【金剛福寺(こんごうふくじ)にて…】

あれから、どれくらいの月日がたったのか…


場所は、足摺あしずりにある三十八番札所・金剛福寺こんごうぷくじにて…


参拝をすませたわしは、納径帳おしゅいんちょう朱印しゅいんをすませた後、足摺岬あしずりみさきへ行った。


ところ変わって、足摺岬の灯台付近にて…


(ザザーン、ザザーン、ザザーン…)


この日、海は大きく荒れていた。


この時、わしは灯台付近で海をながめていた白装束で菅の傘をかぶったおへんろさんと出会った。


年は…


そうじゃのう、わしくらいの年齢だったと思う…


わしは、ひとりぼっちで海をながめていたおへんろさんに声をかけた。


「もしもしお兄さん、となりに座ってもいいかな?」

「どうぞ。」


白装束のおへんろさんの男性は、ぶっきらぼうな声でわしに言うた。


わしは、白装束のおへんろさんの男性に言うた。


「兄さんや…おたくは、いつ頃から旅をしているのかな?」

「2ヶ月前からです。」

「そうか…お兄さんは何ぞわけあって四国へんろの旅に出たのだね。」

「はい。」

「わしでよければ、話を聞いてあげるよ。」

「あっ、お願いします。」

「兄さんの名前は?」

裕介ゆうすけと言います。」

「わしは正晴まさはるじゃ…わしは、わけあって家族と別れた…前は、タクシードライバーをしていた…兄さんの前職は?」

「テレビ局で働いていました。」

「テレビ局。」

「はい、アナウンサー志望で入局しました…だけど…テレビリポーターの仕事ばかりをしていました。」

「ああ、ワイドショーかなんかのリポーターをしていたのか?」

「はい…」


裕介さんは、わしにおへんろ旅に出たきっかけなど…すべてを話した。

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