アイデアNo.007 異世界転移:あらすじ+設定+シーン
主人公は日本に生まれたが、自分は生まれる世界を間違えてしまったと思っていた。
高校二年生になって、主人公は自分の限界を感じている。何をやってもうまくいかない。それは勉強や進路のことではなく、人間関係においてだった。
筆記試験ならば毎日勉強をすれば結果がでる。けれど、会話や空気を読むというものは、どうしていいのかわからないのだ。
「はあ、ここじゃないどこかに行きたい」
それはどこだってよかった。この世界でない、どこかならば。
その時、どこからともなく声が響いてきた。
――その願い、ワシが叶えてやろう。
口調は古臭いのに、声は若い女のようだった。
「とうとうダメか。幻聴まで聴こえるようになるなんて」
――幻聴ではない。これは直接、おぬしの脳に語りかけておる。それで、どうする?
「どうするって?」
――おぬしは頭が弱いのか? 違う世界に行きたいと言っておったろうが。そして、わしならその望みを叶えることができる。
初対面の――実際には会っているわけではないけれど、そんな相手にまで馬鹿にされるなんて、これだから人間関係は苦手なのだ。
「つまり、僕をここではない世界に連れて行ってくれるっていうのか?」
――だから、初めからそうだといっておるだろう。ワシが知りたいのは、おぬしがどうしたいのかだけじゃ。
「じゃあ、お願いするよ。僕を違う世界に連れて行ってくれ」
声を信じたわけではない。できるものならやってみろという感じだった。
――後悔はしないのだな?
「ああ、しない」
そう答えた瞬間、世界が揺らんで、圧縮されて、何も見えなくなった。
目を開けた主人公の前には新しい世界が広がっていた。
そして、主人公は勇者として国に迎えられれた。
この世界には勇者が光と共に現れるだろう、という予言があったのだ。
まるで自分のために用意されたような舞台。ここならきっとうまくできると主人公は確信した。
だから主人公は、もう他人を疑うことをやめようと考える。
日本でうまくいかなかった大部分の原因が、そこにあるからだ。
主人公は真新しい装備といくらかのお金をもらって魔王討伐の旅に向かう。
最初の町で綺麗なお姉さんに声をかけられた。
モテ期がきたのだと喜んでお姉さんに付いてゆくと、屈強な男たちに囲まれ、身包みを剥がされてしまう。(主人公は空手と剣道を小学校から習っており、そのへんにいる程度のごろつきなら圧勝できる。が、男たちは人を襲って生計を立てること二十年の大ベテランで主人公はぼこぼこにされてしまう)
お金と装備を失い、薄着姿の主人公は、人目を避けるように街を出て、さらに災難に襲われてしまう。
炎獣と呼ばれる魔物だ。
まるで犬のような姿をし、口から赤い火を覗かせている獣が、飛びかかってくる。
反射的に半歩横にずれた主人公の身体は自動で反撃を打ち込んでいた。
「きゃん!」
甲高い悲鳴で大地を転がる黒い塊。
起き上がった炎獣は、再び四肢に力を入れて飛びかかる体勢をとる。
「言ってもわからないと思ううけど、もうやめてくれ。お互い、痛い思いをするのは嫌だろ? お前が襲ってこないなら僕は何もしないから」
さきほどの一撃を与えた瞬間、主人公は実感した。
これは現実だ。
ゲームに出てくる魔物をこれまでに数えきれないくらい倒してきた。これがゲームだと思えたなら、迷わずに敵を排除できただろう。
けれど、主人公には無理だった。
相手が犬のような姿をしているからかもしれない。相手が一つの生命体であると認識してしまったからかもしれない。とにかく、もう無理だった。
炎獣が唸り声を喉の奥で響かせて、威嚇するように睨んでくる。
やはり言葉が通じていなかったのだろうか。そう思ったけれど、なぜか炎獣は一向に襲ってこない。
主人公はじりじりと後ろにさがった。
獣に背中を見せると魘われると聞いたことがあったからだ。
そのかいあってか、五十メートルほど離れたところで、相手も警戒を解いた。
しかし、見逃す気はないらしい。主人公の後を、一定の距離を保ったままついてくる。
主人公は川辺で野宿をすることにした。
手づかみでどうにか魚を取り、そこで考え込む。
「さすがに生っていうのはまずいよなあ」
主人公はダメもとで遠くから見てくる獣に言ってみた。
「なあ、これに火、つけてくれないか? お前の分も焼いてやるからさ」
静寂。
やはり通じなかったようだ。
そう思った、次の瞬間、
「うわっ!」
炎獣の口から火球が放たれた。
それは主人公の横を掠め、木の枝を一瞬で燃え上がらせた。
焼きあがった魚をあげようとするが、近くには寄って来ない。
自分と炎獣との中間に魚を置き、もといた位置まで戻る主人公。
それで、ようやく炎獣は食べてくれた。
たき火を眺めながら主人公は考える。
自分は何なのだろう。
結局、ここでもうまくいかない。もう世界がどうのという問題ではにのかもしれない。欠陥があるのは、自分のほうなのだ。
主人公の頬を暖かいものが流れる。
わかっていて、主人公が拭わずにいると、代わりに何者かがそれをした。
驚いて顔を上げると、炎獣の鋭い牙がすぐそこにあった。思わず悲鳴を上げそうになった主人公を、炎獣の暖かな舌が舐める。
「……もしかして、なぐさめてくれてるのか」
獣は何も言わない。それでも主人公にはそうとしか感じられなかった。
黒々とした瞳は、敵意ではなく、優しさに満ちていた。黒い毛並を撫でてやると、眼を細め、されるがままになっている。本当に犬のようだ。
朝、目を覚ますと炎獣の姿がなくなっていた。
新たな街につくなり、一人の女性が叫んでいた。
「だから、服を取られたのよ」
「下着泥棒ですか」
「いいえ、服だけよ。端に花の刺繍がしてあるやつなんだけど――」
この街も治安は良くないのだろうか。不安を抱えながら歩いていると、
「すみません」
と、声をかけられた。
可愛い女の子だ。端に花の刺繍がされた服を着て、長い赤い髪をしている。(炎獣が変化した姿)
またか、と主人公は思った。そんなに自分は獲物として狙いやすいのだろうか。
「旅をしてるんですよね? わたしも連れていってくれませんか」
「親御さんが心配するでしょう」
見た目は自分とあまり変わらない。ということは、当然親もいると考えたほうが自然だ。
「……親は、もういません」
「言っておくけど、僕はお金なんてもってないよ。前の街で、キミみたいな強盗に襲われたから」
「わたしは強盗なんかじゃないです!」
「じゃあ、何が目的なんだ」
「目的って……ただ一緒に旅をしたいだけです」
「それなら他の誰かに頼んでくれ」
「いやです! あなたじゃなきゃいやなんです!」
怪しいにもほどがある。
「なんで僕なんだ」
「それは……あ! さっき目的がなにかって言ってましたよね?」
「言ったけど」
「ありました、目的!」
「なに?」
「頭、なでてください!」
その後、主人公は少女と一緒に旅をすることに。
道中、彼女に言われて指輪を売ってみると、それはこの世界には存在しない金属をふくんでいたらしく、高値で買い取ってもらえた。
そのお金で宿屋に泊まる。
部屋は別。
夜、重みで目を醒ますと、彼女が乗っていた。
驚いて撥ね退けると、彼女の姿が炎獣に変わっていた。
それが夢だと思った主人公は、炎獣を抱いて寝る。
朝、目を醒ますと裸の彼女が腕の中に納まっていた。
▽▼▽▼▽▼
お疲れ様です!
アイデア帳で。こんな長い文章を読まされるとは思わなかったでしょう?(笑)
わたしも、なんでこんなに長いのを書いたのか謎です。
たぶんアニメで異世界転生や転移ばかりだったから、自分ならどうするか考えたんでしょうね。
ちなみに、これだけ書いておいて作品にはなっていません。
当時は、これでは新人賞の一次選考すら通らないと思ってボツにしました。
でも、WEB小説ならどうでしょう?
最後の裸の少女と目覚めるシーンからはじめて、回想に入る、みたいな。
いや、だめか。
流行の異世界転移といえど、これくらいの話ならゴロゴロしているだろうし、ありきたりな気がしてきました。
他に何か特別な要素がないと厳しいかな。
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