星空の彼方へ 想いを紡ぐ
桜 こころ
前編 運命の図書館 共鳴する心
彼の日々は、講義に出席し、家に帰り、そして何もせずに眠るだけ。彼には夢もなく、特に何かを成し遂げようという気持ちもなかった。
そんなある日、彼はふとした気まぐれで、町の古びた図書館へ足を運んだ。
図書館は静かで、埃っぽい本の香りが漂っていた。晴は適当に本棚を歩き、手に取った本を開いた。
そのとき、彼は隣の棚から本を選んでいた女性に目を留めた。彼女は綺麗なロングヘアに、柔らかそうな笑顔の女性だった。
彼女の名前は
晴は何となく結衣に惹かれ、彼女が手に取った本について話しかけた。
「その本、面白いですよね。」
結衣は驚いたように顔を上げ、やがて温かな笑顔で答えた。
「ええ、とても。好きな作家なんです。」
二人は本の話で意気投合し、自然と会話が弾んでいった。結衣の柔らかさと明るさが晴には新鮮に映った。
彼らは図書館を出た後も、近くのカフェで話を続けた。
「ねえ、晴くんの夢って何?」
結衣が尋ねた。晴は少し戸惑いながら、
「僕には特に夢なんてないんだ。ただ日々を過ごしているだけで…」
と答えた。
結衣は優しく微笑んだ。
「それでもいいじゃない。人それぞれだもの」
彼らの出会いは、晴にとって新しい始まりだった。結衣との時間は彼の日常に色を加え、彼女の考え方は徐々に彼の心にも影響を与え始めていた。
日が経つにつれ、晴と結衣の関係はより親密なものになっていった。
彼らはよく一緒に時間を過ごすようになり、晴は結衣のことをもっと知りたいと思うようになっていた。
結衣は晴にとって謎めいた存在だ。彼女はいつも明るく振る舞っていたが、時折見せる寂しげな表情が、晴の心を引きつけた。
彼は結衣が何を考えているのか、どんな過去を持っているのかを知りたいと思った。
ある週末、彼らは近くの公園でピクニックを楽しんでいた。
芝生に座りながら、結衣は自分の故郷や家族の話をし、その声からはノスタルジアを感じた。晴は結衣の話に耳を傾け、彼女の言葉の一つ一つに心を動かされるのだった。
「結衣さんはいつもポジティブだよね、どうしたらそうなれるの?」
晴が尋ねると、結衣は一瞬ためらった後、静かに答えた。
「人はそれぞれ、みんな何かを背負って生きていると思うの。だけど、それに負けないで生きていくことが大切なんだよ、きっと。」
結衣の言葉は晴の心に深く響いた。
彼は結衣が何かを隠していることに気づいたが、それを追求するのはやめた。彼にとって、結衣との時間はかけがえのないものであり、彼女の存在は彼の人生に新しい意味を与え始めていた。
夜になり、二人は星空を眺めながら、将来の夢について話した。
晴は、結衣との出会いが自分に変化を起こしていると感じた。彼女の生き様、強さ、そして彼女が抱えている何かに、彼は魅了された。
晴は結衣への感情が愛情なのか、尊敬なのか、それともただの好奇心なのか、自問していた。
結衣と一緒にいるときだけ、これまでに感じたことのない幸せを感じる。彼女の隣にいるだけで、彼の世界は生き生きと色鮮やかに見えるのだった。
しかし、結衣の秘密が何なのか、晴の心の隅に引っかかっていた。彼は彼女が何か大きな秘密を抱えていると感じ取っていたが、それを尋ねる勇気がまだ持てずにいた。
結衣は晴の変化に気づいていた。彼が自分のことをもっと理解しようとしていること、そして何か大切な感情を抱いていることを。
彼女はそれに対して穏やかながらも深い感謝を感じていた。晴の存在は、彼女にとっても心の支えとなっていたのだ。
秋が深まり、木々の葉が色づき始める頃、晴と結衣の関係はさらに深まっていた。一緒に過ごす時間が増えるにつれ、彼らは心を開いていった。
しかし、結衣の秘密は依然として晴に隠されたままだった。
ある日、晴は彼女が病院に足を運ぶのを目撃する。彼は心配になり、後日結衣にそのことを尋ねた。
結衣は笑顔で「大丈夫、ただの検査よ」と答えたが、晴の心には小さな疑念が生まれた。
晴は結衣の隠された一面に思いを馳せることが増えた。結衣の笑顔の裏には何があるのか、彼は知りたいと思いつつも、直接尋ねる勇気が出なかった。
一方で、結衣は晴に対して自分の病気を打ち明けるべきかどうかを悩んでいた。彼女は自分の病状を晴に知らせることで、彼が傷つくことを恐れていた。
しかし、結衣は晴の強さを信じたいと思った。
晴と結衣は手を繋ぎながら散歩を楽しんでいた。
落ち葉が舞い落ちる中、二人は互いの手を握り、将来について語り合った。
晴は結衣に対する想いを深めつつも、彼女の秘密に対する不安が彼の心に影を落としていた。
読んでいただき、ありがとうございます。
短編となっており、次回で終わります、もう少しお付き合いいただけると嬉しいです。
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