昇らない お日さま (14) お日さまの告白
「あぁ、すいません! すいません、つい……」
われに返ったお日さまが、すぐさま謝ります。
「ついでに言うとな。ワシはお前さん方が、文通をしている恋仲であるとも知っておるぞ」
パーパスは、いきなり核心に触れました。こう暑くては、身が持たないと思ったからです。
「えぇ? そんな事まで、もうご存じで!」
驚いた太陽は、うっすらと頬を橙色に染めました。
「あぁ、ワシは何でも知ってるぞ。何せ大魔法使いだからな」
パーパスが、鼻をフンと鳴らします。
「でも、先ほどのパーパスさまの言葉。お月さまの言っている事は、どういう意味でありましょうか」
冷静さを取り戻したお日さまがそう尋ねました。
「ワシが月に聞いた話によれば、月がいくらお前に手紙をよこしてもお前はとんと返事を書かぬそうではないか。それで傷ついた月は、自分の役目も忘れていっこうに動こうともせぬわけじゃ。
恋人同士のいざこざに首を突っ込もうとは思わん。だが、お前たちの場合は特別じゃ。世の中が大いに混乱するからな。いったい、何で返事を書いてやらんのかの」
男同士の気安さか、パーパスはズバリと聞きました。
太陽は慌てたように、
「いえ、それは違います。返事をくれないのはお月さまの方です。何か向こうの機嫌を損ねたのかと、何度も何度も手紙を送りましたがナシのつぶてです」
と、顔を真っ赤にして答えます。辺りはまるで真夏のように暑くなりました。
意外な展開です。なにせお月さまとお日さま、二人とも全く同じ事を言っているのですからね。
そこでパーパスはお月さまから預かった手紙を太陽に渡しました。手紙を読んだお日さまは、全くわけが分からないとパーパスに言いました。
「うーん。ワシはお前たちの性格を良く知っておる。決してワシにウソをつくようなものではあるまいて。
しかしそうなると、一体どういう事なんじゃろうか」
パーパスは余りに意外なお日さまの言い分に、お尻が痛くなるのも忘れて考え込みました。
「どういう事なのでしょうか……」
お日さまがオウム返しに、腕組みをする老人に尋ねます。その時、パーパスのモジャモジャの眉毛が再びピンと立ちました。何か良い事を思いついた証拠です。
「安心せい。これからワシは月の所へ戻ってお前の言い分を伝える。そして月を必ず動かして見せるから、お前はそのあといつものように西へと下っておくれ。
ワシを信じてくれるかの?」
パーパスは、真面目な目をしてお日さまを見つめました。お日さまがとても明るいので、サングラスがほしいところですがガマンガマン。
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