アコナイトをやるっきゃない

「早く奴等を捕えろ!」

 アコナイトは叫んだが騎士達の士気は低い。スケルトンの大群に憧れの元騎士団長、更に同僚であるメリアまでいる。手を出そうにも誰も動けない状況であった。

 騎士達には何の罪は無い、それなら誰も犠牲者を出さずに丸く収まるのがベストだ。こちらとしては手を出さないでくれると助かる。

「こちらとしては危害を加えるつもりはない。冷静に話をしたい」

 俺が騎士達に呼び掛けるが応じる事は無かった。お互い手出ししないこう着状態が続いた。

 しかし一向に手を出さない騎士達にアコナイトは痺れを切らし、服の中から何かを取り出した。

 黒い光が服の中から漏れ出ている。おそらくアレが魔物を操る何かだろう。

 騎士達の足元から黒いオーラが溢れてきた。そしてそこからウジャウジャと魔物が溢れ出てきた。

「アンデットだ!」

 騎士の誰かが叫び、足元のアンデットを剣で切り伏せていく。

 アンデットは騎士達を襲っているのだ。

「奴の言葉に騙されるな!油断させてアンデットで襲っているではないか!」

 また自作自演か。どうする、騎士達も襲われたら戦うしかない。

「アンデットを殲滅するぞ!」

 俺がまごまごしているとグラジオラスが指示を出した。

「はい!」

 その指示にメリアが即答し剣を振った。戦闘に関してはグラジオラスの指示に従おう。

 カクタスのスケルトンも騎士達と共闘してアンデットを襲撃している。だが騎士にとってはアンデットもスケルトンも同じで斬られている。まあ、本体のカクタスでなければ問題ない。

 リリーは戦力にならないので空高く飛んで応援している。

 処刑場は騎士にスケルトン、アンデットも加わり大混戦になった。

 アンデットは隙を見せるとこちらにも来て攻撃をしてくるので油断できない。騎士達も余裕が無いのでそれに気付かない。

 俺自身、リリー同様全く戦力にならないので逃げ回り、迫り来るアンデットをスケルトンが防いでくれて何とか凌いでいる。

 思うように騎士達が俺達を攻撃しないうえに、差し向けたアンデットも撃退されアコナイトは焦っている。もの凄い形相でこちらを睨み付けている。

 するとアコナイトの袖の下がまた光り始めた。今までよりもドス暗く大きな光だ。それと同時に地面から今までのアンデットの三倍はデカい奴が現れた。

 デカいアンデットはその腕を振り回して無差別に攻撃していく。もうなり振り構ってられないのかデカい奴で俺達を倒す気らしい。

「アンデットがスケルトンも攻撃しているぞ!奴は力を上手く扱えないようだ!」

 アコナイトはそれらしい事を言って自分は関係ないとアピールしている。

 デカい奴はこちらに腕を振り回しながらノシノシと向かってくる。

「カスタス司祭!スケルトンで足止めを!」

 グラジオラスの指示にカクタスは直ぐさま答えてデカい奴の足元にスケルトンを召喚した。多くのスケルトンに足を掴まれたデカいのは身動きが取れず、必死に群がるスケルトンを引き剥がそうとしている。

 スケルトンに気を取られている隙にグラジオラスは膝裏を斬りつけた。

 アンデットに靭帯やら筋肉があるのかは分からないが、デカいのはバランスを崩して地面に倒れ込んだ。

 後はスケルトンが両手足に掴み掛かり、メリアがアンデットの首を両断した。

 すごい連携だ。思わず拍手したくなる。そんな事を思っているとまたもやアコナイトがデカい奴を召喚した。

 いい加減しつこいな。騎士達も流石に俺が召喚してないと分かってきてる様でアコナイトの方をチラチラ見ている。

 と言っても普通サイズのアンデットは相変わらず騎士を襲っているし、怪しいからって法王を取り押さえる訳にもいかない。不毛な消化試合の様な戦闘が続いた。

 そうなると我慢が出来ないアコナイトは今日一凄まじい光を放った。もうあんだけ自分から黒い光がビカビカ出てたら言い逃れは出来んだろ。

 アコナイトを中心に黒いオーラが溢れ出す。それもかなりの大きさだ。さっきのよりもっとデカい奴を召喚するらしい。

 騎士達もアコナイトから距離を取りその行く末を守っている。

 しかしその後の事態はアコナイトも予想外なものだったらしい。

 アコナイトから発せられる禍々しい光は不自然に点滅してどうにも言うこと聞いていない様だ。

「何だ!どうなっている!止まれ!止まれ!」

 アコナイトも必死で制御しようとするが止まらない。アコナイトの周りの黒いオーラはアコナイトを包んでいく。

「何だこれは!助けろ!早く!」

 アコナイトは完全に黒いオーラに飲み込まれた。

「死んだのか?」

 俺はポツリと小声で漏らしたがそんな事はなかった。

 黒いオーラの中から馬鹿でかい頭が飛び出した。更にそれに見合うだけの腕が伸び地面を押し退けて黒いオーラの中から出てこようとする。

 上半身が出ると今度は足が出てきて遂に立ち上がった。

 完全に立ち上がったアンデットは建物の十階相当の高さを誇った。

「全員退避!!」

 グラジオラスが叫んだ。確かにあれはヤバい。まともに戦う事は出来ないだろう。

 騎士達はグラジオラスの命令なのに素直に従った。皆颯爽と退避して丘を下っていく。

「カクタス!こっちもデカいの出せないか!」

「無理じゃな。ワシは骨を操れるだけだ」

 カクタスに提案してみたがダメらしい。それなら一度俺達も逃げるしかないか。

「我らも逃げるぞ!」

 グラジオラスも俺達に退避を促した。よかった、戦うとか言い出すんじゃないかとヒヤヒヤしてた。戦闘に関してはグラジオラスは冷静な視点を持っている。

 俺も逃げようと丘を下っていくと処刑人が倒れているのが見えた。おそらくアコナイトのアンデットによって殺されたのだろう。騎士と違って戦いの心得は無かったらしい。

 しかしその手には俺を撲殺しようとしていたハンマーがある。死人から物を奪うのはポリシーに反するが今はそんな事を言ってる場合じゃない。女神の槌ならあの馬鹿でかいアンデットにも効くかもしれない。

 俺はハンマーを手に取り丘の下まで下って行った。

 幸いな事にあのアンデットの動きはゆっくりでこちらを追って来ない。何処別の方向に歩みを進めている。

「あいつは何処に行くんだ?」

 奴の向かう方向を見るとそれは聖都であった。

「奴は聖都に向かっているぞ!」

 メリアが叫んだ。

「何でだ?」

「分からん。だがこのまま進んでいけば聖都に到達してしまう」

 どうして聖都に向かっている?気まぐれか?

「あの人の強い気持ちによるものです」

 答えを出してくれたのはずっと空中で応援してくれたリリーであった。

「あの大きなアンデットからは執着の様な強い気持ちが溢れています」

「気持ちってアレにそんなもんあるのか?」

「おそらく中に取り込まれた人のものです」

「中に取り込まれたって……アコナイトか!」

「おそらく……」

 リリーの考察が本当ならアコナイトは聖都に戻ろうとしているのか。法王という地位への執着か、聖都こそ自分の居場所という思いか分からないが。

 どちらにしてもあんなのが聖都に行けば甚大な被害は免れない。

「我らも聖都に行こう!ウンスイ!後ろに乗れ!」

 メリアは馬に乗り込んだ。俺も乗るのかよ。だがそうも言ってられない。俺は必死でメリアの後ろに乗り込み何とか馬に跨った。

 グラジオラスもいつの間にか馬に乗り込んでおり出発の準備は整っている。

 二頭の馬は平地を駆け抜け聖都に向かう。上にはカクタスとリリーが付いて来ている。

 とにかく今はあのアンデットよりも早く聖都に行き撃退の準備をしなければならない。

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