と呼び捨てにした。


 呼び捨ては、敬意の放棄ではなく、対等の願い。治頼は、半兵衛を家臣としてではなく、同志として迎えたいという思いを込めていた。


 「さて、本日はいい時間なのでそろそろお暇させて頂きます。もし、興味があれば一度直接領内へ来て私がしようとしていることを確かめてください。」


 言葉では伝えきれぬものがある。治頼は、領内の姿を見せることで、自らの理想と実践を半兵衛に感じ取ってもらおうとしていた。


 「ええ…考えておきまする。楽しい時間をありがとうございました。」


 半兵衛の見送りを受けていなべまでの道を馬に乗って移動し始める。


 「気長に行こうか。」


 周りの伴のもの達が返事をするも、治頼にとってその言葉は治頼自身に対する言い聞かせであった様な気もしていた。


 治頼は、半兵衛が来るかどうかを急がなかった。だが、心の奥では焦りもあった。国を変えるには時が要る。だが、時を待つには覚悟が要る。馬の蹄音が、治頼の決意を刻んでいた。



 

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