小説未満の物語

藍錆 薫衣

月夜の引力

 月光を背負った悪魔が揺らいだ。無気力な左腕、目の前に差し出された掌はダンスに誘うかのよう。

 招かれた可惜夜に居場所は空白。伸ばした右手は些か我楽多で、触れた指先は痛かった。


 絶対の引力の前に抵抗など甚だしい。

 悪魔は微笑んだ、天国からの使者のように。悪魔と私、黎明は彼方へ。

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