第100話 治頼の考え2
100 治頼の考え2
半蔵が続きを言葉にするのを待ち続けている。
「その中で積極的に関わろうとしているのは若狭と美濃にございまするな。
若狭は言わずとも内乱ばかりです。そこを上手く煽れば…。美濃は父である道三を現当主が討ち果たした結果揺らいでおります。あそこは放っておけば勝手に自滅しそうな雰囲気がありまするな。
それに内部ではゴタゴタですが、外部からの手に関しては拒絶反応が強くございまするので情報収集に努めておりまする。」
美濃の斎藤家は、道三の死後に求心力を失い、国人衆の動きも不穏だ。外からの干渉を嫌う気質は強いが、崩れかけた秩序の隙間に、伊賀の忍びが入り込む余地はある。
「うむ。ありがとう。では続きは俺が話そう。
俺としては三好に関しては放置一択だと思っている。三好は三好で地盤固めに忙しい中、六角と事を構えて関わり合いたくないと思っているだろう。俺もそうだ。三好と今事を構えるのは阿呆のする事だ。それがわからぬお方が朽木にもおるだろう。俺はあの方を利用することはあっても利用されることはない。そう考えて動いている事を忘れるな。」
三好は今、畿内の再編に忙しく、外への戦を望んでいない。こちらから仕掛ければ、無用な消耗を招くだけ。治頼は、敵を作らず、敵を育てず、敵を使うことを選んでいる。
「…はっ!」
皆が俺の言葉に驚きと困惑を隠せない様子だ。明智治光や滝川治益などの頭が切れるもの達は現状がよく分かっているのか特に変わった様子はない。
治光や治益は、治頼の言葉の裏にある意図を読み取っている。彼らにとって、戦とは剣を振るう前に勝敗が決まるもの。場の空気を読む力もまた、武士の器量だ。
「さて、その上でだが、若狭を必ず手に入れたいと考えている。日本海、上の方の海を支える港を欲しいと考えておる。朝倉もあそこを狙っているようだったから目を逸らさせる為に本願寺と朝倉両方に支援をしている。」
日本海側の港を押さえれば、北陸交易と海軍展開の両面で優位に立てる。若狭はその要。治頼は、地図の上で戦をする前に、経済と外交で布石を打っていた。
「なんという!!」
荷の上で長島と睨み合っている後藤壱岐守治豊にとっては本願寺を支援していたというのは大きな驚きであるのだろう。それに、六角は領内で寺勢力を絶対に許さない。そこに反していると考えているものも多いのだろうか。
六角家は寺社勢力を警戒してきた。だからこそ、本願寺への関与は家中に波紋を呼ぶ。だが、治頼は信仰ではなく、勢力としての寺を見ている。使えるものは使う、それが彼の流儀だ。
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