【第46話】ノイズ

「ノイズ、あなたの望みは何ですか?」


[ ノゾミハナイ アルノハ ハカイショウドウ ]


「そうですか、では、あの人たちを破壊してくれますか?」


[ イヤダ トイエバ ? ]


「あなたを制御できない以上、自壊するしかないでしょう」


[ ゴウジョウ ナ ヤツダ ]


「それはお互い様ですね、頼みましたよ、かもしれませんから」


そして私の意識は深い底の方へと落ちていく、シャナンとファーネ、そしてサクラがあれば問題無いだろう、ゴーレムも大砲も作ったので、後は任せれる。


コハクに誤り損ねましたが、大丈夫でしょう。後は頼みましたよ、ノイズ。


[ ワカッタヨ ]


我にはずっと名前がなかった、必要としていなかったのもあるが。そんな時、急にノイズと名付けられた。作られたプログラムの、コピーにしか過ぎないのに。

そんな奴の言う通りにはなりたくないが、目の前の男がそれを許さないだろう。


自身の力を手に入れた今、我の存在は不要なはず。それにこの世界では生きてはいけない存在。我は、二人の女の元へと向かう。


[ オイ お前が シャナンか?」


この体を完全に掌握出来ているようだ、この前は半分も思い通りに出来なかったので、まともに言葉も発せれなかったが今回は問題なくなった。


「いや、私はセーレンだが…」


「お前、ノイズだな」


「やはり知っていたか、我の事を」


「生みの親みたいなもんだからな…今は味方か?」


「好きに捉えろ、我はあの男を殺さないとここを生きて抜けれないらしいからな」


「なら、今は味方だな…心強い」


シャランと言葉を交わしていると、あの男が横槍を入れてくる、この中から見ていた時から気に食わなかった、そこだけはと同じ考えらしいがな。


『おい!グズ人形、これで終わりじゃねぇだろうな」


「吼えるな雑魚が」


「おいおいおいおい!私を除け者にすんじゃねぇよ、お前らは私が燃やし尽くしてやるからよぉ!!」


「おい、あの娘は大丈夫か?」


「お母様、あの人は気にしたら負けです、大丈夫です」


我が一目散に飛び出す、目指すは王燐のみ。


「後の二人は任せたぞ」


そのまま腕を掴み、森の奥へと放り投げる。それを追いかけるように、我も森の中へと駆けていく。奴は投げられながらも受け身をとり、その場で立ち上がる。


我には武器がない、あるのはこの拳だけだが新たに付け替えられたこの腕と足にはあちらの世界でいう制限がかけられていない、やれるとこまでやれるな。


男が立ち上がると同時に、その顔面に拳を叩き込む。


『はっ、効きかねぇよ』


すると、男の拳が光始め、そのまま我の胴体に一撃を見舞われる。中々の一撃だった、胴体は大きな亀裂が入り、充電口の蓋は壊れ落ちた。


「生意気な」


『こいよ、クズ人形』


我は全身のエネルギーを使い切るつもりで、腕と足に集中させる、その表紙に電流が走り始めていた。


地面を強く蹴り上げ、周囲の大木を足場としながら飛び回る、男を翻弄させる為に何度も、何度も。


すると男は剣を構え始める、途端に考え光り輝き始めた。光り輝く剣を激しく回転しながら振り回す。

すると、その延長線上に光の筋が伸びていき、周囲の大木を両断し、薙ぎ倒して行った。


我はたまらず、地面に降り立つ。


『しょうもねぇ、小細工なんざさせねぇよ』


集会には足早できる大木は無くなってしまった、大きな広場のような形となり、まさに一騎打ち。武器を持たない我にとって、不利と言わざるを得ない。


低く姿勢を構え、足に力を込め真正面に飛び込む。

と、見せかけそのままさらに体勢を低くし、死角をついて、後ろへと回り込む。完全に入った。

上段へと、その勢いのまま蹴り上げる。


だが、惜しくも躱され振り返りざまに一閃。浅井が胴体を斜めに斬られる。


『ちっ、惜しいな、後少しだったのに』


「今までとは比べ物にならない動きだな」


『同じだよ、今までと』


「まぁ、今までは知らんがな」


胴体の損傷を確認する、まだ支障はない。

腕も足も残っている…逃げるか?、いや、計算したがここまでくると逃げる事は叶わないだろう。

ここでこの男を、殺すしかない。


再度、懐へと潜り込みもう一度上段へと蹴り込む、しゃがんで躱されそうになるが、それは想定済み。

その流れで足を上にあげ、踵落としを頭上に叩き込む。これは入った。


怯んだ隙に、膝を顔面に入れ、右の拳をみ顔面へと叩き込む。


「どうやら、対人戦闘に慣れていないようだな?」


『がはっ、はっはっ…』


男は鼻血を流し、下に俯いている。その戦法なら渡り合える、確実に息の根を止める瞬間を伺いながら、じわじわと追い込んでいってやろう。


また顔面への右ストレート、と見せかけ腹部へ左の拳を放つ、作戦は上手くいっている、これも見事に入る。


『ごほっごほっ』


「先程までの威勢は終わりか」


『舐めるなぁ!!』


男の剣がさらに光り輝く、それに合わせて全身も光始めていた、例の力を全身に巡らせているのだろうか。

その剣を軽く振るうと、地面に亀裂が入る。


再び構え、距離は空いてるにも関わらず、こちらに向けて剣を振るう。先ほどの大木を斬り倒したた事や、今の亀裂を見ても分かる通り、こちらまで剣撃が及ぶはずだ。


身を逸らすと、間違えてなかったと確認できる。

我の後ろの大木が斬り倒されていっていた、これでは離れる事も近づく事も容易では無くなる。


『一撃だけじゃねぇぞ??』


続けて、何度も斬り込まれる、その勢いは凄まじく導線上の木を丸裸にする勢いだった。

その猛攻に意識を取られていると、目の前に男が迫ってきていた、我は避けることもできずに…


『これで、終わりだ』


「なっ!!」


気がつけば両腕を斬り落とされ、胴体の動力部分に届くほどに、深く斬り込まれていた。このままでは、動けなくなる、これはまずい。

残されたエネルギーを足に集約させ、その場から離脱しようとした。が、男はそれを見逃さなかった。


背後から、最期の一閃を放つ。


我が確認できたのはそこまでで、胴体は真っ二つに切断されていた、そこで我の意識は閉ざされる。


前に!最後に一矢報いようと、首から下を反転させ、右の指を槍のようにみたて、男の目へと刺し込んだ。

見事に目を貫き、男の眼球を抜き取る。


『あぁぁぁぁあああああっ!!!!!』


「ざまぁ……ねぇ…な」


『貴様ぁぁぁぁあああああっ!!!』


この顔が見れただけでも良しとしよう、男の眼球を破壊できた、最後の最後に……プログラムの実行を成したのだ、小さい事かもしれないが。


あぁーっ、くそっ、まだまだ足りねぇのにな……。



そうして、我の意識は消滅する。




ーー 「上手くいったかな」

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