【冬】別れ。

『ねぇ、寒いんだけどなー』


 君がある時、僕に言ったね。

 少し意地悪そうな不敵な笑みを浮かべて。


 僕の不安を払い除ける様な笑顔で。



 その瞳が何を訴えてるのか、僕にも分かるよ。


 僕が軽く手を広げると、君は僕の腕の中に収まる。

 この暖かさがたまらなく心地いい。


 君は僕の腕の中で、

 まるで甘える子猫のように気持ちよさそうにしている。


 ちょっと意地悪したくなって、抱きしめた腕に力を入れる。

 苦しくて、もがく姿も堪らなく好き。

『もー、いじわる…』って言う君が大好き。


 こんな他愛もない日常が、ずっと続くと思ってた。


 別れを考えたことなんて、一度もなかったから。

 突然の終わりが信じられなくて…。



 今頃、君は誰の腕の中にいるの?


 僕のこの想いは、どこへ飛ばしたらいいの?



 この冬が終わり春になったら、

 君は、誰とあの桜を見上げるの…?

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る