KAC2024

私(=魔法のお家)の内見会[長編化済]

 はじめまして。

 私は家だ。


 待って!意味分からんとか言わないで!

 

 理由は割愛するが、私は話せる。

 昔はたくさん仲間が作られたが今では1人ぼっち。

 不気味な家と呼ばれている。失礼な。


 そんな私だが家なので誰かに住んでもらわないといけない。

 そうしないと解体すると商人が言ってた。

 私の中で……あのマヌケめ。


 

 なんと今日、この私の内見があるのだ。

 洗の……じゃなかった、気に入ってもらわないと。


 

 

 やってきた奴はこの私に相応しい覇気、魔力、権力、財力……が全く感じられないんだけど、大丈夫か?

 お金払える?


 それでも10年ぶりの内見。

 前は玄関で洗脳魔法をかけたら防がれ即帰宅された。

 商人は怒って壁や床を蹴った。効かないが。


「凄いお家だね」

「それはもう。この家はとても頑丈です。ほら、こんなことをしても」


 壁を蹴る商人。覚えてろよ?


「びくともしないね」

「なんと魔法でも大丈夫なのですよ」


 火を放つ商人。恨みでもあるのか?


「焦げ跡すらないね」

「なにせ千年もこの姿のままですから」


 そんな前だっけ?

 前いたところが寒くなったから移ったけど、そんなに経つのか。


 

「見つけたぞ」

「どちら様でしょうか?」


 内見を続けていると、おっさんが入ってきた。


「貴様は!?」

「やはりここにいたな!護衛もつけずに1人歩きとはな!」


 内見者に斬りかかるおっさん。

 汚い絵だ。


「くっ」

「自分の愚かさを悔いろ!」


『ストップ』


「!?」


 おっさんが停止し、内見者が驚いている。

 商人に説明してもら……。


 ダメだ、商人も止まってる。

 チャ~ンス。


『無事か?』

「誰?」

『私は家だ』

「家?まさか……」

『時間がない。せっかくの内見なのだ』

「……ありがとうございます。ご迷惑を……」

『それはどうでもいいから私を買え』

「え?……はい」

『はいと言ったな?』

「はい」

『私は高いが……いいのか?』

「はい」

『世界の半分をくれてやろう』

「いいえ」

 

 やった!!





『ちなみにいくらだった?』

「(ひそひそ)」

『クソ商人め!』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る