パクス・ミカーナ!

ブンダマン

第1話 男子トイレに入っちゃった!

ブルルル…

電話だ。みかんからだ。

「どうしたの?」

「キ、キヨシ、オラ、間違えて男子トイレに入っただ…」

「おいおい、何やってんだよみかん。」

「うう、オラ、どうすればいい?」

「今、ジャンバー持って迎えに行くよ。どこ?」

「ピオン(ショッピングモール)だ。」

「オーケー、それじゃ今行くよ。」 

やれやれ、アイツはとんだ女だ。トラブルばかり持ってきやがる。

僕はジャンバーをリュックに入れて自転車に乗った。待ってな、みかん。

🚴~!

ピオンに着いた。ああ、ピオンのどこのトイレか聞き忘れた。ピオンは広い!

ブルルル…

みかんは小声で

「なんだよキヨシ。早く来るだよ。今、誰か1人トイレに入ってて大きい声出せないだよ。」

「おお、悪いね。あのさ、どこのトイレ?」

「あの…本屋の近くの…」

「本屋って南館、北館どっち?」

僕の住んでいる町のピオンは北館と南館に分かれてて、そしてどっちにも本屋があるんだ。

「南館。早く来いって…」

「オーケー」

全く、トラブルを持ち込んだのは君だぞみかん。人にものを頼む時にゃあ態度ってものがあるだろう。

僕は北館の入り口に立っていたので北館に入った。北館から連絡通路を通って南館に行ける。キヨシ走る!🏃~

ふう、ようやっと例の男子トイレに着いた。あれ?トイレが3つあるなぁ。そして全部閉まっているなぁ。どれだ?

僕は一度、男子トイレから出てみかんに電話した。

ブルルル…

「なぁみかん。」

「どうしたキヨシ…早くするだ…」

「おお、今トイレに着いたんだが3つ個室があって全部閉まっているんだよ。どのトイレ?」

「……。すまねぇキヨシ、オラも忘れただ…入る時、漏れそうで急いで入っちまったもんだから…。」

おいおいマジかよ。こりゃまいったねぇ。

「仕方ない。一個ずつノックするから、ノックされたら開けてくれ。」

「分かった…」

再び男子トイレに入る。

まずは一個目のトイレ。

『コンコン』

「………」

何も反応がない。普通、入ってますとかはいとか何か言うものだか。まぁいい。2個目のトイレをノックしよう。

『コンコン』

『カチャ…』

ドアが開いた。おかっぱ頭の女の子、つまり志位みかんが出迎える。素早く僕は個室の中に入った。ドアの鍵を閉めて。

僕はリュックからジャンバーを取り出してみかんに手渡した。みかんはジャンバーを着て、それからフードを被った。

ドアを開けて、二人は素早く男子トイレを出た。

「ふぅ。助かったぜ。サンキューキヨシ。」

「全く、次からは気をつけなよ。」

「おう、それじゃあ!オラは帰るよ。」

「なんか急ぎの用事でも…」

みかんは僕の言葉も聞かずに振り向いて走って行った。全く、恩人になんて態度だ!

僕は不満を抱えながら走るみかんを眺めていた。

男子トイレから大男が出てきた。眉間にシワを寄せた大男。怒っている。僕の方に向かってドシドシ歩く。

「おい!さっきドアを叩いたのはお前か?」

「……」

怖い。足が震えてきた。

「おい!聞いてるのか!?」

「はい。僕です。」

僕が声を震わせながらそう答えた。逃げたい。今すぐここから逃げ出したい。助けてよみかん。僕は泣きそうだ。

大男が顔を真っ赤にして拳を振り上げる。

殴られる…!助けて!!!

気づかぬうちに大男の拳は僕の顔面に衝突し、世界は崩壊してしまった。血が床に。みんな見てる。恥ずかしいなぁ。気づいたら大男はもうその場を去っていた。僕はそのまま床に倒れていて、みんな僕を見てる。おじいさんは驚いた表情で僕を見てて、お姉さんはスマホで僕を撮ってて、おかっぱ頭の女の子はニヤニヤしながら僕をただじーっと見てる。みかんだ。逃げやがって。

僕がみかんをにらんでいると40歳ぐらいの警備員の男が来た。警備員の男はバケツを持ってて無表情だ。僕の顔をじーっと見た。それからバケツの水を勢いよく僕にかけた。

バシャ!

目を覚ます。世界は真っ暗だ。ここはどこ?

今まで夢を見ていたんだね。ところで志位みかんって誰?僕は今、椅子に座ってて手を後ろに縛られている。何があったんだ。夢を見る前、何が起きた?思い出せない。誰か助けてくれ。僕はお腹が空いたよ。

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