紅雨と藤棚




 蛇の目傘を持ち冷気を孕む紅雨の中を歩き続ける。偏に眠気覚ましの為。だが。直接雨の響きを全身に受けてはより一層、眠気が増してくるばかり。落ち行く頭をようよう持ち上げた矢先に視界を掠めたのは、藤棚。雨粒に塗れてはより一層危険な甘さが広がるそれに奪われ、気づけば意識が刈り取られていた。






(2024.4.21)


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