第15話マメシバのゴン

 その楽しくない1学期後半が終わって夏休み。この夏休みに、新たな家族が増えることとなった。姉は以前から犬を飼いたいといっていたのであるが、私の知り合いに子犬が産まれたから、里親を探しているという人がいたので、両親にきちんと世話をするという約束をしたうえで、子犬をもらってくることになった。犬種はマメシバ。口の周りが黒く、体毛は薄い茶色で覆われた、まだ生まれて数か月しかたっていなかった。名前は

「ゴン」

リードや首輪を買ってきて、ゴンが来る前に父と私で犬小屋を作って、雨が降っても大丈夫なようにしてゴンを迎え入れた。ゴンははじめ、まったく見慣れないところに連れてこられて、戸惑っているようであったが、私たちがかわいがるとすぐになついてくれた。以来、私たちが大阪を離れることになる昭和59年3月31日まで、我が家で一緒に暮らすことになった。私も学校から帰ってきて、散歩に連れて行って、近所の高校のテニスコートの近くに行って、テニスボールが高校のフェンスを越えて落ちていたので、ゴンはよくそれを拾っていた。壁めがけてボールを投げると、ゴンは勢いよく飛び出して、ボールを加えて私のところに持ってくる。そしてお座りや伏せ、待てなども覚えて、かなり利口な犬であった。父が仕事を終えて駅におりって、家に向かう頃から

「ワンワン」

と声をあげて、父の帰りが近いことを教えてくれたりしていた。

 どうやったら、父の帰宅が分かるのか、私は不思議で仕方がなかった。多分ふだんから父の歩く時の靴の音とか、体臭をかぎ分けていたのかとも思う。

 その一方で番犬の役目も果たしており、怪しいセールスが来たら、威嚇の体制をとって、低いうなり声をあげていた。

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