第44話 ロイク教師!!

「兄さん、詳しく説明してください!」

「まあまあ、そう急かさないでよ。とりあえず、学校についてだ」

 ロイクは一枚の紙を取り出した。


「えーと? Cクラスの諸君、入学おめでとう。君たちは無能の集まりだから勝手にしててください、だってさ」

「はぁ? どういうことだよ!」

「でもカイン、ここに書いてるんだよ。そう言えって」


 (さすが貴族至上主義なだけあって、こういうところもしっかりしているのか)


「そんなの酷いじゃないか! いくら平民だからって言って!」

「そうよそうよ! 頑張って合格したのに!」

 他のクラスメイトから批判の声が上がる。


「ちなみに、Cクラスは受けられる教科も限られているらしいよ~ 今のところ僕だけだ」

「おい・・・ つまり、一教科だけじゃねえか・・・」


 これはおそらく学園側の策略だろう。わざとひどい待遇のクラスを作って、他の生徒の士気を高めようという魂胆だ。


「なんでそんなに落ち込むんだよ~ 僕の授業はそんなに嫌なのか?」

「ロイクさんは、何の教科を担当するんですか?」


「よくぞ聞いてくれた! 僕が担当するのは、近接戦闘術、剣術、実践魔術、武器学、支援系魔術・・・」

「・・・兄さんが全教科を担当するということですか」


「その通り! 僕が一から鍛え上げてやるぞぉ!」

「「「はぁ・・・」」」


 これが、大多数の生徒の反応だ。余り期待していない声が多い。

「片腕で何ができるっていうんだよ・・・」

「これはだめね・・・」


 だが、しかし、明らかに違う反応をしている人もいる。

「また電撃を食らうのか・・・!!??」

「・・・レシティア様のクラスに行きたかった」

 レイドとマリーなどは戦々恐々としていた。


「さてと・・・ 君たちCクラスはまともに学校の施設も使えない。これから外に行くぞ~!」

「「「はーい・・・」」」


 そうして、ロイクに連れられて野外演習場へと向かうのだった・・・




「よーし、到着!」

「はぁ・・・ なんでこんな・・・」

「家に帰りたい・・・」


「ねえ、レイド君。実際、ロイク先生の実力はどれくらいなんだい?」

 ロベルトが話しかけてきた。


「うーん、剣術だけでは俺が防戦一方になるレベルで、魔術も加わってくると全く歯が立たないよ」

「そんなに強いのかい! やりがいがありそうだな」

 ロベルトは意外と前向きな感じだ。


「さて、今日の授業の本題に入ろう。今日は一日中実践訓練だ!」

「そんな無茶苦茶な・・・」


「文句を言うのは僕が全部言い終えてからにしてよ。レイド。えーと、実は一月後に魔獣狩り大会があるんだ」

「魔獣を狩るのか・・・」


「そう、そこでもちろんA,Bも参加してくるのだが・・・ 僕たちのクラスが圧勝しようと思う」

「え? そんなことできるんですか?」


「できるに決まってるさ。だって、このクラスにはトップ三人全員いるんだよ?」

「そうか、レイド、ロベルト、エレーヌのことだな!」


 カインがそう答える。

「正直、エレーヌのことを無能扱いしたのが許せないんでね・・・」


 ロイクから殺気が漏れ出る。

(おい! 皆おびえているぞ!)


「・・・というわけだ。分かったかい?」

 全員が物凄い勢いでうなづく。

 

「さてと・・・ これから授業を始めていくけど、おや?」


「あ、これはこれはCクラスの方々ではないですかぁ〜」

「ふん、そんな何も無い所で訓練か? 悲しいことだな!」


「マルク、ファブリス・・・」

「おお、魔力無しじゃないか! 久しぶりだな、ガハハ!」


「レイド、あれが例の・・・」

「ああ、俺の、兄だ」


「実技試験を見たぞ。何か卑怯な手を使っただろう! お前が魔法攻撃を使えるはずがないだろ!」

「そうだ! われが負けるはずが無いのだ。試験結果では良い順位をとったみたいだが、首席はわれになったのだからな!」


「卑怯も何も、お前がよく分からん魔剣を使ったからだろ?」

「っ、口の利き方をわきまえよ! あんな剣、玩具みたいな物だ!」

すると、マルクが何やら魔道具を取り出した。


「これを見ろ! 我の為に特別に取り寄せた代物だ!」

「また新しいおもちゃか?」

「フフフ・・・ なんとでも言っておけ。これはな、魔力を込めるだけで魔法を即座に撃てる代物だ!」


 そう言うと、マルクは空に向かって大きな火球を放つ。

「見たか! こんなに大規模な魔術をすぐに撃てるのだ!」


「エレーヌ、分かったか?」

「・・・多分、あらかじめ詠唱式を魔道具に取り付けてるのでしょう。こんなにバレバレだったら、逆算して反射魔術を出せますよ」


「うーん? あれがレイドの婚約者かぁ・・・」

ファブリスが舌舐めずりしながらエレーヌの方を見ている。


エレーヌは即座にレイドの影へ隠れた。

「その女、中々いいじゃねえか。俺にくれよ」


「「ア゛?」」

 レイドとロイクから殺気が立ち始める・・・

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