第47話 『恐怖の屋敷へようこそ!!』

参上! 怪盗イタッチ




第47話

『恐怖の屋敷へようこそ!!』




「相棒……こりゃぁ、どういうことだ?」


 ダッチは目の前の光景に汗を流す。


「ここにお宝があるんだ。今日はそのお宝を手に入れる。アン、来てくれてありがとな。ここじゃネットも通じないが、内部にはお前の力が必要になる仕掛けがある。なるべく現場には呼びたくなかったが」


「大丈夫ですよ! 私だってやる時はやるんです!!」


 三人の前に聳え立つのは、コウモリの飛び交う巨大な屋敷。木造でできた洋風な屋敷にイタッチ達はやってきていた。

 空は昼だというのに雲により暗く、樹木は不気味にねじ曲がった成長をしている。


 ダッチは体を震わせながら、イタッチに尋ねる。


「本当にあるのかよ。そのテラーストーンは……」


「確かな情報だ……。だが、もう一つ、ここにはある情報がある」


「なんだ……お化けでも出るのか?」


「いや違う。吸血鬼が出るんだ」


「吸血鬼!?」


 怖がるダッチを押して、イタッチとアンは屋敷に入る。三人が屋敷に入っていく様子を、木の影に隠れて見守る三人の姿。


「屋敷に入って行ったっすね」


「僕達も追いかけますか?」


 コン刑事とネコ刑事。そして──


「当然、俺達も入るぞ!! 今日こそ、イタッチを逮捕してやる!!」


 フクロウ警部達はイタッチを追って、屋敷に入って行った。


 そしてさらにそんな彼らを追うように、他の来客者も現れる。


「シンメンタールさん、見えてきましたよ。あれがアルフォートの屋敷です」


「ラーテル君。アルフォートじゃない、アルカードだよ。この屋敷には吸血鬼が棲みついてるという噂がある。だからそんな名前がついたんだ」


「そしてその屋敷にあるお宝を狙って、イタッチが現れるんですね!」


「そういうことだね。さぁ、この屋敷でイタッチを捕まえようじゃないか!!」


「はい! 頑張りましょう、シンメンタールさん!!」


 シンメンタールとラーテルもイタッチを狙って、不気味な屋敷へと入っていく。



 こうしてイタッチ、ダッチ、アン、フクロウ警部、ネコ刑事、コン刑事、シンメンタール、ラーテルの9人が屋敷へと侵入した。



 ⭐︎⭐︎⭐︎


 屋敷に最初に入ったイタッチ達は、お宝を探してまずは一階から探索していた。


「ここは食堂みたいですね!」


 アンは長いテーブルと周りの装飾を見てここを食堂と判断する。食堂を見たダッチは大きく口を開ける。


「ひっろい食堂だな〜、どんだけの人が住んでたんだか」


 食堂だけで50人分のテーブルと椅子がある。それだけの人数が食事をしていたということだろうか。


「ここにはお宝はなさそうだな。次に行くか」


 イタッチ達は部屋から出ようとする。しかし、ダッチが歩くと、ダッチが踏んだ床が沈んだ。


「ん?」


 すると、部屋のどこかから何かの動く音が聞こえてくる。


「まさか……俺…………」


「ダッチさん?」


「トラップ踏んだ!?」


 次の瞬間、部屋の床が傾き始める。中央を山折するように坂ができて、坂の下に落とし穴が現れた。


「うわ!? 落ちる!?」


 ダッチは左へ、アンは右へと落下する。


「ダッチ、アン!!」


 トラップが発動して素早く中央に移動したイタッチは、折り紙でロープを作り二人に投げる。


「二人とも捕まれ!!」


 ダッチとアンはそれぞれロープに手を伸ばす。しかし、二人ともロープに触ることができず、そのまま落ちていった。


「ダッチ!! アン!!」



 ⭐︎⭐︎⭐︎



「警部、どこに行きます?」


 一回のロビーでネコ刑事がフクロウ警部に尋ねる。


「そうだな〜、まずは二階だな!」


「なんでです?」


「あの高いところからよく登場するイタッチだ。今回も高いところにいるはずだ!!」


「なんですか……その考え……分からなくもないですが。しょうがない、早いですがこれを使いますか!」


 ネコ刑事はポケットから缶バッチ程度の大きさの鼻の形をしたアイテムを取り出した。

 それを見てコン刑事は首を傾げる。


「なんすか? それ?」


「これは臭いがわかーる君一号だ。このマシーンは犬の3倍の匂いを感じ取ることができる。これにイタッチの匂いを記憶させれば、どこまでのイタッチを追い続けることができるのだ!!」


 ネコ刑事は自慢げに自身の作ったアイテムを解説する。しかし、そんなネコ刑事にコン刑事が大切なことを聞いた。


「それでネコ先輩。そのイタッチの匂いを記憶させるのはどうやるんすか?」


「………………」


 ネコ刑事の作ったアイテムは、匂いを記憶させる必要がある。そのため、イタッチの匂いの染み込んだ何かが必要なのである。

 しかし、今この場にイタッチの匂いの染み込んだものなどどこにもない。


 ネコ刑事は頭を抱えてその場に崩れ落ちた。


「僕としたことが、そんな初歩的なミスをしてしまうとはぁ!! まるでフクロウ警部じゃないか〜!」


「おい、俺がいつも初歩的なミスをしてるみたいに言うな」


 フクロウ警部はネコ刑事にツッコミを入れながら、これからどうするか考え直す。

 そして二人に提案した。


「やはり二階から探索しよう。俺の感がイタッチは二階だと言っている」


「本当すか? まぁ良いっすけど。じゃあ、2階から行くっすか」


 三人は2階に行くため、階段を登る。三人が階段を半分まで登ったところで、階段の下からカチッという不思議な音が聞こえた。


「今、何か聞こえなかったっすか?」


 コン刑事は嫌な予感を感じ取り、周りをキョロキョロと見渡す。それに釣られて、フクロウ警部とネコ刑事を警戒した。


「何も起きな……ッ!?」


 突如、階段が滑り台状になる。そして階段の下の床が開いて、落とし穴が現れた。

 三人は滑り台をズルズルと滑り落ちて、落とし穴へと向かっていく。


「落ちるゥゥゥ!?」


「こうなったら!!」


 ネコ刑事はポケットからオモチャの鉄砲のようなものを取り出す。そしてそれで天井に中身を発射する。

 中からガムのような粘ついた物体が飛び出して、天井に張り付くとネコ刑事の身体を宙に浮かせた。


「ネバネバくっ付き銃! 本当は逃げたイタッチを捕獲するために作った銃ですが、こんなところで役に立つなんて!!」


 ネコ刑事はネバネバにぶら下がる形で落とし穴に落ちずにすむ。ネコ刑事は落ちそうになる二人を助けようと手を伸ばすが、手は届くことはなく、フクロウ警部とコン刑事は落とし穴に落ちていった。


「フクロウ警部、天月刑事!!」






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