第547話 第三次巡行の完了。

ちゃっちゃっと行くよー。

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 レガリアーナ国の首都アレガリムは港町だ。

 ただ、市街部分に、ヘッセン国ほど激しい坂道はない。

 高低差自体ははあるけど、あくまでもそれは緩やかなものだ。


 市街地を抜け、王宮や神殿のある辺りに至ると坂の角度がやや増して、特徴的な建物のある辺りでは小高い丘程度の高さになり、更に王宮の裏手には、あまり高くないけど山があって、北方へと続いている。


 王宮が山を背にしているのは、この世界では割とよく見る光景だ。


 ほぼ平地のハルマナート国と、裏手に神殿があるけどあくまでも丘、としか言えない高さのフラマリアくらいじゃないかな、山を背負ってないのって……


 ああ、先日訪れたマイサラスもそうだったな、マティレクは平野のど真ん中だったわ。


 なおトゥーレ島だと、そもそもその種の施設がない。

 立法府かなんかに相当する大合議場、と言われている場所はあるというけど、屋外の露天に石でベンチをぐるりとすり鉢状に設置しただけの場所だそうな。


 町役場はそれぞれの町に一つずつあるという話だったけど。


「とても……変わった街路設計ですね……?」

 トリィが初めて見る鋭角な交差点を見て戸惑っているのが大変かわいい。


「冬季にかなりの積雪がありますので、家々や道路の除雪で落とした雪の処理を優先した造りになっているのですよ。

 これも異世界人の提案による街づくりだったと伝わっておりますが」

 さらりとセルティラス神官長が都市計画の背景を語る。


 家々は屋根や雪避け庇の雪を道路に落とす。

 これを道路管理者が交差点まで掻き集めて、そこで熱を加えて水にし、地下の排水溝に流すというのがこの都市の基本的な雪処理だ。


 家屋からの雪をある程度分散させないと、その場で固まってしまう為、道路を数多く作って一本の道路には道路の片側からしか雪を落とせない構造を作り、一方で集積場所は少なくするために放射状に交差点を編成した、という事らしいのだけど。


 それでも雪が溜まりっぱなしになる裏路地なんてのはあるらしいのが厄介なことですね。


 サーシャちゃんは考え過ぎの空回りな造り、なんでランドアバウトも同時採用しねえんだ、とか酷評していたな……


 今回はそもそも徒歩ではないし、神殿に直行だから、道に迷うとかそんなことはないので安心ですね。


 以前、戴冠式に出た時の待ち時間に観光してたら、一瞬居場所を見失いそうになったからね、未遂で済んだけど。


「カーラ様はアレガリムはもう三度目、でしたか」

「そうですね、戴冠式にもお邪魔させて頂きましたから」

 あまり外を見ないあたしに気付いたのか、セルティラス神官長が話を振ってきたので頷く。


 外に興味がないんじゃなくて、トリィの様子を見ているだけなんだけどね!


 ここの神殿は車両の乗り入れオッケーなので、そのまま神殿敷地内から、奥院にほど近い出入り口を利用して、神殿内に入る。


「毎度この街に来るたびに思うんだが、道を曲がる時に困らんのかこの街路」

 余程気になるらしくて、合流したサーシャちゃんがまた文句を言っている。


「道路幅自体が車両の要求幅より大分広めですし、乗合は雪のない時期にしか運行していないうえに、角を曲がりませんから、そこまで不便はないのですよ。

 個人で幻獣車を所持している者は技術でどうにかしているようですが」

 そう、セルティラス神官長が言う通り、この街の乗合幻獣車は、曲がらない。


 街路ごとに真っすぐ運行する路線がいくつもあって、都度乗り換えながら目的地を目指すスタイルだ。


 冬は個人が橇を走らせるだけで、幻獣車は基本お休みだしなあ。


「それはそれで覚えづらい……いや、だから街区分けが文字記号と数字だけなのか……」

「ええ、覚えるべき場所を記号化することで、簡略化しています。

 荷物の配達間違いも意外と少ないし、間違えた住所を書かれた時の復元率も高いのですよ」

 セルティラス神官長はそう説明してくれるけど、その覚えやすさは人に寄るんじゃないかなあ、と、なんとなく思う。


 いや、この世界の文字は似ていて間違えやすい文字、は基本的にないのだけど。

 ……それを誤読させる龍の王族の過半数の悪筆って。



〈久しいな、異世界の子等よ。先だっては随分と世話になった〉

 奥院から入ったところで、レガリオン神の声がする。


 おや、壁面に海の様子が見えるアレ、復活してるな。

 前より明るいから、深海ではなさそうだけど。


「お久しぶりです。お加減の方も宜しいようで何よりです」

〈うむ、幸い、近頃になってではあるが、余裕もできたので、海のがまた少しだけ貸してくれておるのだ。

 前の折より浅い海の底だが、人の子ではあまり見ることのない光景であろうから、存分に楽しんでゆくが良い〉


「レガリオン神様には初めてお目にかかります。

 今代の聖女、ベアトリクス・ヘンシェンと申します」

 まずは旧知のあたしが挨拶したあと、トリィがレガリオン神に挨拶する。


〈うむ、気候の良い時期とはいえ、北の果てまで良く参られた。

 故あって我が姿を見せる事は出来ぬが、暫しこの海の光景を堪能してゆくが良い〉

「有難うございます。海を眺める事はよくあるのですが、地上に居ながらにして海中の様子を見る事ができるとは、流石神々の御業でございますね」

 周囲を確認したトリィが、感嘆の面持ちでそうお礼を述べる。


 今回の海も、レガリアーナ国の近海らしく、時折見覚えのある魚、要するにコベションが泳いでいるのが見えますね。


「コベションやコッテションはいるけど、あまり多くないから、王都よりちょっと南だな?」

〈はは、そんなことまで判るか、その通りだ。

 ブレメナンのやや北側の、深くなりだす手前辺りの海だな〉

 魚の種類を見極めたサーシャちゃんの推測に、レガリオン神が機嫌良さそうに正解だと答えている。


 壁面を踊るように、流れる様に泳ぐ、様々な魚たちを暫し眺める。


 うん、確かにこれはいい眺めだわ。

 今後も見せて頂ける機会があるように頑張らないとね。


 ついでにトリィの称号をこっそり確認する。

 うん、レガリオン神からも加護を戴いているわね。


 ここまでは、神々の加護はコンプリートだ。

 それとは別に、水晶龍の加護、霊鯨の友誼の二つもゲット済み。霊鶴さん厳しいなあ?


 ……ちょい待て。なんであたしに[霊鶴の認可]が付きましたか?

 気付くのが遅れてツッコみ損ねたじゃないか。


 しかも認可。なんで認可??


《モフり許可だったり……?》

 いや流石にそれはないと……ないよね……?


 程よい時間まで、海を泳ぐお魚や生き物をあれこれ観察したら、お礼を述べて、神殿をお暇する。


 何故なら、レッゲスト公爵家から迎えの車が来たのです……


「結局貴族家にお邪魔する形なのですね……」

「現王家じゃないだけましと言っておくわ……」

 今の王家もレッゲスト家だし、現王ティグラン二世は顔見知りをやや超える程度には知り合いだからねえ、そっちの可能性もないとは言えなかったのよね。


 こちらは前公爵閣下も奥様もお元気そうだった。

 家督は春に三男の方に譲ったそうだけど。


 一泊して、夕飯と朝ご飯を頂いたら、またオプティマル号で帰宅の途に就く。


「今回は随分と平穏だったようだな」

 お土産を買って港に戻ったら、ランディさんにそう聞かれた。


「そういえば今回は何もなかったわね、いい事だわ」

 ハルマナートでは割と騒動になったし、トゥーレからはとんぼ返りだったしで、第一回と第二回巡行の方が色々ありすぎた、ともいえるけど。


「この後は秋になってしまいますか」

「うん、夏休みの間に子供たちをサンファンに連れて行かないといけなくてね」

 エルフっ子達とは約束をしたのだから、ちゃんと守らないとね。


「次回はフラマリア経由?」

「いえ、マッサイト直行ね。

 レンビュールさんにヘッセン国境辺りまで出向いてもらう予定よ」

 予定を確認して来たアスカ君に、そうではないと回答する。


「うむ、先に乗り心地を比較的短距離で試してもらいたいというのでね。

 あちらからの提案だが、悪くはないだろう?」

 そう、次の日程はランディさんの入れ知恵です。


 実際第二回が結構時間がかかってしまったから、マッサイト訪問はさらっと終わらせたいんですよね……


「そうか、そうだな。そもそもフラマリアも秋口は収穫期でクッソ忙しいもんな……」

 そうなのよ。

 ハルマナート国もそうだけど、フラマリア国も秋は大忙しシーズンだ。


 下手に出向いて邪魔くさいとか思われるわけにはいかないのよ!


 海を南下し、ヘッセン国で一旦トリィとお別れして、我々はハルマナート国に戻る。


 ああ、今回は何事も無くてよかったわ……


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 そうそう毎回トラブルが起こるわけではないのだ。

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