白蛇様の祟り
白雪の雫
第1話
私、若村 美夕(19)が住んでいる若葉村は良質の水と温泉に恵まれています。
理由は水の神としてだけではなく子宝と金運の神、そして守り神として白蛇様を信仰しているからです。
私自身も子供の頃から休みの日には祖母と一緒に白蛇様を祀る水龍神社に行って手を合わせていました。
私が今から話すのは、長閑で平和という言葉が相応しい若葉村に今から二年前に起こった不思議な体験です。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『美夕、蛇は白蛇様の使いだから若葉村に恵みを齎してくれる。だから決して傷つけてはいけないよ』
殺すなんて以ての外だと、幼い頃から両親と祖父母に言われてきたからなのか、私は白蛇様を敬い同時に祟りを畏れていました。(ちなみにこれは他の村の人達にも言える事だったりする)
あれは・・・私が中学二年の時の事でしょうか。
一人の女の子が若葉中学校に転入してきました。
彼女の名前は田村 薫さん。
詳しい事情は分からないのですが、田舎でスローライフを楽しみたいとか自然を満喫する暮らしをしたいとかという理由で若葉村を移住先に選んだみたいです。
そんな田村さんですが都会で暮らしていたからなのか、垢抜けた可愛い女の子でクラスの男子達からチヤホヤされていた半面、女子達からは嫌われていました。
掃除をサボるのは当たり前。
自分の宿題を取り巻きにさせるのは当たり前。
男子を使い走りにするのは当たり前。
自分より可愛い女子を取り巻きに虐めさせるのは当たり前。
犬や猫といった動物を切り刻むのは当たり前。
典型的ないじめっ子の田村さんが若葉村でこのように振る舞っていても何のお咎めもなかったのは、彼女の実家が金持ちだという事が大きな要因でした。
表面上は波風を立てず穏やかに必要最低限の言葉を交わしつつ、心の中では田村さんに対する憤りを抱く日々を起こる事三年
私が十七歳になった年の夏に事は起こりました。
若葉村では夏になると巫女に選ばれた、十三歳から十八歳の一人の少女がご神体である白蛇様の像に神酒を捧げ神楽を舞う儀式があるのですが、その巫女に田村さんが選ばれたのです。
この儀式は五穀豊穣と若葉村の繁栄と白蛇様の加護を得る為の神聖なものです。
儀式の要である巫女として、田村さんが選ばれたという事実に村の人達は神主に抗議しました。
ですが神主は『自分はただ白蛇様のお告げに従ったまで』と言って、神社に押しかけた村の人達の主張を突っぱねたのです。
神主さんは田村さんのお父様から賄賂を貰ったのでしょうか?
本当に白蛇様の神託に従ったのでしょうか?
どっちなのか私には分かりませんでしたが、何時爆発してもおかしくない爆弾を抱えたまま、儀式の日を迎えたのです。
村の人達が見ている前で白蛇様の像に神酒が入っている盃を捧げた後、巫女が神楽を舞う。
これが儀式の流れなのですが、あろう事か田村さんは白蛇様の像を足蹴りしたのです。
これには私を含む村の人達だけではなく神主さんも怒り狂いました。
ですが田村さんにとっては馬耳東風。
寧ろこう言って挑発したのです。
『村の守り神だか何だか知らないけど、白蛇様なんて居る訳ないじゃん!本当に居るのならあたしを祟ってみやがれ!!』
科学が発達している二十一世紀なのに、こんな像を崇めているあんた達の頭がちゃんちゃらおかしいわwww
と───。
『巫女さんの格好って綺麗だからやってみたいとパパに頼んだけど、こんな仕事引き受けるんじゃなかった~』
村の時化た祭りより繁華街で遊んだ方がよっぽど有意義だったわ
若葉村の伝統行事を罵った田村さんは神社から去って行きました。
村の人達は神聖な儀式を穢したと神主さんに詰め寄ったのですが『自分は白蛇様のお告げに従っただけ』という主張を決して曲げませんでした。
このままでは平行線で埒が明かないと思い神社から引き揚げようとしている私達に神主さんはこう告げました。
近いうちにあの一家とその親族は痛い目を見るだろう──・・・。
※儀式は後日改めてやりました。巫女さんは美夕ではなく別の女性というか本来選ばれていたはずの女の子です。
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