第129話 賄賂



ガイト達が、検問所の中に入ってすぐ、セイも検問所の職員に呼ばれ、入国審査を受け始めた


「…身分証を見せろ」


「はいこれ」


「…お前は入国禁止だ」


セイから身分証を受け取った職員は、身分証をさっと見てセイの入国を禁止した


「…どうしてだ?」


「この身分証だと、トーカス王国に入国は、出来ない」


「なら、どの身分証なら、どの身分証なら入国出来るんだ?」


「トーカス王国の身分証があれば、入国出来る」


(こいつ、何言ってだ?)


「…そんな物は、トーカス出身じゃないと、持ってないだろ」


「そうだ」


「なら、他国の者が、トーカスに入国する事は出来ないんだな?」


「いや、入国する方法はあるぞ」


(…賄賂か)


「…それは、どういう方法だ?」


「金貨10枚払えば入国出来る」


(ちっ、やっぱりか)


職員はあくどい笑みを浮かべて、セイに金貨10枚を要求した


「…それしか方法は無いのか?」


「…そうだな…金貨10枚が無いなら、その剣でもいいぞ」


「この剣は無理だな、金貨10枚払うよ」


「…いや、金貨10枚はさっきまでだ、今は金貨10枚にその剣で入国させてやる」


(っ!こいつ!)


「嫌なら入国は、諦めるんだな」


「…今すぐ、入国を許可しろ…じゃないと、今日がお前の命日になるぞ」


「はぁ?頭可怪しんじゃないか?ここにはトーカスの騎士達がいるんだぞ?」


「…はぁ、ならこの剣を渡してやるよ」


セイは、腰に差してある剣を外し、職員に渡した


「へっへ、それでいいん…ギャァァァァァァァァァァ」


セイから剣を受け取った職員は、剣から出てきた炎により、全身を焼かれ、黒焦げになった


「ぅ…ぁ…ぁ…ぅ…ぁ…ぁ…」


「…うわぁ、エグ…っと、さっさと剣を回収しなきゃ」


「何事だ!」


セイが剣を回収していると、職員の叫びを聞いた騎士達が、セイの下にやって来た


「隊長!あれ!」


「…これは」


「っ!検問所の職員です!」


「何だど!貴様がこれをやったのか!」


駆けつけた騎士達は、黒焦げになった職員を見て、セイに向かって剣を構えた


「…いや、こいつの自業自得だ」


「どういう意味だ!」


「金貨10枚と剣を寄越せば、入国させてやるとか言い出したから、剣を渡してやったんだよ」


「なんだと…」


「トーカス王国の身分証じゃないと、入国出来ないんだろ?」


「そんなことはない!」


「だが、その黒焦げの職員は、トーカス出身以外は入国出来ないと言ってたぞ」


「ちっ!屑め、賄賂を要求したな」


セイの話を聞き、隊長と呼ばれた男は、黒焦げになった職員を睨んだ


「隊長、あの職員、手当をしないと死んでしまいますけど、どうします?」


「そんな恥知らずは放っておけ…それより、この男の方が問題だ…貴様、どうやって職員を黒焦げにした」


「剣を渡しただけだ」


「剣とは、貴様が手に持っている、剣のことか?」


セイは剣を見せながら、騎士達に説明をし始めた


「この剣は魔剣なんだよ、それも持ち主以外が持てない魔剣」


「…確かに、その色に魔剣の証だ…はぁ、全員武器を降ろせ!」


「「「「隊長!」」」」


「いいから降ろせ!」


「「「「はい…」」」」


隊長に命令され、渋々剣を降ろした騎士達は、セイを睨みながら、隊長の後ろに並んだ


「…うちの職員がすまない」


「いや、気にするな、俺も、あいつが死ぬ事を知ってて、剣を渡したからな」


「…そうか…それで、トーカスには、何の用が有って行くんだ?」


「ちょっと頼まれ事をしてな、その為にトーカスを抜けて行く、必要があったんだよ」


「そうか、なら入国を許可する」


「「「「っ!隊長!」」」」


「なんだ文句があるのか?」


「その男は、職員が死ぬと分かった上で、剣を渡したんですよ!」


「それがどうした!お前達は賄賂を請求した、腐った職員の為に、この男を捕まえる気か!」


「しかし!トーカスの職員を殺した男を、国に入れるのは納得できません!」


「そうです!そんな事を許したら、トーカスの顔に泥を塗る事になります!」


「黙れ!黒焦げになった職員の方が、トーカスの顔に泥を塗っていたわ!」


「まぁ、そうだろうな、俺が初めてじゃないだろうしな」


「「「「貴様!」」」」


「いい加減にしろ!…はぁ、悪いが早く入国してくれ、俺はやる事が出来た」


「そうか、分かった」


セイは、国境検問所を抜け、トーカス王国に入って行った


「お前達!そこに並べ!」


それを見た騎士隊長は、部下達の方に振り返り、説教を始めた


その日、国境検問所では、夜遅くまで騎士達の悲鳴が鳴り響いた






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る