25 温泉で再会


 エデッサの街からのんびり馬車で2日。途中は宿も無く野営だったが、エール川の船着き場から馬車で移動した時と違って、テントもあるし装備も整っているし楽だ。

 リシアの町はエデッサの半分も無い小さな町だったが、冒険者で溢れていた。


 ユベールの説明では、5、6人いて装備が質実剛健で強そうなのが帝国から来た人々で、2、3人で手練れな感じの装備もきっちりしているのはテゥアラン王国。魔術師風のローブを着た人が多いのはハッセルト王国で、様々な格好をしたちぐはぐなのがヴィラーニ王国だという。


「なるべく離れないで下さい。この国の警備はきっちりしていますが、ダンジョンに入ると危険ですから」

「分かった」


 魔物だけでなく冒険者も危険なんだそうだ。ダンジョンで魔物ではなく冒険者に襲われるって、どうよ。


 取り敢えず物見遊山気分でテントの他に食料やら何やらたくさん仕入れた。ユベールも何やかやと仕入れていたし、ハナコもポケットからアレコレ注文を出していたし、ダンジョンに潜っても大丈夫だろう。

 さて待望の温泉だ。どこの温泉宿がいいかな。



 のんびり温泉街を見ていると後ろからポンと背中をたたかれた。

 振り向くと金髪碧眼の美青年がいる。

 どこかで見た事がある気がするが、こんな奴どこで見たっけ。

「私だ、サン=シモン神殿のイポリットだ」

 あ、思い出した。こいつ白豚だ。すっかり痩せているから分からなかった。

「お前、どうしたんだ?」

「どうにもヴィラーニ王国が住み辛くて、ビエンヌ公国に移住してきたんだ」


 このビエンヌ公国に入るには、エール川と海からの他は、ヴィラーニ王国の南西に広がるベアサイン森林を通らなければならない。そこがまた魔物の棲まう恐ろしい土地で、普通の人は近付かないという。


「うちは昔から代々語り継がれた抜け道を知っているが、それでもやせ細るぐらいは厳しい道だった」

 馬車も通らぬ獣道に近い一筋の道を、重い荷物を背負い夜通しかけて歩く。

 ものすごくハードだ。


「何で宿屋をやっている者がそんな道を知っているんだ」

「うちの家系は元々は冒険者で、宿では商売もするからな」

 そうか、冒険に必要なものを宿で提供してくれれば助かるな。

「家業が厳しくて逃げ出したが、生温い神殿で根性も腐っていった。お前のお陰で抜け出せたよ」

 神殿はぬるま湯のような所だった。


「まあ、うちには屈強な奴らがいるからな。ずいぶん鍛えられたわ」

 彼が振り仰ぐと斜め後ろに3人ほど強げな冒険者にも見劣りしない男たちがいた。

「公都にうちの昔からの宿があるんだが、公国の東側のこっちにも作ろうという話になってな。エデッサよりこっちの方がいいだろう? 温泉もあるし」

 もちろんだ。オレにとって温泉は何より優先される。


「そうだな、エデッサは成熟した感じでライバルも多いだろうな」

 こいつに聞けば、いい宿を世話してくれるかな。

「オレ達、宿を探しているんだが」

「じゃあこっちにしろ」と案内してくれる。



 白豚ことイポリットが案内してくれたのは老舗の宿でディーガン亭という。

「ここは昔からウチがよく利用している宿だ。私たちは温泉候補地に仮屋を建てて、そっちに寝泊まりしているんだ。また明日にでも寄るわ」

 そう言って帰って行った。

 ディーガン亭は隅々まできれいに掃除され、食事もきれいに盛り付けられ、肉も魚も美味しかった。


 リシアの町の温泉はモール温泉で黄褐色をしており、泉質がしっとりとして柔らかい。湯温は高くて水で薄めているという。宿の湯舟は広々として、オレ達は温泉を堪能したのだ。


 部屋に戻って部屋着に着替え、ソファでのんびりほてりを冷ましていると、ハナコがハーブティーを入れてくれた。

「ありがとう、ハナコ。気が利くな」

 温いお茶が喉に心地よい。ユベールも向かいのソファで寛いでいる。

「先程の方は神殿の方ですか?」

「ああ、見習い神官だった。ハナコを拾うきっかけになった奴だ」

「そうですか、神殿にあのような方がおられましたか?」

「前は凄く太っていたからな。オレも見違えたわ」

 笑って言うと、ちょっと目を眇めたユベールが立ち上がってオレの腕を取る。


「それより少し頑張りましょうか」

「お前の少しって長いじゃん」

「短く濃厚にいたしましょうか」

「う」

「やはり、このお身体に私のモノを全部覚え込ませてしまわないと、いけないような気がします。あなたは無鉄砲ですから」

「何で無鉄砲だとそうなるんだ」

「お行儀良くなります」

 あっさり抱き上げられてベッドに運ばれる。オレ行儀悪い事したっけ?



「さあ、キスからいたしましょうか」

「む……んんっ……」

 唇を軽く啄ばむように何度もキスをして、唇を啄ばまれて舌が口腔に入ってくる。口腔内を犯すように蹂躙され、歯列をなぞり舌を絡め息が上がる。

 この手練手管どこで覚えたんだろう。キスしているだけで気持ちよくなるとか、経験者としてレベルが高いだろう。


「んふっ…あふう……」

「とてもお上手ですよ、本当に淫乱になられて」

 濡れた唇がいやらしい。細めた瞳がオレの息の上がった顔をじっと見る。

「さあ、こちらももっと感じるようになりましょうね」

 何で胸に舌を這わされて指で捏ね繰り回されて感じるんだろう。もう胸だけでイキそうなんだけど、イカしてくれないし。

「もうちょっと頑張りましょうね」

 ああ、手取り足取り教えこまれる。


 神子にこんな事を教えていいのか

「神子は何でも知っていなければいけません。後ろからとか、前からとか、乗り上がってとか、対面とか、まだまだこれからですね」

 あっさり引き寄せられて、訳の分からない格好で絡んで、胸の粒を好きなだけ弄られて、すっかりそこも敏感になった。

 後孔に入った長い指がオレのいい所を暴く。

「はあ……ダメんっ……違うの、もっと……んんっ」

 もっと容積のあるモノが欲しい。

「ああ、こんなに欲しがって、すっかり淫乱になられましたね」

 腰を揺らして強請ると、うっすらと笑う気配がして、待ちかねたソレが入り口に当たる。ユベールの屹立した凶器が、オレを焦らすようにゆっくりと侵入してくる。

「やあ……ん、ああ、そんなとこもう……、あふう、ああ……もっとゆべー……る……」

 大きなモノがみちみちとオレの身体を一杯に押し開いて入ってくる。

「本当にあなたが素直で、可愛らしくて、いくらでも可愛がって差し上げられます」

 奥の奥まで押し入ってくる熱い楔。

「やっ……、淫乱だって言ったっ……、ああっ……」

「私の前でだけ淫乱であればそれでいいのです。お返事は?」

 グイと腰を回して突き上げられる。ああ、ダメそれ、もう……。

「……ああんっ、あ……い……」

 あ……、ダメ。こいつに躾けられている。

「本当に素直で可愛い方ですね。愛していますよ」

「ん……ふっ……、そ、そうな……の?」

 ちょっと言われただけで顔が緩んでる。オレ、チョロ過ぎる。

 おかしい。オレの方が犬になっているような気がする。

「はい。行く末まで幸せになりましょうね」

「……あい」

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