第12話 「狙ってるわけ?」

そんなこんなで美緒を含めて4人でアロマショップに向かうことになってしまった。


相変わらず朱音さんは美緒をにらんでるし透はいつもと違って怯えた子犬のようになってる。




「そういえば陸と買い物なんていつ以来だろーね!楽しみw」



「お前いっつも変なもの買うもんな、意外とセンスねぇなって思ってたわ」



「もうーからかわないでよーw」




そんな意味のない会話をしながら振り返って見ると2人は驚いた顔で見ていた。




「なぁ陸、高校の時からすっごい気になってんだけどなんで美緒と話せんだよ。

あんな悪魔みたいな性格なのに...」



いやなんでそこまで言ってるんだか



「確かに、陸くん未紗と話してるときよりいきいきしてるっていうか」




「いや別にいきいきはしてないからね。それと透、こいつがこういう対応し始めたのは付き合ってからだから。

それまではおれに対しても完全毒吐いてたようなやつだから」




多少なりとも美緒の尊厳を守りつつ説得していく。




「ああ、懐かしいね!

確かに最初に陸に告白された時のこと今でも覚えてるよ。そのときに軽くからかったら陸涙目になっちゃって...くくw」



美緒お前やっぱ口軽いなー...




「あ、もうそろそろ着くよアロマショップ!」




朱音さんはマップを見ながら歩いていたからおれたちにそろそろ着く旨を教えてくれた。


アロマは買ったことがないから正直楽しみではある。

いやいや、今回はお詫びの品を用意しないと。








      ーーーーーーー


アロマショップにたどり着いた。

店内は意外とカジュアルな雰囲気の店になっている。



「見て見て陸!めっちゃいい匂いのアロマ見つけたー!」



ほんとすぐちょこまかと動くタイプだな。



「ああ、あとで行くよ。

とりあえず朱音さん、未紗さんの好きな匂いってどんなの?」



「そろそろ答え合わせになるね!

未紗が好きなのはこれだよ」



そう言ってあるアロマを差し出してきた。

ジャスミンのアロマだ。随分と珍しい匂いが好きなんだなと感じたけどよくよく考えると某有名ブランドの香水の匂いにそっくりだ。





「確かにいい匂いだね。フローラルの香り...

だけど未紗さんのイメージとは意外なチョイスだね」



「んー確かに未紗は大人になろうとしてる感じがすっごい伝わるよ。それにジャスミンの香りは...」




え、何を言いかけた?

そのまま黙っちゃった。




一方透は美緒とよくわかんないバニラだったりを透に嗅がせてゲラゲラと笑いながらからかっていた。

趣味が悪いこと



「ありがと朱音さん。とりあえずこのジャスミンの香りのアロマ買ってみるよ」



「陸くんはなんか個人で買ったりしないの?」



「んーあんまりアロマは詳しくないからなーどんなもの買おうか悩むなって」



「そしたら仲直りしたら未紗に教えて貰えば?声かけたら絶対着いてきてくれるよ!」



「そうだね。その時にオススメの香りのやつ買ってみるよ」




そう言い、未紗さんに渡すアロマをレジに出した。そんなに思ったよりは高くはなかった。




向こうの2人から視線を感じるけどここは無視。

透、ドンマイw










ーーーーーーーー


とりあえずお詫びの品も買えたことだし、透とメシでも食って帰ろうと思い透の方を見た。


まだ睨んでるよこいつ...



「陸ずりぃよマジで、おれを美緒に押し付けやがって。」



「悪かったって、あとでメシ奢るからそれで許して」



「ほんとか!持つべきものは友達だな!」



そう言って透をなだめていくと横から美緒が割り込んできた。






「え、奢ってくれるのー!w

やったーありがと陸ー!」



「お前はまた今度、今日は男どうしでメシ行きたい気分なんだよ」



「えーつまんないw

朱音ちゃんも迷惑かけられたんだから奢ってもらいたいよね?w」



そう美緒はニヤニヤしながら朱音さんの方を振り返る






「まぁメシ奢ってくれるならそれでチャラでいいけど...」



「やったね!みんな今日は陸が焼肉奢ってくれるってー!w」


ほんとマジなんなんだよこいつ








「「「やったー!」」」


訂正するわ

ほんとマジなんなんだよこいつら...








  


      ーーーーーーー


というわけでおれの奢りで焼肉食いにきたってわけで

焼肉なんていつ以来だろう...


確か去年の文化祭の打ち上げ以来だから半年以上は食ってなかったからなー

まぁ迷惑かけたってのもあるしたまにはいいか




「まぁ食べ放題だけどみんなたくさん食ってねー」



「陸ありがとー!

今日は元取るつもりでやるわw」




美緒気合い入ってんなー

他の2人も奢りだがらワクワクしながら待ってる感じが伝わる。




とりあえず乾杯をして飲もうとしたらうっかりと手が滑って水をこぼしてしまった。

実はおれよく手が滑ってものを落とすクセがある。




「陸またやらかしたなw」


透が笑いながらからかってくる



「あーもうまたやっちゃったの陸。

動かないで、とりあえず拭くから」




たまに美緒が優しく感じる

こんなギャップを見せられるとまた惚れちゃうじゃねぇか


美緒が持っていた小さいタオルでおれの服やらを拭いてくれた

近くにいるとめっちゃいい匂いじゃねぇかよ






「え、陸くんもしかしてポンコツ属性?w」


朱音さんまでからかってくる始末だ




朱音さんはおれの新しい飲み物を注文してくれた

いろいろと周りに助けてもらってるから今度何かしらで返さないとな





「未紗もポンコツだから、お互いお似合いかもね!

まぁいろいろと周りが大変になるだろうけどw」




朱音さん一言余計だよ全くw





そんな些細なトラブルはあったけど、とりあえずあらかた頼んでいた本命の肉がきた


ハラミ、ロース、カルビ、軟骨などさまざまな種類が一斉にきたからなにから焼こうかなと考えてるところだ





「じゃあ陸様、お肉をお焼きくださいませw」

美緒がふざけながらおれに言ってくる

焼肉奉行じゃねぇんだぞおれはと思いながらノリに合わせることにする




「苦しゅうない、これより余がそなたたちに褒美を授けよう。

たんと召し上がるのだぞw」




「え、キモw」

「上から目線ないわーw」

「どこの貴族だよw」






帰っていいですかねマジで











      ーーーーーーーー


あれから1時間ひたすら肉を頼んでは焼いて食べてを繰り返して結構腹が一杯になりそうだ



みんなも満足しながら食べてたから何よりだけど、明日からおれは当分もやしや豆腐で凌ぐしかなくなった

早く新しいバイト見つけないとな





「ふー食った食ったw

やっぱり人の金で食う焼肉は最高だわw」



お前らしばらく奢らねぇかんな




するとおれたちの近くの席にカップルが入ってきた




「やっぱりカップルでも焼肉食いにきたりとか多いんだなー」



「まぁ結構食べるような人とかもいるからね、未紗とか特にそうだよ」



そりゃ意外だ、未紗さん結構食う人なんだな

これは常に財布を潤さないといけないなと感じる



その瞬間








「もういいかげんにして!!」




なにやら例のカップルの女の人がブチギレてるようだ

なんか聞いたことあるような声...



「おいおい今更なんなんだよ。

そもそもお前から誘っておいてもうそういうこと辞めようとか虫が良すぎなんじゃねぇの?」




頼むからケンカならよそでやってくれよと思うと朱音さんが驚いた顔で





「え、なんでまだあの2人会ってるの?」



「なになにどうしたのー?w」



おい美緒、煽るな




「いや、あの女の人未紗だよ。

よく見て...」





目をこらしてよく見ると、ほんとだ。

未紗さんだ...



聞いたような声だなとは思ったけど、ほんとに知ってる人だとは思わなかった...

てかあの男はなんだ、未紗さんとどんな関係なんだろう?







「へぇーw

あの子、私にはああいうこと言う割にはやることやってる感じじゃんw

エグいことするよねー」




美緒がそんな風に言いながらスマホを2人に向けている

確かにそうなんだけどさ、なんか訳ありっぽいような雰囲気だぞこれ






「てか朱音ちゃん、あの男の人と未紗ちゃんはどんな関係なの?」



透がついに朱音さんに問い詰めた






「...あいつは、未紗の元カレ...」

え、元カレだって...

なんだって今





「未紗を騙して集団で襲った人なの...」



なん、だって...




それを聞いたおれらはそれぞれの反応をする

透はあからさまにブチギレてる様子だ。そういう小細工は嫌いなやつだからな


一方の美緒は静かに相手の男を見つめている

性格はクズだけど顔は典型的なイケメンだからな、まさか狙ってるわけ?



そしておれもだんだんとイライラが増してくる、さすがにそこまでクズなことはしない

それじゃただの道具扱いになんだろうが...





そう思い、相手に文句を言いに行こうとしたとき美緒が立ち上がり2人の元へ向かっていった






「あれ、もしかして未紗ちゃん?w

偶然だね!その人未紗ちゃんの彼氏?w」



「え、美緒さん...?どうして...」



「お、マジで綺麗な女じゃん!未紗知り合いなのか?w」




男がそう言うと、美緒は未紗さんの肩に手を置き、耳元で何かをつぶやいた

何を話してるんだあいつ






「未紗ちゃん、向こうに陸や透、朱音ちゃんと一緒にいるんだ!もちろん陸の奢りでw

だから一緒に楽しもうよ!」



「ねぇそこのお姉さん、未紗は今おれと一緒にいるんだよね、それともお姉さんがおれの相手してくれんの?w」



「んーそれも楽しそうなんだけど...

あ、耳ちょっと貸してよw」




そう言うと今度は男の耳元で何か囁いてる

するとどんどん男の顔が真っ青になっていく

まるで母親にHなビデオを隠してたのをバレるみたいに





「そ、それだけはやめてくれ!...もうおれはな、何もしない!勘弁してくれー!!」




そう言い残し、男は店を急いで出て行った

ほんと何言ったらそうなるんだよ







その瞬間に未紗さんは泣き出した

それをなぜか慌てながら美緒はなだめていた




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