【これを最後に弁護士をやめよう…】

私が国選の弁護人を始めてから数ヶ月後のことであった。


井の頭公園で発生したカップルが数人の男のグループに襲撃された事件の裁判で国選の弁護人になった。


男性が刃物で刺されて死亡して、女性が集団でレイプされたあと死亡した凶悪事件である。


私は、主犯格の男の弁護をイヤイヤ引き受けた。


この裁判を最後に、私は弁護士のバッジをすてると決意した。


共犯者の男たちは『どんな刑も受けます…極刑を下されても判決にしたがいます…』と言うて控訴しませんと言うた。


その結果、裁判長は共犯者の被告の男たちは死刑判決を下した。


彼らの弁護人は控訴したが、彼らは控訴を取り下げた。


これにより、彼らの死刑が確定した。


その翌日、主犯の男の論告求刑公判が行われた。


検察側は、死刑を求刑した。


その3日後に行われた最終弁論で、私は裁判長にこう言うた。


「彼は…被害者の女性との結婚を両親から反対されていた上に、コンカツもうまく行かない状況がつづいた…つらい思いをして生きてきました…彼は、生きてつぐないたいと言うてます…どうか…無期懲役でもいいから、生きてつぐなう機会を与えてください…お願いします…」


そして2ヶ月後…


主犯の男に判決が下される日が来た。


裁判長は、主犯の男に対して主文を後回しで死刑判決を下した。


判決のあと、私は裁判長に対して『控訴はしません…』と言うたあと法廷をあとにした。


それから3日後であった。


放心状態になっている私の元に義父がたずねてきた。


義父は、私に対して『何をグズグズしているのだね…早く控訴の手続きを取りなさい!!』とあつかましく言うた。


共犯者たちは死刑が確定した…


そんな中で、主犯の男を控訴すると被害者遺族のゲキリンにふれる恐れがある…


だから控訴しないとかたくちかった。


私は妻に対して『今回の判決が確定したら離婚をする…』とあらかじめ伝えた。


私は、離婚届などを用意するなどの準備を整えた。


あとは、判決が確定する日を待つだけである。


判決が確定する5日前のことだった。


義父がうちにやって来た。


私は、義父から『控訴をする手続きは取ったのか!?』と問い詰められた。


私は、控訴をせずに刑が確定したら妻と離婚することを伝えた。


そしたら、義父が思い切り怒った。


「夏彦さんは…わしの恩を忘れたと言うのか!!」


私を怒鳴りつけた義父は『控訴の手続きを取らないのなら縁を切るぞ!!』と言うた。


言い換えれば、義父は私に最後ツウチョウを突きつけた。


妻からも『お願い…控訴の手続きを取って…取らないと…夏彦さんは…この家に居られなくなるのよ…』とせがまれた。


被害者遺族の気持ちを思うと…


心苦しい…


でも…


控訴しなかったら…


この家から追い出される…


私には…


身内がいない…


孤独だ…


私は、迷った末に控訴の手続きを取った。


義父は私に『よく決断してくれた。』とニコニコ顔で言うた。


その次の日であった。


長男が学校で暴れまわった末に同級生の子に大ケガを負わせた事件が発生した。


私と妻は、長男のいる小学校に行った。


教室の窓ガラスが粉々に割れていた上に、教室はグチャグチャになっていた。


同級生たちは、ワーワーと泣いていた。


長男に殴られた子たちは『ぼくは何もしていないのに、殴られた。』と言うていた。


妻と担任の先生が怒鳴り合いの大ゲンカを繰り広げた。


もうだめだ…


限界だ…


私は、ここでより大きな決断を下すと決意した。


私は、死刑判決を受けた主犯の被告の男の控訴を取り下げた。


これにより、主犯の被告の男の死刑が確定した。


ところ変わって、主犯の被告の男が勾留されている拘置所にて…


主犯の被告の男は、激しい声で泣いていた。


「いやだ!!死刑はいやだ!!生きてつぐないたい!!生きてつぐないたい!!」


私は、泣いている主犯の被告の男をにらみつけた。


その後、背広のエリにつけていたから弁護士のバッジを外したあと男の前に置きながらつぶやいた。


お前は地獄へ行け…


お前は、地獄で苦しい思いをするがいい…


その後、私は拘置所を出た。


主犯の被告の男はビービーと泣いていたけど、もう知らない…


その夜、私は居酒屋でショーチューをのみながら考え事をした。


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