第51話 『仲間との再会』
参上! 怪盗イタッチ
第51話
『仲間との再会』
コン刑事と別行動をすることになったネコ刑事。屋敷からの脱出を目指して、一階にある玄関を目指していた。
「さっきは扉は開かなかったけど、もしかしたらこれで開くかもしれない」
ネコ刑事はポケットから眼鏡を取り出した。それはネコ刑事の開発したアイテムであり、AIがパスワードなどを予測してくれるというものだ。
「このアイテムが使える扉があったってことは、もしかしたら入り口も同じような仕掛けで閉じられてるのかもしれない」
さっき扉に来た時は、開かないことに焦ってしまい、どのように扉に鍵がつけられたのか考える余裕がなかった。しかし、この屋敷にはトラップや機械によって閉じられた扉などがある。
玄関の扉も機械によって閉じられているのかもしれない。もしもそうなのだとしたら、このアイテムのアシストがあれば、扉を開けられるだろう。
だが、アイテムを使うためには一つ問題があった。それは時間だ。アイテムを使ったとしても扉を開けるのには数分の時間がかかる。
扉を開けるのに時間がかかってしまうと、吸血鬼がやってくる可能性があるのだ。
「それでもやるしかない。……フクロウ警部、そして天月刑事のために!!」
ネコ刑事は最初に屋敷に入ってきた扉のあるロビーに辿り着く。そして玄関の方を見ると、そこには人影があった。
「吸血鬼? ……いや、あれは…………」
人影を発見して警戒したネコ刑事だったが、その人影の正体に気づくとホッと息を吐いた。
「天月刑事、無事だったのか〜」
玄関の前で立っていたのはコン刑事。
吸血鬼からネコ刑事を逃すために囮になり、そのまま行方がわからなくなっていた。
コン刑事が無事だったことに、ネコ刑事はホッとする。
ネコ刑事はコン刑事の元へ駆け寄る。
「よかったよかった〜、無事でよかったよ〜」
ネコ刑事はコン刑事の肩を叩いて、ニコリと笑う。
「もうやられてしまったのかと思ってたから安心したよ。さてと、早くここから脱出しよう。天月刑事は後ろを見張っていてくれ、僕は扉を開ける!」
ネコ刑事はコン刑事とすれ違い、後ろを任せることにして扉の方へと身体を向ける。
眼鏡をかけて作業を開始しようとしたが、後ろにいるコン刑事がネコ刑事の背中を突いた。
「どうした? 天月刑事、今は急いで脱出しないと……」
「ネコ先輩、アタシ、先輩に謝らないといけないことがあるんす」
「ん? なんだよ?」
真剣な声で言われて、ネコ先輩は作業を止めてコン刑事の方へと身体を向ける。
コン刑事はネコ先輩の両肩をがっちり掴むと、
「あの後……アタシ、吸血鬼に捕まっちゃったんす…………」
「吸血鬼に捕まった? 何言ってるんだ、無事じゃない……か…………」
コン刑事はニィ〜っと頬を上げる。すると、口の中にある牙がきらりと光った。
「……天月刑事…………今、牙が………………」
ネコ刑事はコン刑事の口に牙が見え、怯えるように後ろに下がる。しかし、後ろは扉であり、扉が背中に当たる。
コン刑事はニコリと笑い、ネコ刑事を掴む肩に力を入れる。そしてネコ刑事を自身の元へと引っ張った。
力負けしたネコ刑事はコン刑事の元へと引き寄せられる。
「天月……刑事…………」
「先輩……アタシ、あの後捕まっちゃったんす。抵抗したんすけど、ダメだったんすよ…………。血を吸われて吸血鬼にされちゃったんす」
コン刑事は口を開けてネコ刑事に自身の牙を見せつける。
「でもっすよ。血を吸われてる時、すっごく気持ちよかったんす。新しく生まれ変わった……みたいな…………先輩…………先輩もアタシと一緒になりましょ」
コン刑事は口を開き、ネコ刑事の首元に牙を近づける。
「やめるんだ……天月刑事…………や、やめてくれ…………」
「先輩……チクっとしますよ」
ネコ刑事の首に牙が刺さる。
「グァァァァァァァ!!!!」
ネコ刑事は悲鳴をあげる。血を吸われて、その代わりに別の何かが体内に入り込んでくる。
最初は牙による痛みと異物感があったが、血を吸われていくに連れて、痛みは消えて快感へと変化していく。
「…………た、助けて………………」
ネコ刑事は助けを求めるが、その声は届くことはない。
やがて血を吸われ続けたネコ刑事は、膝をついて座り込んだ。
血を吸い終わったコン刑事は腕で血を拭う。
「先輩、どうっすか? 生まれ変わった気分は?」
コン刑事は座り込んだネコ刑事に尋ねる。ネコ刑事は立ち上がると、ニヤリと笑う。その口には鋭い牙が見える。
「君の言った通りだ。こんなに気持ちよかったなんて……」
「そうでしょうそうでしょう……さぁ、アルカード様のために働くっすよ」
「ああ、そうしよう……。アルカード様のために…………」
吸血鬼となったネコ刑事とコン刑事は不気味に笑いながら、屋敷の奥へと消えて行った。
⭐︎⭐︎⭐︎
ネコ刑事とコン刑事が吸血鬼になった頃。シンメンタールとラーテルは屋敷の二階を探索していた。
「シンメンタールさん、この屋敷、人が暮らしていないかのように偽装していますが……」
屋敷の様子を見たラーテルがシンメンタールに話しかける。シンメンタールは顎に手を当てて頷いた。
「ああ、ラーテル君。君の予想通りだよ。この屋敷には誰かが住んでいる……一人、いや二人か」
シンメンタールは今まで見た部屋の様子を思い出す。
「屋敷の中を動き回っているのは一人だな。生活感があるのは一人分だけだ。だが、もう一人、動けない人物を介護している動きだ」
「動けない人物……」
二人が屋敷の中を探索していると、機械仕掛けの扉を発見する。その扉は開かれており、自由に入れるようになっていた。
「誰かが開けたみたいだな」
「イタッチですかね?」
「さぁね。イタッチ以外にもフクロウ警部達の足跡もあったから、どっちかの陣営かもしれない」
二人は警戒しながら、慎重に部屋の中に入る。すると、そこは寝室であり、部屋のベッドで寝ている金髪の女性を見つけた。
「人が倒れてる!?」
シンメンタールとラーテルは心配して駆け寄る。しかし、その人物の姿を見て、普通の状態ではないのにすぐに気がついた。
「この人……体温は冷たいのに、まだ生きてます」
「どうやら普通の人間ではないみたいだ」
シンメンタールは部屋の中を探索する。そしてテーブルに置かれた日記を発見した。
「……日記、ですか?」
「どうやら彼女の正体は吸血鬼らしい」
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