第36話 『もーもー探偵の巻き』
参上! 怪盗イタッチ
第36話
『もーもー探偵の巻き』
「シンメンタールさん、これを!!」
背中を灰色の毛に覆われた動物が、地面に落ちていたペンを拾い上げる。
「ラーテル君、それは?」
「きっとこれが事件の原因です!」
ラーテルからペンを受け取った赤褐色の身体に白い顔の毛の牛が頷く。
「良くやったぞ。ラーテル君、事件の真相がわかったぞ!!」
⭐︎⭐︎⭐︎
とある街にある3階建てのビル。そこの一階にはイタチの経営する喫茶店があり、上にはイタチと居候の子猫が暮らしていた。
夜の8時、イタチと子猫は夜ご飯を食べ終えて、ゆっくりとテレビを見て過ごしていた。
「イタッチさん、このCMに出てるカピバラ結婚したみたいですよ」
テレビを見て、タレントの世間話を始めた子猫。彼女の名前はアン。怪盗イタッチ一味の情報担当のハッカーである。
アンの話を聞き、イタチはニコリと頷く。
「そうか、良かったじゃないか」
このイタチは一階の喫茶店を経営するイタチであり、さらには怪盗イタッチの正体である。
CMが終わり、ニュース番組が再開される。すると、テレビには都内で起きた殺人事件が映し出される。
都内に住む夫婦を殺人事件。容疑者が複数おり、証拠も少なく、この事件は解決に時間がかかると思われていたが、解決したという話だった。
事件を解決に導いたのは──
「シンメンタールとラーテル?」
事件を解決した人物として、二人の男女が映し出された。
シンメンタールと紹介された茶色い牛の男性と、ラーテルというイタチの女性。二人は探偵とその助手として紹介されており、ここ最近の難事件をいくつも解決してきたのだという。
アンはテレビを見ながら、首を傾げる。
「探偵さん、何やら発表があるみたいですよ」
ニュースでは探偵からの重大発表と表示されて、探偵からのメッセージをアナウンサーが読み上げる。
そこで発表された内容を聞き、イタッチとアンは「えっ」と声を上げた。
──怪盗イタッチが5日にアゲート美術館で盗むと予告したビッグムーンストーン。僕達がビッグムーンストーンをイタッチから守り、イタッチを逮捕してみせる──
⭐︎⭐︎⭐︎
警視庁の三階にあるイタッチ対策特別課。そこに三人の動物が集まっていた。
「先輩、何食べてるんすか?」
キツネの女性警官が猫の警官の昼食を覗き込む。
キツネの女性警官の名前は天月 コン。イタッチ対策特別課で働く巡査部長だ。根性が売りの女の子であり、ガッツで事件を解決へ導く。
猫の警官はお弁当箱の中身をコンに見せる。
「刺身に焼き魚、それと……」
「全部魚じゃないすか」
魚弁当を食べている猫の警官。彼はネコ刑事。機械の改造を得意であり、あらゆるアイテムを製作している。イタッチ対策特別課で使われているアイテムの殆どはネコ刑事が作ったものだ。
二人の話を聞き、スナック菓子のミミズ煎餅を食べながら、フクロウが話しかけてくる。
「またネコ刑事は魚弁当か〜、好きだね〜」
このフクロウこそが、イタッチ対策特別課の責任者であるフクロウ警部。イタッチを捕まえるために何年も追いかけ続けている警官だ。
フクロウ警部の言葉にネコ刑事は言い返す。
「フクロウ警部もミミズ煎餅食べ過ぎですよ」
「ハハハ〜! 好きなものを食わずに何を食うか!」
「だから太るんですよ」
「ギグっ!?」
フクロウ警部のお腹はふっくらと膨らんでおり、ボールのようになっている。
「そ、それを言ったら魚弁当ばかり食べてる君も!!」
「僕はこのカロリー計算マシーンで健康に配慮してますから」
ネコ刑事は自身の作ったアイテムを自慢げに見せびらかす。
フクロウ警部が悔しそうに唸る中、コン刑事は新聞を広げる。
「そういえば二人とも知ってるっすか? シンメンタールの発表」
コン刑事は新聞を二人に見せる。そこにはシンメンタールとラーテルの姿が写されていた。
フクロウ警部は帽子を深く被って頷く。
「ああ、知っている。まさか、あのシンメンタールが動くとはな」
「そんな有名なんすか?」
「有名になったのは最近だよ。だけど、俺は昔から彼のことを知っている」
「フクロウ警部、シンメンタールと知り合いなんですか?」
ネコ刑事とコン刑事は期待の眼差しでフクロウ警部を見つめる。フクロウ警部は咳払いをした後、
「彼は……学生時代の同級生だ」
フクロウ警部がそう言ったと同時に、イタッチ対策特別課の扉が勢いよく開かれる。そして外から二人の動物が入ってきた。
「やぁやぁ、フクロウ君、久しぶり!!」
入ってきたのはシンメンタールとラーテル。シンメンタールは元気よく手を振りながら、笑顔で現れる。
その後ろではラーテルが恥ずかしそうに「すみませんすみません」と小さな声で謝り続けていた。
二人の姿を見て、コン刑事が目を丸くして驚く。
「シンメンタール!? なんでここに!?」
驚くコン刑事に説明するように、フクロウ警部は二人を紹介した。
「発表があってから連絡を取り、ここに呼んでおいた。イタッチ逮捕を望む仲間としてな。というわけで、シンメンタールとその助手のラーテル君だ!」
フクロウ警部が紹介すると、二人は頭を下げる。そして挨拶を始めた。
「ゴホン、僕はシンメンタール。世界一の探偵になるのが夢の、探偵さ」
まずはシンメンタールが自己紹介をする。シンメンタールの服装は、これこそ探偵の服って感じの茶色い服に帽子を被っている。
シンメンタールが挨拶をすると、ネコ刑事とコン刑事はお辞儀をする。
次にラーテルが自己紹介を始めた。
「シンメンタールさんの助手をしてます。見習いのラーテルです。よろしくお願いします」
ラーテルは深くお辞儀をする。シンメンタールとは違い、ラーテルの服装は普通のOLのようなスーツ姿だ。
ラーテルの挨拶にもネコ刑事とコン刑事はお辞儀をする。
探偵達の紹介を終えると、次にフクロウ警部はネコ刑事とコン刑事の横に並ぶ。そしてゴホンと咳払いをしてから、改めて挨拶をした。
「イタッチ対策特別課の責任者。フクロウ警部だ。シンメンタールにラーテル君、君達の協力感謝している」
フクロウ警部は次に隣にいるネコ刑事に自己紹介をするように目配せをする。それを察したネコ刑事は帽子をとってお辞儀をした。
「ネコ刑事です。よろしくお願いします」
次にフクロウ警部はコン刑事にも紹介をするように目配せをするが、コン刑事はニコニコしているだけで、なかなか喋り出さない。
隣にいるネコ刑事がコン刑事の肩を軽く突き、コン刑事に小声で伝える。
「天月刑事、自己紹介を……」
「え、あ……そういうことっすか」
言われて気づいたコン刑事は両足を揃えて敬礼をする。
「コン刑事っす。シンメンタールさん、ラーテルさん、よろしくお願いするっす!!」
これで今回捜査に参加するメンバーが揃った。フクロウ警部は自身の机に皆を集めると、パソコンの画面を共有した。
「では、これよりイタッチ対策会議を始める。今回こそイタッチを捕まえるために、皆自由に意見を出してくれ、ではまずは──」
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