1分後に泣けちゃう失恋コレクション

こばなし

アイスクリーム


 不意に入ったコンビニで、目に留まったアイスクリーム。

 ひとつの包装に、ふたつ入っているタイプのやつだ。


 これを見ると、つい君を思い出してしまう。




「一個ちょうだい?」


 僕がアイスを開封するのを見て、すっと身体をよせる君。


「ええ~」


 と、僕が嫌そうな顔をすると、君は、


「だめ?」


 って、ズルい顔になる。


 そんな君の顔が見たい僕は、初めから分けるつもりでいるのに、毎回わざとらしく渋っていた。


「はい」


「やった! ありがと」


 それからむじゃきに顔をほころばせる君を見るのはもっと嬉しくて、僕の気持ちはいつも、ぽかぽかとした気持ちでいっぱいになっていたっけ。


 冷たいアイスで、心が温かくなって。

 半分こしているはずなのに、ひとりで食べるときよりもずっと、満たされていた。




 そんなことを思い出しながら、僕は今、半分こできるタイプのアイスをひとりで食べている。


 けれど、一個食べたところで、お腹いっぱいになってしまった。


 なのに、心には満たされない空白がぽっかりと空いていて。容器に残っているもう片方を食べたところで、きっとそれは埋まりそうにない。


 次にいつ食べるかもわからないそれを、中途半端に封をしたままで、冷凍庫にしまい込む。


 氷菓子と一緒に、君との想い出も溶けて消えてしまったのなら、こんな気持ちを味合わなくって済んだんだろうな。

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